投棄量は通常、経済性を考慮して最大着陸重量による制限を満たすためのギリギリの量とするが、胴体着陸が予想されるといったケースでは、火災発生および延焼の可能性を低くするため、着陸までに必要な量を除いた全量を投棄することもある。条件によっては着陸復行に必要な加速が出来ない可能性があるため、滑走路の状況を詳細に把握するなどより慎重な対応が求められる。
軍用機においては、増槽(外部装備式追加燃料タンク)内の燃料を増槽ごと投棄する例が見られる。これは空中戦における機動性確保や被弾時の安全性確保のためである。また、緊急着陸時には、燃料の残っている増槽は極力投棄してから着陸する。
軍用機が戦闘を考慮して増槽を積む場合には、戦闘時の増槽投棄(燃料投棄)を考慮し、捨てる可能性のある増槽から優先的に燃料を消費するように調節して飛行する。増槽に燃料が残ったまま投棄された場合、槽内の燃料は気化することなく地上に到達するため、十分に地上への影響を考慮して行われるべきとされる。多くは火災の可能性が少ない海上への投棄が行われる。 上述のように燃料タンク容量の小さい航空機などでは燃料投棄機構を持たない。小型機では、燃料満載状態でも総重量が最大着陸重量を超過しないことが多いためだが、胴体着陸等が予想され、搭載燃料を極力少なくしたい場合には、上空旋回等を行うことで燃料の消費を待つほかない。胴体着陸を決行した全日空機高知空港胴体着陸事故では、DHC8-Q400に燃料投棄機構が無かったため、燃料を消費するため空港上空を約2時間旋回した。 航空機への妨害行為として、敵機の近距離で燃料を投棄して浴びせるという手法もある[3]。 F-111は燃料投棄中にアフターバーナーを使うと、燃料に引火し機体の後ろに炎を引きずるトーチング(ダンプ&バーン)という現象が起こる。これを利用して展示飛行の演目として行っていた。
エアバスA340-311
ボーイング KC-767
C-2(右主翼端)
その他
脚注[脚注の使い方]^ “FAA investigating Delta jet fuel-dumping on schoolkids”
^ スチュワート、199頁
^ a b “黒海上空「MQ9にSu27接近、燃料浴びせた」…無人機墜落で米抗議「危険な妨害だ」”. 読売新聞オンライン (2023年3月15日). 2023年3月15日閲覧。
参考文献
『ボーイング747-400の飛ばし方』 スタンリー・スチュワート / 小西進(訳)講談社 2001年 ISBN 4-06-210620-5