狂犬病
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病原体「リッサウイルス属」も参照狂犬病ウイルスの電子顕微鏡写真(アメリカ疾病予防管理センター、1975年)

リッサウイルス属に属するウイルスは、遺伝子解析、血清型の分析から、下記の7つの遺伝子型 (Genotype) に分類される[13][14]

Genotype 1(狂犬病ウイルス:Rabies virus)

Genotype 2(ラゴスコウモリウイルス:Lagos bat virus)

Genotype 3(モコラウイルス:Mokola virus)

Genotype 4(ドゥベンヘイジウイルス:Duvenhage virus)

Genotype 5(ヨーロッパコウモリリッサウイルス1:European bat lyssavirus type 1; EBL1)

Genotype 6(ヨーロッパコウモリリッサウイルス2:European bat lyssavirus type 2; EBL2)

Genotype 7(オーストラリアコウモリリッサウイルス:Australian bat lyssavirus; ABL)

Genotype 1(遺伝子型1型)が従来知られていた狂犬病ウイルスで、Genotype 2(遺伝子型2型)のラゴスコウモリウイルス以外のリッサウイルス属に属するウイルスは、ヒトに狂犬病様の脳炎を起こすことが知られている。
診断

診断法は「蛍光抗体 (FA) 法」によるウイルス抗原の検出、「RT‐PCR法」によるウイルス遺伝子の検出、ウイルス分離、血清反応、ELISA による抗体価の測定などにより行われるが、患者の血液や髄液中の抗狂犬病ウイルス抗体は発症前の潜伏期間中には検出されないため、狂犬病のウイルス感染を判定することは非常に難しい。
予後狂犬病患者

試験的な治療法の成功症例を除くと、ワクチン接種を受けずに発病した場合は、確実に死亡へ至る[15]。確立した治療法はなく、予後は絶望的である。

2004年10月以前までで、記録に残っている生存者は僅か5人のみで、いずれも発病する前に狂犬病ワクチン接種を受けていた。2004年10月、アメリカ合衆国ウィスコンシン州において15歳の少女が狂犬病の発病後に回復した症例がある[16]。これは発病後に回復した6番目の症例であり、ワクチン接種なしで回復した最初の生存例でもある[17]

この際に行われた治療法は「ミルウォーキー・プロトコル」と呼ばれ、実際に数人が生存しており、治療法として期待されているが、回復に至らず死亡した事例が大半である。これを用いても生存率は1割ほどであり、たとえ生存したとしても、麻痺などの後遺症が残るのが現状であり、研究途上である。

近年では、この治療法により10歳のアメリカ人少女、2008年10月のブラジルペルナンブーコ州での16歳の少年(歩行困難と発語困難により依然として治療を続けている)、2018年1月9日のブラジルのアマゾナス州・バルセロス市在住の14歳の少年[18]など、回復に至った事例が稀にある。

狂犬病は「(非遺伝性疾患として)もっとも致死率が高い病気」として、プリオン病クロイツフェルト・ヤコブ病を含む)とともに、ギネス世界記録に記録されている[19]
予防
人間

ヒトについては発生国への渡航前の狂犬病ワクチン接種、および発病前(世界で感染の疑いがある動物に咬まれて帰国した際など)の治療、および抗ウイルス抗体(抗狂犬病免疫グロブリン製剤)の投与により、発症阻止が図られる。日本では2019年現在、抗狂犬病免疫グロブリン製剤が承認されていないため、ワクチン接種は、渡航医学で輸入ワクチンを取り扱うトラベルクリニック・病院にて、医師の自由診療で受ける必要がある。

上述の通り、発症後の治療法は存在しない。感染前(曝露前)であれば、ワクチン接種によって予防が可能である。これはヒト以外の哺乳類でも同様であり、そのため日本では狂犬病予防法によって、飼い犬の市町村への登録および毎年1回の狂犬病ワクチンの予防接種が義務づけられている。狂犬病ウイルスを保有する可能性のある動物に噛まれたり引っかかれた場合は直ちに傷口を消毒し、医師の診断を受けること[20]

アメリカ疾病予防管理センターでは、狂犬病が発生している地域へ渡航する人のうち、獣医師、野生動物保護の従事者、獣医学科の学生、適切な医療をすぐに受けることが難しい地域を訪れる者については、狂犬病ワクチンの曝露前(事前)接種を勧めているが、その他の旅行者、長期滞在者については狂犬病ワクチンの接種を勧めていない。

日本在住者が海外へ行った際の最良の予防法は、日本に居るのと同じ感覚で、現地のイヌ、ネコ等の動物に接せず、近づいたり手を出したりしないようにすることである。

研究目的における病原体としての取り扱いは、バイオセーフティーレベル2あるいは3レベルの実験室が要求され、万一に備えて、研究者はワクチンを接種する配慮が必要である。
動物

ペットについては定期的にワクチン接種を行い、室内で飼育することにより狂犬病ウイルスを保有している可能性のある他の動物類との接触を避けること。また必要に応じて去勢・避妊手術を行い、野良犬や野良猫を増やさないこと[21]
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