犯罪(はんざい、英語: crime)とは、刑罰法規に規定される「構成要件に該当する、違法で有責な行為[1]」のことである[2]。
なお、犯罪行為を行った者は犯罪者(犯人)と呼ばれる。近代法以前は咎人(とがにん)などと呼ばれていた。 何を犯罪と判断しこれをいかに処罰するか、ということに関し、法執行者の専断(もっぱら法執行者の心に浮かんで、各法執行者が勝手に判断したこと)にゆだねる、とする考え方が古代や中世などではしばしば採用されていた。これを罪刑専断主義という。これに対し、近代では、何が犯罪であるか各犯罪に対してどのような刑罰を与えるべきかを、あらかじめ法律によって明確に定めておかなければならない、という基本原則が採用されるようになった。これを罪刑法定主義と言う。その成立の歴史としては一般に1215年のイギリスにおけるマグナ・カルタ(第39条)に由来するものとされており、その後の権利請願(1628年)や権利章典(1689年)によって近代市民法の原理として確立した。現在では多くの国でこの罪刑法定主義が原則とされており刑法など法典に犯罪として規定されていない行為については犯罪とされない。日本でも明治時代、フランスのナポレオンの主導で制定されたナポレオン刑法典 犯罪の成立要件をどのように構成(体系化)するかを犯罪論体系の問題と呼ぶ。この体系化によって犯罪の定義が行われる。 刑法学における犯罪は、ドイツの刑法理論を継受する国(日本など)においては、犯罪の成立要件を構成要件、違法、有責の三つの要素に体系化し、犯罪を「構成要件に該当し違法かつ有責な行為」と定義することが多い。しかし、他の体系を用いて犯罪を定義する刑法学者もある(例:構成要件該当で違法、そして故意の行為(過失は例外で認める)、「有責」は、「行為者」について問う)。 行為でないものはおよそ犯罪たり得ないのであり、行為性は犯罪であるための第一の要件であるとも言える。行為性を構成要件該当性の前提となる要件として把握する見解もある。行為の意味についてはさまざまな見解が対立している(行為論)。行為でないものとしてコンセンサスのある例としては、人の身分(犯罪の実行者と身分関係があること-連座・縁座など)や心理状態(一定の思想など)などがある(歴史的にはこれらが犯罪とされてきたことがある。)。犯罪が行為でなければならないということは、これらのものはおよそ犯罪たり得ないことを意味する。なお、行為とは作為だけでなく不作為を含む概念である。 ドイツの刑法学者エルスント・ベーリング ドイツの刑法学者・マックス・エルンスト・マイヤーをはじめとするドイツや日本での通説は、犯罪の成立要件として構成要件、違法、有責の3要素を挙げ、構成要件を犯罪の第一の成立要件とする。 犯罪の成立に関しては、罪刑法定主義の観点から、まず、構成要件該当性が判断される。問責対象となる事実については構成要件該当性(充足性とも)が必要である。構成要件とは、刑法各論や特別刑法に個別の犯罪ごとに規定された行為類型である。端的に言えば、犯罪のパターンとして規定されている内容に行為が合致するかどうか、が構成要件該当性の問題である。構成要件要素としては、行為(行為を構成要件とは別の犯罪成立要件とみる説では除かれる)、行為の主体、行為の客体、行為の状況などが挙げられる。各犯罪類型の構成要件はそれぞれ固有の行為、結果、因果関係、行為主体、状況、心理状態などのメルクマール(構成要件要素)を備えており、問責対象となる事実がこれらの全てに該当して初めて構成要件該当性が肯定されるのである。なお、構成要件には基本的構成要件(直接の処罰規定があるもの)と修正された構成要件(未遂犯や共犯など)があるとされる。 行為の主体は自然人でなければならないとされ、刑法上は法人は犯罪の主体とならないとするのが日本では通説である。
概説
犯罪論の体系と犯罪の定義
構成要件該当性
行為論
構成要件論