特定商取引に関する法律
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ネガティブ・オプション(勝手に商品を送りつける方法)について、物品を送付した日から3ヶ月を経過した場合、業者は、当該物品の返還を請求することができなくなる。物品を送りつけられた者が、業者に対して引取りを請求した場合には、その期間が1ヶ月に短縮される。

昭和59年改正

1984年、割賦販売法上のクーリング・オフ期間が4日間から7日間に延長されたのに合わせ、訪問販売におけるクーリング・オフ可能期間が7日に延長された。[4]
昭和63年改正
改正の背景及び経緯

本法制定後、訪問販売及び通信販売による小売高が増大し、通商産業省(当時)消費者相談室が受け付けた消費者相談件数のうち、訪問販売及び通信販売に関する相談件数が著しく増加した。

その相談内容をみると、訪問販売に関しては、物品の販売に関するものだけでなく、役務(サービス)の提供に関する苦情が大きな割合を占めるようになり、悪質な業者による販売手口の巧妙化及び複雑化の傾向(具体的には、キャッチセールス及びアポイントメントセールスの登場)が見られた。

また、通信販売については、不適切な表示及び広告に関する苦情が、最も大きな割合を占めた。

さらに、本法制定後、連鎖販売取引に関する紛争は急激に減少していたが、本法の「連鎖販売取引」の定義に該当しないものの、同取引と共通の特徴を有するマルチまがい商法が登場し、これに関する紛争が生じるようになっていた。

なお、1985年(昭和60年)には、豊田商事事件が発生し、社会問題化している。[注釈 1]
改正の内容

こうした状況を踏まえて、1988年(昭和63年)、本法が大きく改正された。改正の主な内容は、以下のとおりである。[5]

訪問販売及び通信販売における指定商品を拡充し、役務(サービス)及び権利も指定対象とされた。

訪問販売については、キャッチセールス及びアポイントメントセールスの方法により誘引した顧客と店舗内で契約した場合も、訪問販売に含めることとした。

通信販売については、誇大広告を規制の対象とした。

従来、再販売をする場合に限定されていた「連鎖販売取引」の定義を変更し、紹介及び委託販売による場合も、「連鎖販売取引」に含め、規制対象とした。

訪問販売におけるクーリング・オフ期間が、従来の7日から8日に延長された。

ネガティブ・オプションにおいて、事業者が返還請求権を失う期間が3ヶ月から14日に短縮された(引取請求があった場合は7日)。

平成8年改正
改正の背景及び経緯

日本は、1990年代中期から、失われた10年とも言われる不況に突入し、国民の間には雇用に対する不安が広がっていたことから、資格に関する関心が高まり、資格取得のための通信教育に対する需要が増加したが、時を同じくして、テレマーケティングが発達し、電話を利用した取引形態が急速に普及した。このような状況下において、通信教育を中心とする電話勧誘販売に関する紛争が増加した。

また、昭和63年改正後、紛争が減少していた連鎖販売取引についても、平成3年以降、過剰なセールストークによる勧誘等に起因する紛争が増加していた。

これらの紛争に対処するため行われたのが、平成8年改正である。
改正の内容

改正の主な内容は、以下のとおりである。[6]

従来は通信販売の一種として把握されており、主に広告に関してのみ規制されていた電話勧誘販売が、独立の取引形態として規定されることとなり、書面交付の義務化及びクーリング・オフ制度の導入等、訪問販売に類似した規制が設けられた。

連鎖販売取引については、従前統括者及び勧誘者のみが刑事罰の対象となっていたところ、それ以外の者(一般連鎖販売業者)も刑事罰の対象になりうることとなった。

クーリング・オフ期間が14日間から20日間に延長された。

消費者が、行政機関に対して、調査及び措置を求める申出制度が設けられた。

平成11年改正

平成11年改正によって、特定継続的役務提供(具体例:エステティックサロン外国語会話教室等)に対する規制が設けられた[7]

継続的役務取引については、不公正な勧誘等による紛争のほか、契約が長期にわたるため、事情変更(契約者の転居等)による中途解約の必要性が高いにもかかわらず、これに関して業者側に不当に有利な契約(高額な違約金等)がされていることによる紛争が生じていたので、これらへの対処として、クーリング・オフ制度及び中途解約制度等が導入された。[8]

また、罰則の強化(不実告知等の場合に法人に課される罰金の上限を3億円に引き上げ)などが行われた。
平成12年改正
改正の背景及び経緯

いわゆる内職商法モニター商法被害、特定負担(連鎖販売取引に伴う金銭的負担)を2万円未満とする連鎖販売取引[注釈 2]、広告と契約手続との区別が不明確なインターネット取引における紛争(広告を見ていただけのつもりが、いつのまにか契約申込画面となっており、契約を締結したことになっていた等)といった当時の訪問販売法の規制の及ばない消費者トラブルが急増していた。[9]

(内職商法は主に電話勧誘により、モニター商法は主に訪問販売の方法により勧誘されていたものの、訪問販売法は消費者保護を目的とする法律であり、同法10条(当時)が、業者に対して契約の申込みをした者が、「営業のために」若しくは「営業として」当該契約を締結した場合を適用除外としていた関係で、当時の訪問販売法の規制が及ばなかった。 [10]

これらの問題に対処するため、平成12年改正が行われた。
改正の内容

改正の主な内容は、以下のとおりである。[11]

本法の題名が、「訪問販売法」から、「特定商取引に関する法律」に改題され、条文番号が振り直された。

業務提携誘引販売取引(いわゆる内職商法及びモニター商法がこれに含まれる。)に関する規定が新設され、連鎖販売取引とほぼ同様の規制がされた。

連鎖販売取引における広告規制の強化

通信販売における広告規制の強化(インターネット販売を念頭に、顧客の意に反する申込みをさせる広告が禁止された。)

連鎖販売取引における特定負担に関する金額要件の削除

平成14年改正

携帯電話に対する広告メールの一方的な送信(いわゆる迷惑メール)に対処するため、オプトアウト規制(広告の送付は原則として自由であるが、送信を拒否した者に対して広告を送信することを禁止した。) なお、後述のとおり、上記オプトアウト規制は、平成21年改正により、事前の承諾を得た顧客以外に対する電子メール広告の送信を禁止するオプトイン規制に改められた。[11]

なお、特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(特定電子メール法)も同年に施行された。
平成16年改正

特定商取引全体について、紛争が増加傾向にあったことから、全般的な規制の強化が行われた。主な改正内容は、以下のとおりである。[11]

訪問販売において、販売目的を秘したうえでのキャッチセールス等により契約締結させることが禁止された。[注釈 3]

不実告知と併せて直罰の対象とされた。家庭への戸別訪問で行われることの多い「点検商法」(例・水道局保健所をかたり水道水を点検→汚れているので浄水器を売り込む)などへの対策である。


不実告知の明確化及び刑事罰の導入(従前行政処分のみであった。)

適合性の原則に反する勧誘の禁止

不実告知等による契約の取消し制度導入

クーリングオフの行使について販売者から妨害があった場合は、妨害がなくなり「クーリング・オフ妨害解消のための書面」を受領するまでは、クーリングオフ期間が進行しないようになった。

連鎖販売取引に関する商品販売契約について、中途解約のルール化。以下の条件にすべて該当する場合、一定額(購入価格の90%相当)の返金が得られる。直接の購入元が無資力の場合は、販売会社に対して返金請求が可能。

入会後1年未満

受領して90日未満の商品

商品を再販売していないこと

商品を使用又は消費していないこと

商品を棄損していないこと


事業者が不実告知を行ったかについての判断のために、行政庁が合理的根拠を示す資料の提出を求めうると共に、当該資料が提出されない場合の不実告知みなし規定を設ける法6条の2に導入等、行政機関の権限強化が図られた。

平成20年改正
改正の背景及び経緯

高齢化社会及び核家族化の進展により、独居生活を送る高齢者に対する悪質な訪問販売が社会問題化した。 例えば、2005年には、埼玉県富士見市に居住する認知症を患った高齢者宅に、住宅リフォーム工事業者計19社が次々と訪問販売を行い、クレジット契約を利用して、総額約5000万円に及ぶリフォーム契約を締結させた結果、当該高齢者は支払い不能に陥り、クレジット業者が、当該高齢者の自宅について強制執行の申立てを行い、これが競売に付されるという事件が発生している[12]


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