食の安心・安全や、BSE・鳥インフルエンザなどの動物由来感染症に世間の注目が集まるとともに公務員獣医師、特に地方公務員獣医師の仕事量は年々増加している。しかし前述のとおり昇進の遅さに加えて肉体・精神ともに過酷な業務が多く、大半の都道府県における給与体系が事務職と同一であるなど待遇面の改善が遅れているため、新卒の獣医学生の多くが小動物臨床を志望する傾向が年々強まっている。そのため東京都・神奈川県・大阪府など大都市圏を除いた多くの県が定員割れであり、さらには団塊世代の大量退職による深刻な公務員獣医師の不足が生じている。ただし、近年では改善案として給付型奨学金や初任給調整手当を支給する都道府県が増加している。(初任給調整手当は平成24年度で25都道府県で支給)[4] また、福岡県における「特定獣医師職給料表」の新設のように、同じく6年制である学部を卒業した医師と同様の待遇が必要とされている。
私立獣医科大学協会会長政岡俊夫
による「我が国における獣医師の需給見通し等について(意見)」(2013年2月)によれば、日本の獣医師数全体に不足はなく「むしろ供給過剰になる可能性(p.1)」があるとしながらも、公務員獣医師就職者については地域偏在が課題となっていることを認めており、「獣医師が担当していて他の職種と入れ替えることが可能な公的業務は相当にあります。(中略)欧米のような食肉検査補助員制度が我が国にも導入されれば、地方における公衆衛生獣医師の需要は激減します。(p.2)」「公衆衛生分野において欧米並みのスーパーバイザー的な制度の確立が出来上がれば、公務員獣医師の需要の激減も予測されます。(p.2)」などと提言している[5]。