熊野那智大社
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南北朝時代には、熊野の勢力を勧誘するために両朝から御師宛に護摩供料などの名目で寄進が行なわれ、貞和2年(1346年)8月18日には熊野三山検校道昭准后が、那智山の兵部卿律師御房に駿河国北安東荘内を安堵した例などがある。

続く室町時代には各地の神領荘園からの収入が減少し、那智山権現でも年貢米が駿河国の長田・安東両荘および美作国勝田荘からのみになった。このため、有力御師・先達の活動が重要さを増し、社頭の修理なども熊野山伏比丘尼、十穀聖などの勧進に頼るようになった。文明10年(1478年)に畿内への課役による棟別銭で那智山の造営を行なったが、弘治年間の十二所権現造営の際は、賦算札に貴庶を勧進結縁させている。15世紀後半以降には、山内の堂塔や社殿の修理のために勧進を行う本願所として、妙法山阿弥陀寺や浜ノ宮の補陀洛山寺をはじめ御前庵主、大禅院、滝庵主、那智阿弥、理性院といった本願所により造営・修造が担われるようになり、那智七本願または那智七穀屋などと称された。なお、穀屋はこの七本願を指すという見方もある。

天正9年(1581年)には堀内氏善が那智山への支配を強化した事に反発した社家で御師の廊ノ坊が武力決起し、逆に氏善が廊ノ坊を攻撃し、本殿などの社殿が焼失している。一方で那智山内の実報(実方)院は堀内氏に付いて那智一山は二分され、廊ノ坊側が敗れると同年6月3日に一族東学坊などの跡職は実報院に与えられたという。
近世以降

慶長6年(1601年)1月4日の『熊野那智山神領注文写』によると神領は633石余となっている。同年には紀州藩浅野幸長によって那智山は市野々村と二河村(現・那智勝浦町)に300石を与えられた。寛政10年(1798年)大晦日に参拝した高遠藩の砲術家・坂本天山は、建造物が壮麗で香炉には火が絶えず、社人・社僧の数が多い事を『紀南遊嚢』に記している。

近世末期の那智大社には数多くの社僧坊舎があったが、明治時代になり神仏習合が廃されると、熊野本宮大社熊野速玉大社では仏堂は全て廃されたが、当社では如意輪堂は有名な西国三十三所の第一番札所であったため、ひとまず破却はしなかった。

1873年(明治6年)に県社に指定されると共に那智神社と称し、さらに熊野夫須美神社と改称した。翌1874年(明治7年)には如意輪堂が青岸渡寺として当社から独立した。なお、明治初期の神仏分離の際に境内にあった行者堂が取り壊されたが、2023年(令和5年)10月に青岸渡寺の境内に再建された(熊野修験那智山行者堂)[3]

1921年大正10年)に官幣中社に昇格して熊野那智神社と改称する。

1948年昭和23年)に神社本庁別表神社に加列されている。1963年(昭和38年)に熊野那智大社に改称した。
祭神

表 熊野那智大社の社殿・祭神・本地仏社殿祭神本地仏
上五社第一殿 瀧宮大己貴命(飛瀧権現)千手観音
第二殿 證証殿家津御子大神、国常立尊阿弥陀如来
第三殿 中御前御子速玉大神薬師如来
第四殿 西御前熊野夫須美大神千手観音
第五殿 若宮天照大神十一面観音
中四社第六殿 八社殿禅児宮忍穂耳尊地蔵菩薩
聖宮瓊々杵尊龍樹菩薩
児宮彦火火出見尊如意輪観音
子守宮鵜葺草葺不合命聖観音
下四社一万宮・十万宮国狭槌尊豊斟渟尊文殊菩薩普賢菩薩
米持金剛泥土煮尊釈迦如来
飛行夜叉大戸道尊不動明王
勧請十五所面足尊釈迦如来

境内

参道の長い石段の上は、右に青岸渡寺があり、左はの大鳥居と大社の境内が続いている。拝殿の奥には鈴門・瑞垣を挟んで本殿があり、向かって右から滝宮(第一殿)、証誠殿(第二殿)、中御前(第三殿)、西御前(第四殿)、若宮(第五殿)が並んでいる。正殿の第四殿が最も大きく、若宮の左手前には八社殿(第六殿)がある。

なお、現在は山の上に社殿があるものの、前述のように元来は那智滝に社殿があり滝の神を祀ったものだと考えられる。那智の滝は「一の滝」で、その上流の滝と合わせて那智四十八滝があり、熊野修験の修行地となっている。熊野三山の他の2社(熊野本宮大社熊野速玉大社)では、明治の神仏分離令により仏堂が廃されたが、那智では如意輪堂が残され、やがて青岸渡寺として復興した。青岸渡寺は西国三十三所一番札所である。那智山から下った那智浜には補陀落渡海の拠点となった補陀洛山寺や熊野三所権現(渚王子)がある。

西御前(第四殿、重要文化財) - 祭神:熊野夫須美大神

中御前(第三殿、重要文化財) - 祭神:御子速玉大神

証誠殿(第二殿、重要文化財) - 祭神:家津御子大神、国常立尊


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