特別区
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特別区(とくべつく、英語: Special Ward)は、日本国における行政区画地方公共団体の1つである。市町村に準ずる基礎自治体特別地方公共団体の1つ。現時点では、東京都に存在する23の特別区のみ[注釈 1]がある。

2013年に大都市地域における特別区の設置に関する法律が全面施行されたため、東京都以外の道府県であっても、政令指定都市の人口または政令指定都市と同一道府県内の隣接市町村の人口の合計が200万人以上ならば特別区へ移行することができるようになった[1]

「区」という呼称を含むものの、市に準じた地方自治に関する権能を有する点で、同じく特別地方公共団体である財産区とは異なる。また市町村には属さない団体である点で、行政区地域自治区合併特例区などとも異なる。財産区や合併特例区と同様に、法人格を有する団体である。
沿革東京都区部の各区の位置(クリックでリンク先に移動) /

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特別区は、現行の地方自治法においては、その第281条の2第2項において都の地域内に存在する基礎自治体の一つとして位置づけられている。特別区の制度は、1947年昭和22年)に公布された地方自治法に定められた[2]

なお、「特別区」という用語は特別区の制度創設当初から現在まで、日本において存在する地方公共団体としての「都」が東京都のみであり、実質的には「東京都区部(東京23区)」として用いられている。

特別区の制度は、明治時代に定められた区制、市制などの大都市制度を基とする。

1878年明治11年)、東京府において郡区町村編制法が施行されて、宮城(皇居)周辺の都心部に、15区が定められた。1889年(明治22年)には、この15区に市制が施行され、東京市となる。

1932年昭和7年)、周辺82町村が編入される。このとき、既存の15区に加えて、新たに20区が定められ、35区となった。第二次世界大戦中の1943年(昭和18年)には東京都制が施行されて、東京府および東京市は廃止され、35区は東京都の行政区となる。

1947年(昭和22年)3月、35区のうち24区が11区に再編され、再編されなかった11区とあわせて22区となった。同年5月、地方自治法が施行されて22区は特別区となった。同年8月、板橋区から練馬区が分区されて23区となった。制度創設から長らく、特別区は東京都の「内部的団体」と位置付けられ、日本国憲法93条2項の「地方公共団体」にあたらないと解されてきた[3][4]

その後、2000年平成12年)の地方分権改革により、特別区は「基礎的な地方公共団体」と規定され、その母体である東京都から相当程度の独立性を与えられた。ただし、特別区の法的地位は未だに「特別地方公共団体」であり、固定資産税の賦課徴収や消防責任など、本来は市町村の権限に属するものが東京都(特別区の連合体としての地位にある東京都)に留保されており、また都区財政調整制度のような地方税の特殊な分配制度があるなど、市町村のような「普通地方公共団体」と同一の権能を有するわけではない。よって、今なお、「区」は「都」の内部団体としての性格を残しているといえようか(都道府県と市町村については、対等な関係にあるといえる)。
市町村との相違点
法律・行政上の相違点

地方自治法第3編「特別地方公共団体」第2章「特別区」(第281条から第283条)の規定に基づき運営されており、行政区は議会を擁さないのに対し、普通地方公共団体のように区議会を擁する。しかしながら、区の管理・運営業務の一部はが行う。そこで、都と特別区及び特別区相互のこの連絡調整を図るため都区協議会が設けられている。また、国の行政機関や各省大臣が助言や勧告を行うことができる普通地方公共団体とは異なり、特別区の運営について助言及び勧告をすることができるのは都知事のみであり、または特別区財政調整交付金に関する事項については総務大臣のみである[5]

特別区は、基本的には基礎的自治体である「市町村」に準ずるものとされ(地方自治法第281条の2第2項・第283条)、「市」の所掌する行政事務に準じた行政権限が付与されている(同法第281条第2項・第283条)。

しかし特別区は「法律または政令により都が所掌すべきと定められた事務」および「市町村が処理するものとされている事務のうち、人口が高度に集中する大都市地域における行政の一体性及び統一性の確保の観点から当該区域を通じて都が一体的に処理することが必要であると認められる事務」を処理することができない(同法第281条第2項・第281条の2第1項)。

具体的には、特別区は上下水道・消防などの事務に関しては単独で行うことができず、特別区の連合体としての「都」が行っている(水道法第49条、下水道法第42条、消防組織法第26条ないし第28条など[6]。東京都はこれらの規定に基づき、東京都水道局東京都下水道局東京消防庁などを設置している。ただし東京都では特別区以外の市町村でも、上下水道・消防[注釈 2] に関しては特別区同様に都による一括運営となっている。

また都市計画や建築確認についても、一定規模以上のものについては法令により都に権限が留保され、都が直接事務を行っている。また特別区の自治権拡大に関する地方自治法改正法の施行前日の2000年(平成12年)3月31日までは清掃事業も都の業務とされており、東京都区部においては同日まで東京都の行政機関である「東京都清掃局」がこの地域の清掃事務を統一的に行っていたが、同年4月1日に各特別区および東京二十三区清掃一部事務組合に移管された。

さらに旧警察法においては、都知事の所轄と特別区公安委員会の管理の下、特別区の存する区域を管轄とする自治体警察を設けることとなっており(旧警察法第51条ないし第53条)、東京都ではこれに基づき東京都知事の所轄と特別区公安委員会の管理の下、旧警察法に基づく警視庁を設置していた。

東京都及び特別区の事務の処理については、都と特別区及び特別区相互の間の連絡調整を図るために設置された「都区協議会」によって協議され(同法第282条の2)、都と各特別区の相互間で調整を図っている。その一方、特別区は政令指定都市・中核市・その他特に政令で指定された相当な規模をもつ市でなければできない行政事務のひとつである「保健所の設置および運営」を行う責務を有する(地域保健法第5条第1項。保健所政令市参照)など、所掌する行政事務の一部において、通常の市町村とは大きく異なった扱いがなされている。

税制面でも、事務事業の特例に対応した特別の制度が存在する。通常であれば、市町村税である都民税(市町村民税法人相当分)、固定資産税特別土地保有税事業所税都市計画税は都税となっている。このうち、市町村民税(法人分)、固定資産税、特別土地保有税は、「都区財政調整制度」(地方自治法第282条)により、財政調整の原資となり、都と特別区とで協議の上、都条例で配分割合を決め、特別区の財源不足額に応じて、財源調整交付金として各特別区に交付される。国有提供施設等所在市町村助成交付金国有資産等所在市町村交付金特別とん譲与税は、通常は市町村に交付されるが、特別区の区域においては都の収入となる。都市計画税を原資とした都から特別区への補助金として、都市計画交付金がある。地方交付税制度上も、都と特別区の区域については、両者の基準財政需要額と基準財政収入額を算定した上で、道府県分と大都市分として合算して算定(合算特例)されることになっている。

正規職員の採用制度についても、市町村とは大きく異なった特徴がある。東京都の特別区では正規職員の採用事務のほとんどを、全区からなる一部事務組合である「 ⇒特別区人事・厚生事務組合」のもとに設置された「特別区人事委員会」で一括して行っている。同委員会実施の採用試験に合格した者に対し、各区役所等が面接などを行って採用者を決定する。国家公務員国立大学法人等の採用手法と同様である。

そのほか、他の大規模な政令指定都市が通常行っている公営交通などの事業も都の主要な業務となっている(東京都交通局による都営地下鉄都営バスの運行など)。
東京都の都庁所在地「都道府県庁所在地#東京都の都庁所在地」も参照


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