物理量
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式-1(SI方式): Q = q   u {\displaystyle Q=q\ u}

例(
圧力Pa): P = 1 P a {\displaystyle P=1\,\mathrm {Pa} }

ここで Q は量記号であり、SIでは量の種類により推奨される記号が定められている。SI方式の量方程式において、量記号・数値・単位記号はすべて通常の数学の演算規則に従う。このように数式の各項が、すなわちひとつの文字記号(複数のアルファベットから成ることもある)がひとつの量を表すような等式や不等式を量方程式とよぶ[19]

数値および単位の定義に従って、式-1はいつでも式-2に変形できる。

式-2(SI方式): Q / u = q {\displaystyle Q/u=q}

例(
圧力Pa): P / P a = 1 {\displaystyle P/\mathrm {Pa} =1}

SIの定めでは、例えば表の項目名には式-2の Q/u という表記を使い、項目には数値のみを表記するという方法が使われる。同様にグラフの軸には数値のみを付記し、軸名には式-2に従い、例えば「圧力/Pa」などと表記する。
日本の初中等学校の教科書などの表記

日本の初中等学校の教科書では、次のように、式-3.1式-3.2の括弧方式が広く使われ、式-3.3の上付添字方式も一部で使われている[20]

式-3.1(角括弧表記): q   [ u ] {\displaystyle q\ [u]}

例: 400   [ n m ] ,   20   [ k g ] {\displaystyle 400\ \mathrm {[nm]} ,\ 20\ \mathrm {[kg]} }


式-3.2(丸括弧表記): q   ( u ) {\displaystyle q\ (u)}

例: 400   ( n m ) ,   20   ( k g ) {\displaystyle 400\ \mathrm {(nm)} ,\ 20\ \mathrm {(kg)} }


式-3.3(上付き文字表記): q u {\displaystyle q^{u}}

例: 400 n m ,   20 k g {\displaystyle 400^{\mathrm {nm} },\ 20^{\mathrm {kg} }}

式-3.1式-3.2の表記は一見、括弧の有無以外に式-1のSI方式との実質的違いがないように見える。ただし、表の項目名にも式-2に相当する「Q/[u]」ではなく「Q [u]」(例えば「圧力 [Pa]」など)がそのまま使われる場合も多くSI方式とは異なっている。

またSI方式では式の計算の途中で単位記号を省くことは許されないが、日本の初中等学校の教科書では式の計算の途中で一部または全部の単位記号を省略する表記も多く、統一的ルールは存在しない。このような一貫性を欠く表記が、量の概念の理解の妨げや、計算ミスの原因になっているとの指摘がある[20][21][22]
量方程式と数値方程式

各項がひとつの量を表すような等式や不等式を量方程式とよぶ。それに対して、各項がひとつの数値を表すような等式や不等式を数値方程式とよぶ。距離 l, 速度 v, 時間 t の関係を例に、量方程式として式-4.1、式-4.2を、数値方程式として式-5.1、式-5.2を以下に示す[19]

式-4.1(量方程式) v = l / t {\displaystyle v=l/t}

式-4.2(量方程式) l = v ⋅ t {\displaystyle l=v\cdot t}


式-5.1(数値方程式) { v 1 } k m / h = 3.6 { l 1 } m / { t 1 } s {\displaystyle \left\{{\mathit {v1}}\right\}_{\mathrm {km/h} }=3.6\left\{{\mathit {l1}}\right\}_{\mathrm {m} }/\left\{{\mathit {t1}}\right\}_{\mathrm {s} }}

式-5.2(数値方程式) { l 1 } k m = 3.6 { v 1 } m / s ⋅ { t 1 } h {\displaystyle \left\{{\mathit {l1}}\right\}_{\mathrm {km} }=3.6\left\{{\mathit {v1}}\right\}_{\mathrm {m/s} }\cdot \left\{{\mathit {t1}}\right\}_{\mathrm {h} }}

式-5.1の表記では、例えば { t 1 } s {\displaystyle \left\{{\mathit {t1}}\right\}_{\mathrm {s} }} がひとつの数値に対応するひとつの項を示し、具体的計算では各項にそれぞれ数値が代入される。例えば、1 m/s の速度で 1 h 進んだ場合の距離を km で表す数値を求める場合は、式-5.2の右辺に数値を代入して次のようになる。 { l 1 } k m = 3.6 { v 1 } m / s ⋅ { t 1 } h = 3.6 × 1 × 1 = 3.6 {\displaystyle {\begin{aligned}\left\{{\mathit {l1}}\right\}_{\mathrm {km} }&=3.6\left\{{\mathit {v1}}\right\}_{\mathrm {m/s} }\cdot \left\{{\mathit {t1}}\right\}_{\mathrm {h} }\\&=3.6\times 1\times 1\\&=3.6\end{aligned}}}

式-4.2の表記で同じ計算をするときは、各項にそれぞれ量を、つまり数値と単位の積を代入する。そして通常の演算規則に従って変形すれば、次の結果が得られる。 l = v ⋅ t = ( 1   m / s ) ⋅ ( 1   h ) = ( 1 ⋅ 1 ) ⋅ ( m / s ) ( h ) = 1 ⋅ ( k m / 1000 ) ( 1 / s ) ( 3600   s ) = 1 ⋅ ( 3600 / 1000 ) ( k m ) = 3.6   k m {\displaystyle {\begin{aligned}l&=v\cdot t\\&=\mathrm {(1\ m/s)\cdot (1\ h)} \\&=\mathrm {(1\cdot 1)\cdot (m/s)(h)} \\&=\mathrm {1\cdot (km/1000)(1/s)(3600\ s)} \\&=\mathrm {1\cdot (3600/1000)(km)} \\&=\mathrm {3.6\ km} \end{aligned}}}

ここで次の注意が必要である。

例えば「 { t 1 } {\displaystyle \left\{{\mathit {t1}}\right\}} 」は独立した記号ではなく、単位情報を示す添字「s」がないと意味をなさない。ゆえに、「s」のような単位表示を省略してはならない[19]。また式-5.2の「 { t 1 } {\displaystyle \left\{{\mathit {t1}}\right\}} 」だけに具体的数値を代入するのは誤りである。

「s」など添字で示される単位記号は数値の意味を示すための付属情報を示すものであり、単位量そのものを示す変数記号ではない。

式-3のような表記と式-5.1、式-5.2のような数値方程式の各項の表記とは、見かけは似ていても意味は全く異なるので、混同してはならない。

数値方程式は単位の選択により変化するが、量方程式は単位に依存しないので、通常は量方程式の使用が望ましい[19]


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