『金剛般若経』では「一切の有為の法は、夢幻泡影の如し」とあり、現世を夢幻、泡のように儚いものとして把握していたことが窺える。このように仏教では現世を否定的に捉えていた。 近代プロテスタンティズムでは被造物を重視することが徹底して否定され、それによって現世の否定がなされ、来世指向のみになったが、やがて現代化するにつれて来世指向は失われ現世指向に傾斜した、と池田昭は解説した[4]。 神仏の恵みが現世で与えられるとする信仰。日本では、一般的に、多種多様な神仏は、それぞれの特色に応じた恵みを、生活の様々な局面のなかで授けてくれるという世界観が根付いている。一般的に、宗教における現世利益の位置づけは軽視されがちであるが、日本においては、神仏と切っては切れないものとして認識されている。 古来より、地域共同体の守護神である氏神や鎮守神へ、村落などの氏子の共同体成因の集団的意志として、雨乞い、日乞い、虫送り、疫病送りなどの現世利益を得ることを目的とした祈願行為が行われていた。現代でも、「祭」のなかに、その伝統文化が根付いている。現在では、個人の心願に応えるために、神前にて、神職や巫女により祝詞奏上や神楽舞奉奏がされ、祈願者の玉串拝礼により得られるとする。個人としての心願の種類としては、病気直し(自分とその家人)、家内安全、商売繁盛、生活苦からの離脱に分類され、そのうち、病気なおしを祈願する場合がもっとも多いという[5]。 教典を読経したり、真言・題目を唱えたり、祈祷を行う、寺や塔、仏像などを建立することにより得られるとする。 日本では、仏教伝来以降、奈良大仏のように国策として仏像の建設をするなど、現世利益を得る政策がとられた。そして、災厄が訪れ、生活が挫折した際、回復するためにご利益を願うという民衆の心意に対応し、古代末期から中世にかけてさかんとなった真言・天台密教による加持祈祷により、民衆に広まった。現在でも、僧侶による護摩修行などが盛んに行われている。 鎌倉仏教の時代になると、法然のように「いのるによりて病もやみ、いのちも延ぶることあれば、たれかは一人として病み死ぬるひとあらん」(祈ることで病気が治り寿命が延びるなら、どこに死ぬ人がいるだろうか)として現世利益に否定的な者も現れた[6]。 インドではガネーシャが現世利益をもたらす神とされ、民間では非常に人気がある。特に「富の神様」として商人からの信仰を集めている。 典拠管理データベース: 国立図書館
プロテスタンティズム
現世利益
神道
仏教
インド
出典^ a b 広辞苑第五版
^ a b デジタル大辞泉
^ ⇒ヘルスプレス - 最晩年の江戸川乱歩は「パーキンソン病」と闘いながら口述筆記で執筆(佐藤博)
^ 東京大学出版会『宗教学辞典』 p.189-190 【現世】池田昭 執筆
^ 文部科学省(文部省)『全国宗教世論調査報告』(1953)
^ 浄土真宗本願寺派 妙観寺 ⇒祈り
参考文献
小口偉一ほか『宗教学辞典』東京大学出版会 1973年
竹内整一『「はかなさ」と日本人』平凡社〈平凡社新書〉、2007年3月。.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 978-4-582-85364-3。
関連項目
現代
ドイツ
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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