また、枕木および砂利などの道床にかかるコストも最低限軌間分の幅が必要となるため、標準軌であれば「1,435mm+レールの厚み」の枕木が必要となるところ、狭軌であればそれだけ短縮でき[注 2]、より低規格かつ低コストの路線を作ることが可能である。そのため第一次世界大戦時には、同盟国と連合国の双方とも前線(en:front line)での輸送用に狭軌の鉄道を盛んに建設した。第一次世界戦後(en:Aftermath of World War I)のヨーロッパでは、その資材を流用した狭軌鉄道が一時流行した。
歴史
人力による運搬De re metallicaの木版画より。鉱山内に人力の鉄道が描かれている750 mm軌間の鉄道であるヴァルデンブルク鉄道バッド・ブベンドルフ駅に停車中の列車
初めて記録された鉄道は、ゲオルク・アグリーコラの1556年作 「デ・レ・メタリカ」(日本語で「金属について」)に登場している。この書籍に登場する鉄道は、ボヘミアの鉱山にあり、軌間は約2フィート(約610mm)であった。16世紀、鉄道は主にヨーロッパ中の鉱山で手押しされた狭軌の線路に限られていた。17世紀、鉱山鉄道は地上への輸送を提供するために拡張された。これらの路線は鉱山を近くの輸送ポイント(通常は運河または他の水路)に接続する工業用であった。これらの鉄道は通常、開発元の鉱山鉄道と同じ軌間で建設された[5]。 1802年にリチャード・トレビシックによってコールブルックデールカンパニーのため製造された世界初の蒸気機関車は、914mm軌間のプレートウェイ 多くの狭軌鉄道は工業企業の一部であり、一般輸送ではなく、主に専用鉄道として機能していた。これらの産業用狭軌鉄道の一般的な用途には、採掘、伐採、建設、トンネル掘削、採石、および農産物の運搬が含まれている。狭軌による広範囲のネットワークが世界の多くの地域で構築された。19世紀の森林伐採作業では、製材所から市場に丸太を輸送するために狭軌の鉄道がよく使われていた。キューバ、フィジー、ジャワ、フィリピン、オーストラリアクイーンズランド州では、現在も重要なサトウキビ鉄道が運行されており、トンネルの建設には狭軌の鉄道が一般的に使用されている。 狭軌の機関車の動力に内燃機関を初めて使用したのは1902年であった。フランシス・クロード・ブレイク 第一次世界大戦では、広範な狭軌の鉄道システム 狭軌の鉄道は通常、小さい客車や機関車(小さい車両限界)、小さい橋やトンネル(小さい建築限界)、および、急曲線を使用しているため、建設費用が少なくなる[11]。狭軌は、技術的に大幅に節約できる可能性のある山岳地帯でよく使用されるほか、経済的に成り立つための潜在的な需要の低い人口の少ない地域でも使用される。これは不毛の大地のため人口密度が低く、標準軌の鉄道の運行が厳しいオーストラリアの一部と南部アフリカにほとんどの場合当てはまる。 伐採、鉱業、または大規模な建設プロジェクト(特に、英仏海峡トンネルなどの限られたスペース)のような短期間の使用後に撤去される仮設鉄道の場合、狭軌の鉄道は大幅にコストが安く容易に設置・撤去することができる。しかし、そのような鉄道は、現代のトラックの性能の向上によりほとんど姿を消した。 多くの国では、建設コストが低いため、狭軌の鉄道が支線として建設され、標準軌の鉄道に乗り換えてきた。多くの場合、狭軌か標準軌かの鉄道の選択ではなく、狭軌の鉄道か敷設しないかの間で選択であった。 狭軌の鉄道は、鉄道車両(客車など)を標準軌または広軌の鉄道にそのまま乗り入れることはできない。また、旅客と貨物の移動には、旅客の乗り換えや、貨物の積み替えが必要となる[12]。石炭、鉱石、砂利などの一部のバルク商品は機械的に積み替えることができるが、この方法だと時間がかかり、積み替えに必要な設備の維持に手間がかかる。 鉄道網内に異なる軌間がある場合、ピーク需要時に異なる軌間の区域を超えて車両を移動させることができないので、必要な場所に車両を移動することは困難となる。狭軌の鉄道のピーク需要を満たすために十分な車両が利用可能である必要があり、需要が少ない期間には余剰設備となりキャッシュフローを生成しない。狭軌が鉄道網のごく一部を形成している地域では(かつてのロシアのサハリン地方の鉄道のように)、狭軌の設備の設計、製造、または輸入には追加の費用が必要となる。 互換性の問題に対する解決策には、輪軸あるいは台車の交換、ロールボック、軌間可変、デュアルゲージ、または改軌がある。 歴史的に、多くの狭軌の鉄道は、安くて早く建設することを優先するために低水準で建設された。その結果、多くの狭軌鉄道は、重量化または高速化の制約を受けることがよくある。例として、急カーブが使われるため、最大許容速度が制限される。日本では、田沢湖線、奥羽本線の一部の在来線(軌間1067 mm)を標準軌のミニ新幹線に改軌し、標準軌の新幹線が直通するようにした。ただし、路線の形状により、最大速度は元の狭軌の路線と同じである。日本の提案するスーパー特急のように、狭軌の線路が高水準に建設されている場合、この問題を最小限に抑えることができる。 狭軌の線路が潜在的な成長を考慮して(または標準軌と同じ基準で)設計されている場合、将来の成長に対する障害は他の軌間と同様になる。低水準で建設された路線の場合、線路を再調整してカーブを緩やかにし、踏切の数を減らし、車体傾斜式車両を導入することで、速度を上げることができる。 オーストラリアクイーンズランド州、南アフリカ、およびニュージーランドの1067 mm軌間の鉄道は、線路が標準軌の水準と同じ基準に合わせて建設された場合、標準軌の線路とほぼ同じ性能が可能であることを示している。200両編成の列車が南アフリカの鉄鉱石線で運行され、高速ティルト列車がオーストラリアクイーンズランド州で運行されている。もう1つの例は、ブラジルのヴィトーリア・ミナス鉄道 狭軌では安定性が低下することは、その列車が広軌と同じくらいの速度で走ることができないことを意味する。たとえば、標準軌の線路のカーブが時速145 kmまで走行できる場合、狭軌の同じカーブは時速130 kmまでの速度しか走行できない[13]。 ただし、19世紀半ば(1865年)の時点でもノルウェーの1067o軌間で最高時速56qほど(標準軌のイギリスでも当時のローカル線はこの程度)の走行が可能であると分かっており[14]、さらに狭軌でも20世紀前半では朝鮮鉄道の黄海線(762o軌間)で1935年から最高時速70kmの列車を走らせている[15] など、蒸気機関車時代でもこれより広軌のローカル路線と比べてもそこまで変わらないケースもあった。 日本とオーストラリアのクイーンズランド州では、最近の路線改良により、軌間1067mmの線路で、時速160 kmを超えることができた。
蒸気機関車の導入
工業のための狭軌の鉄道
内燃機関車の導入
第一次世界大戦以降
利点と欠点
利点
欠点とその改良
互換性
高速化の困難さ
高水準化した狭軌の鉄道クイーンズランド州の車体傾斜式電車。オーストラリアクイーンズランド州の鉄道網は軌間1067 mmの鉄道で構成されている
最速の列車