物理量
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式-3.1(角括弧表記): q   [ u ] {\displaystyle q\ [u]}

例: 400   [ n m ] ,   20   [ k g ] {\displaystyle 400\ \mathrm {[nm]} ,\ 20\ \mathrm {[kg]} }


式-3.2(丸括弧表記): q   ( u ) {\displaystyle q\ (u)}

例: 400   ( n m ) ,   20   ( k g ) {\displaystyle 400\ \mathrm {(nm)} ,\ 20\ \mathrm {(kg)} }


式-3.3(上付き文字表記): q u {\displaystyle q^{u}}

例: 400 n m ,   20 k g {\displaystyle 400^{\mathrm {nm} },\ 20^{\mathrm {kg} }}

式-3.1式-3.2の表記は一見、括弧の有無以外に式-1のSI方式との実質的違いがないように見える。ただし、表の項目名にも式-2に相当する「Q/[u]」ではなく「Q [u]」(例えば「圧力 [Pa]」など)がそのまま使われる場合も多くSI方式とは異なっている。

またSI方式では式の計算の途中で単位記号を省くことは許されないが、日本の初中等学校の教科書では式の計算の途中で一部または全部の単位記号を省略する表記も多く、統一的ルールは存在しない。このような一貫性を欠く表記が、量の概念の理解の妨げや、計算ミスの原因になっているとの指摘がある[20][21][22]
量方程式と数値方程式

各項がひとつの量を表すような等式や不等式を量方程式とよぶ。それに対して、各項がひとつの数値を表すような等式や不等式を数値方程式とよぶ。距離 l, 速度 v, 時間 t の関係を例に、量方程式として式-4.1、式-4.2を、数値方程式として式-5.1、式-5.2を以下に示す[19]

式-4.1(量方程式) v = l / t {\displaystyle v=l/t}

式-4.2(量方程式) l = v ⋅ t {\displaystyle l=v\cdot t}


式-5.1(数値方程式) { v 1 } k m / h = 3.6 { l 1 } m / { t 1 } s {\displaystyle \left\{{\mathit {v1}}\right\}_{\mathrm {km/h} }=3.6\left\{{\mathit {l1}}\right\}_{\mathrm {m} }/\left\{{\mathit {t1}}\right\}_{\mathrm {s} }}

式-5.2(数値方程式) { l 1 } k m = 3.6 { v 1 } m / s ⋅ { t 1 } h {\displaystyle \left\{{\mathit {l1}}\right\}_{\mathrm {km} }=3.6\left\{{\mathit {v1}}\right\}_{\mathrm {m/s} }\cdot \left\{{\mathit {t1}}\right\}_{\mathrm {h} }}

式-5.1の表記では、例えば { t 1 } s {\displaystyle \left\{{\mathit {t1}}\right\}_{\mathrm {s} }} がひとつの数値に対応するひとつの項を示し、具体的計算では各項にそれぞれ数値が代入される。例えば、1 m/s の速度で 1 h 進んだ場合の距離を km で表す数値を求める場合は、式-5.2の右辺に数値を代入して次のようになる。 { l 1 } k m = 3.6 { v 1 } m / s ⋅ { t 1 } h = 3.6 × 1 × 1 = 3.6 {\displaystyle {\begin{aligned}\left\{{\mathit {l1}}\right\}_{\mathrm {km} }&=3.6\left\{{\mathit {v1}}\right\}_{\mathrm {m/s} }\cdot \left\{{\mathit {t1}}\right\}_{\mathrm {h} }\\&=3.6\times 1\times 1\\&=3.6\end{aligned}}}

式-4.2の表記で同じ計算をするときは、各項にそれぞれ量を、つまり数値と単位の積を代入する。そして通常の演算規則に従って変形すれば、次の結果が得られる。 l = v ⋅ t = ( 1   m / s ) ⋅ ( 1   h ) = ( 1 ⋅ 1 ) ⋅ ( m / s ) ( h ) = 1 ⋅ ( k m / 1000 ) ( 1 / s ) ( 3600   s ) = 1 ⋅ ( 3600 / 1000 ) ( k m ) = 3.6   k m {\displaystyle {\begin{aligned}l&=v\cdot t\\&=\mathrm {(1\ m/s)\cdot (1\ h)} \\&=\mathrm {(1\cdot 1)\cdot (m/s)(h)} \\&=\mathrm {1\cdot (km/1000)(1/s)(3600\ s)} \\&=\mathrm {1\cdot (3600/1000)(km)} \\&=\mathrm {3.6\ km} \end{aligned}}}

ここで次の注意が必要である。

例えば「 { t 1 } {\displaystyle \left\{{\mathit {t1}}\right\}} 」は独立した記号ではなく、単位情報を示す添字「s」がないと意味をなさない。ゆえに、「s」のような単位表示を省略してはならない[19]。また式-5.2の「 { t 1 } {\displaystyle \left\{{\mathit {t1}}\right\}} 」だけに具体的数値を代入するのは誤りである。

「s」など添字で示される単位記号は数値の意味を示すための付属情報を示すものであり、単位量そのものを示す変数記号ではない。

式-3のような表記と式-5.1、式-5.2のような数値方程式の各項の表記とは、見かけは似ていても意味は全く異なるので、混同してはならない。

数値方程式は単位の選択により変化するが、量方程式は単位に依存しないので、通常は量方程式の使用が望ましい[19]。言い換えれば、いくつかの量の間の関係を表すときに、量方程式ならひとつの式で十分だが、数値方程式は単位の組み合わせごとに別の式が必要である。数値方程式が使われる例には、個別的な実験式に表現する場合、計算プログラムや表計算シートの中の式、などがある[20]
物理量同士の演算
加法、和と差

ある条件や操作の下で、同じ種類の量の間に加法性が成り立つことがある。このときこれらの量の間に加法が定義できる。もちろん負の値を取らない量の場合は、小さな量からの大きな量の引算は意味をなさない。例えば次のような例がある。

質量 a の物体Aと質量 b の物体Bとが合体した物体A∪Bの質量は (a + b) となる。

電荷 a の物体Aと電荷 b の物体Bとが合体した物体A∪Bの電荷は (a + b) となる。

体積 a の液体Aと体積 b の液体Bとを混合した液体A∪Bの体積は (a + b) となる。ただし液体Aと液体Bが異なる物質のときは、一般には近似的な加法性しか成り立たない。

長さ a の棒Aと長さ b の棒Bとを一直線に結合した棒A∪Bの長さは (a + b) となる。

静止系から見て速度 a の質点Aがある。質点Aから見て速度 b の質点Bの静止系から見た速度 v は (a + b) となる。ただしこの加法性は、
ニュートン力学では成り立つが特殊相対性理論では成り立たない。ここで速度はベクトル量であることに注意。

温度 T と体積 V の下で圧力 a である気体Aと圧力 b である気体Bとを一緒にして体積 V の容器に入れ温度 T に保つと、その圧力は (a + b) となる。ただしこの加法性は両気体が理想気体の場合にのみ正確に成り立つもので、実在の気体では近似的にのみ成り立つ。

また、厳密に言えば異なる量の間に加法が成り立つこともある。例えば次のような例がある。

時刻 T から時間 t だけ経過した時刻は (T + t) である。


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