特許
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財産権説と受益権説に細分される[2]
財産権説

発明に対する権利は財産権であるとする説。基本的財産権説とも呼ばれる。この説によれば、特許法は、権利を創設するのではなく、規制するものであるということになる。この説では、各国で独立して特許が与えられること(属地性)、複数の者が独自に同じ発明を完成しても最初に出願(または発明)した者しか権利を取得できないこと、出願をしなければ権利を取得できないことを説明することができない[2]
受益権説

発明が社会に貢献した程度に比例して、その報酬を受ける権利があるとする説。基本的受益権説とも呼ばれる。この説では、上記の財産権説の矛盾に加えて、発明の社会への貢献度とその報酬とが必ずしも比例しないことを説明することができない[2]
産業政策説

発明に対する権利は、国の産業政策として発明の権利保護を図るために与えられるとする説。公開代償説、発明奨励説、過当競争防止説(競業秩序説)に細分される[2]
公開代償説

仮に、発明者に独占権を認めないとすると、発明が他人に模倣されてしまうために、発明者は発明を秘密にし、その結果、発明が社会的に活用されないことになる。このため、新規で有用な発明を世の中に提供した代償として、一定期間、その発明を排他的に独占する権利を付与するとする説で、現在最も広く支持されている説である。秘密公開説、代償説とも呼ばれる[2]。この説に基づき、発明の権利を得るには原則的に発明の公開が求められているが、TRIPS協定では秘密特許(通称)など知的財産権に対する優先事項が極一部に限り認められている。
発明奨励説

仮に、発明者に独占権を認めないとすると、発明者は自ら発明したにもかかわらず他者に対して優位な立場に立つことができず、発明を行ったり、それを事業に結びつける意欲を失い、その結果、発明が社会的に活用されないことになる。そこで、発明を奨励するために、一定期間、その発明を排他的に独占する権利を付与するとする説である。刺激説とも呼ばれる[2]
過当競争防止説

仮に、発明者に独占権を認めないとすると、発明が他人に模倣されてしまうために、発明者や企業は、他人の発明を模倣することや、自分の発明を模倣されないようにすることへ注力し、過当競争状態が生じ、発明自体に対する意欲や投資のインセンティブが働かない。そこで、過当な競争を防止するために、一定期間、その発明を排他的に独占する権利を付与するとする説である。競業秩序説とも呼ばれる[2]
批判

ノーベル経済学賞を受賞した経済学者ジョセフ・スティグリッツは、適切に設計されていない知的財産権は諸刃の剣であり、技術革新を生み出すための研究投資に動機付けを与える一方で、知識の拡散を阻害する要因も働くと述べる。これは、企業が集団的知性から得られるものを最大化することを促進する一方、その貢献を最小化することも促進するためであり、その場合には技術発展は阻害されてしまう[8]

同じくノーベル経済学賞を受賞した経済学者エリック・マスキンは、ソフトウェア産業のような技術革新が間断なく起こる産業においては、特許の基準を厳格にするよりも、特許制度を廃止した方がよいかもしれないと論じる[9]。ソフトウェア産業では、先に起きた小さな技術発展をもとにして次の小さな進歩が起きるというように、ドミノ倒し式に技術発展する構造となっている。多くの独占者が行うように、特許権者は高額なライセンス料を課す[9]。これによって各々の小さな進歩が妨げられ、全体としてイノベーションが阻害されてしまう。

米国では、特許政策によって制御のきかない独占が数十年間も製薬会社に許されていた。このため、米国民は他の先進国の2倍の価格で処方薬剤を購入している。一方、米国以外の先進国では、特許による独占の一方で、薬価統制や薬価交渉等の政策により、製薬会社が独占を悪用することに一定の制限を課している[10]
特許検索サービス

各国では、特許庁等が公的な特許検索サービスを提供している。日本では独立行政法人工業所有権情報・研修館が運営する特許情報プラットフォーム (J-PlatPat) があり、特許以外にも実用新案意匠及び商標等の産業財産権インターネット上で調べることができる。日本以外では、欧州特許庁 (EPO) のEspacenetが代表的である。

一方、民間企業も有料又は無料のサービスを提供している。GoogleGoogle Patentsでは、日米欧を含む17ヶ国・機関が発行した特許文献を無料で検索できる[11]。国際的なサービスとしては、Clarivate Analytics(旧トムソン・ロイター)、ProQuest Dialog(英語版)、STN(FIZ Karlsruhe(英語版))、日本国内でのサービスとしては、Shareresearch(日立製作所)、CyberPatent Desk(サイバーパテント)、Japio-GPG/FX(日本特許情報機構)等がある。
特許マップ

特許マップは、特許情報を利用目的に応じて加工・分析して、図面、グラフ、表などで視覚的に表したもので、パテントマップとも呼ばれる。特許マップは、技術開発の動向や課題等を把握するために用いられる[12][13]
その他

パテントレザー
- エナメル加工された皮革素材は特許技術であったためこの呼び方がされている。

脚注[脚注の使い方]
注釈^ 国家(または君主)が法人または個人に対して特権を付与する特許状(: charter)とは意味が異なる。特許と特許状の意味の違いに注意。
^ 行政法上の分類としては、「特許」(形成的行為)ではなく「確認」(準法律行為的行政行為)にあたる[1]
^ 日本では、出願をした日から20年(特許法第67条)。
^ ジェームズのときは特許がコモン・ロー裁判所の管理下にあったのに勅許が乱用された。

出典^ 神山智美 (2018年4月6日). “ ⇒「ビジネスに関わる行政法的事案」第1回:「特許」「許可」「認可」とは”. 一般社団法人GBL研究所. 2022年4月17日閲覧。
^ a b c d e f g h i j k l m n o 吉藤幸朔著、熊谷健一補訂『特許法概説第13版』
^ 小太郎, 名和「アイデアの独占 その正当化への迷い」『情報管理』第57巻第1号、科学技術振興機構、2014年、50?54頁、doi:10.1241/johokanri.57.50。 
^ 』知識の社会史―知と情報はいかにして商品化したか』,ピーターバーグ著,2004年,新曜社,p230
^ a b c 産業財産権制度の歴史 特許庁
^ 大山正嗣「特許から見た産業発展史に関する調査研究」『知財研紀要』第9巻、知的財産研究所、2000年、38-47頁、.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISSN 18813712、NAID 40005378089、NDLJP:10959121。 
^ 清瀬一郎 (昭和4年1月30日 昭和4年). 特許法原理. 株式会社 巌松堂書店. p. 42 


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