特定非営利活動法人
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10人以上の社員がいること(申請時の必要書類に社員の氏名及び住所の一覧表が求められる。法律上、社員の住民票提出の必要は無いが、表記する住所は住民票記載と相違があってはならない)

同族会社のような形態を取らせないことや反社会勢力の関与を防止することを目的として、理事(役員)の就任条件に関する規定は多岐にわたり定められている。例えば「役員の総数を3で割った商」が2未満である場合は、互いに3親等内にある者同士が同時に役員に就任することができない。「社員」は法人の業務に従事する者を指しておらず、営利企業にいう株主のような存在である。ただし社員となっている人物が法人の業務に従事することに法令上の規制はない。

以上の条件を満たし、その後定款を「発起人総会」で決定し、原則として活動拠点となる都道府県(複数の都道府県にまたがる場合は内閣府)に申請を行い、2か月から4か月間の審査期間中に市民にその定款や予算案などを公開し、異議がなければ認証される。この「市民への公開」をする手段や場所は、それぞれの申請を受ける地方公共団体が条例で定める。

設立の認証がなされた場合は、一般的な営利法人と同様に商業登記(設立の登記)を行い、登記が完了した時点で登記事項証明書と、成立時に作成した財産目録を自治体に提出しなければならない(第7条、第13条)。なお設立登記にあたっての登録免許税は免除される。財産目録は主たる事務所に常備しなければならない(第14条)。
管理と運営

特定非営利活動法人の管理と運営は、特定非営利活動促進法第2章第3節(第14条の2?第30条)に規定されている。なおかつては理事の地位にある者全員が同等に法人の代表権を持つことになっていたが、2012年(平成24年)4月の法改正によって特定の理事以外がその権限を持たないものとすることも可能になった(ただし定款においてそれを明記しなければならない)。
貸借対照表の公告義務

特定非営利活動法人は、定款にてあらかじめ定めた手段によって貸借対照表を一般公開しなければならない(第28条の2)。公告する手段は官報や日刊の新聞への掲載などが指定されているが、団体のホームページに掲載することも可とされている。なお、電子公告による公開である場合、短くとも「財務諸表の作成から5年後にあたる日」が含まれている事業年度の終了まで掲載を継続しなければならない(同条第4項)。

貸借対照表以外の法定書類(第28条第1項に言う「事業報告書等」に該当する書面)については所轄庁への提出と事務所内への備え置きで足りるが、閲覧の請求を受けた際は原則として応諾しなければならない(事務所備え置き分に関して第28条第3項、所轄庁提出分に関して第30条)ため、実質的に不特定多数への公表が必要とされているものと捉え、収支計算書や財産目録も含めてホームページで一般公開する団体も多い。
法定書類記載の個人情報の取り扱い

前節のとおり、所轄庁への提出または事務所備え置きがされる書類は請求に応じて開示されなければならないが、当該書類には役員名簿と社員名簿が含まれており、原本を開示することで名簿に記載されている者の個人情報が無条件に公表されてしまう問題があった。このため、2020年12月2日に成立した法改正により、2021年6月9日以降は該当者の住所居所の記載を除いた状態で開示することが可能となった。[9]
認定特定非営利活動法人制度・特例認定NPO法人制度「認定特定非営利活動法人制度」も参照
犯罪利用等の諸問題・不祥事
隠れ蓑としての特定非営利活動法人(NPO法人)

非営利性のもつ好感の得やすさを隠れ蓑に、一部、事実上営利目的であったり非公益的活動を行ったりする例が出てきた。とくに、企業業界団体の広報宣伝活動の隠れ蓑にしたり、犯罪に関与したり、実態は右翼団体[10]左翼団体であるケース等、NPOであることを利用した悪徳商法がある。内閣府は、市民による監視の一環として、活動が懸念される法人に対し「市民への説明要請」を実施することとした。この説明要請の内容、及び要請への回答については、すべて内閣府ホームページ上や各都道府県市区町村のサイトで閲覧できるという行政措置をした。当然ながら、説明要請に対して何らの応答も無かった際はその事実を公表される[11][12]
不明朗会計・公金横領

都道府県から委託されて、税金から多額の資金調達している団体の会計が問題になっているケースが見られる。大雪りばぁねっとのような不明朗会計が発覚したことで運営者が横領罪で逮捕され、懲役6年の判決を受けている[13]。「認定特定非営利活動法人制度#不正・ガバナンスや杜撰会計管理問題」も参照
法人脱法売買や犯罪利用の横行

2018年6月7日付の毎日新聞によると、全国の11のNPO法人が仲介業者などを介して売りに出されている実態が明らかになった。うち6件では実際に売買が成立しており、中には買収直後に、詐欺目的で法人名義での口座を多数開設していたケースもあった。特定非営利活動促進法上、売買は禁じられていないものの、善意で設立されているはずのNPO法人が売買の対象になっていて、法の趣旨に反するとの批判が、専門家らから多数出ている[14]

毎日新聞は監督すべき自治体も休眠中の特定非営利活動法人は「野放し」と自認していることを指摘し、中には詐欺や売春に利用されているケースさえある。2013年には国の有識者会議は休眠NPOを「不正の温床になりかねない」とする報告書をまとめたが、施行20年を迎える2018年11月時点でNPO不正の撲滅出来ていないままである。毎日新聞は、現行のNPO法では対処できないので改正が必要だと報道している[15]
脚注[脚注の使い方]
注釈^ すなわち、構成員に対して利益の還元をしてはならず、その目的の事業の更なる発展・強化を図るための資金へまわすことを目的としている。
^ 特定非営利活動促進法第2条第2項の定義参照。


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