熊本地震_(2016年)
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同区間で将来的に発生する地震はマグニチュード7.0程度と推定されていたが[75]、今回の地震で動いた断層の範囲は調査委の想定よりも東西に数 kmずつ長く、東側は阿蘇山カルデラまで達していた[20]。また、この付近では前震の震源域とされる日奈久断層帯と布田川断層帯が交差しており、これらの断層帯連動して動いたことで、前震と本震を中心とした熊本県熊本地方における一連の地震活動が引き起こされた可能性が指摘されている[20][92][93]
長周期地震動

4月14日21時26分の発震からの一連の地震では、階級1以上の長周期地震動を2018年8月までに計13回公表している[94][注釈 5]。特に、最初の発震(4月14日21時26分、M6.5)では階級3、その40分後の地震(4月14日22時7分、M5.8)では階級2を記録、さらに翌15日深夜の地震(4月15日0時3分、M6.4)と、翌16日深夜に最大規模となった地震(4月16日1時25分、M7.3)では気象庁が2013年3月に「長周期地震動に関する観測情報」の公開を開始以来初めてとなる階級4を共に記録している[81][94]

ただし気象庁の事後的なデータ分析によって、2013年2月以前においても、2004年の新潟県中越地震や2011年の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)でも階級4相当の長周期地震動が発生していたことが判明している[95][96]
余震域外での地震活動の活発化

4月16日1時25分の熊本県熊本地方の地震(Mj7.3)以降、熊本県の阿蘇地方(阿蘇山の北東側)および大分県中部(別府市から由布市付近)においても地震活動が活発化した。熊本県の阿蘇地方を震源とするものでは、最大でMj5.9、最大震度6強を観測した。また、大分県中部では熊本地方のMj7.3の直後(同時刻)にM5.7前後の地震が発生して最大震度6弱を観測し、その後も地震活動が続いた[73]。大分県中部の地震活動は別府-万年山断層帯付近において発生している。

気象庁は、熊本県阿蘇地方と大分県の地震について熊本地方における一連の地震の震源域からは離れており、別の地震活動と見ている[97][98]。一連の地震は九州中部の北東から南西にかけて広がる別府‐島原地溝帯に沿って発生しており、東京大学の平田直や名古屋大学の山岡耕春などの専門家らは、熊本県阿蘇地方と大分県の地震について本震 (Mj7.3) による誘発地震である可能性を指摘している[99][100]。東北大学教授の遠田晋次は、本震の断層運動によって周辺地域での急激な応力変化が起きた(周辺地域の力のバランスが崩れた)ことにより、阿蘇地方や大分県の地震が発生したと推定している[101][102]。また、益城町は布田川断層帯と日奈久断層帯の交差する地点に位置し、2度の激震に襲われる原因ともなった[103]。遠田によれば、このような地震の誘発は科学的に特に異常な現象ではないという。なお別府‐島原地溝帯では、南北方向に引っ張る力がはたらいており、一連の地震活動で発生した地震の多くも、南北方向に張力軸を持つ横ずれ断層型であった[73]

防災科学技術研究所や気象庁の発表によると、4月16日未明の本震発生の32秒後、大分県(由布市付近)を震源とするM5.7前後の地震が発生していたとみられる[104][8]。大分県の由布市九重町で、本震の揺れが始まった後、観測点付近で発生した別の地震によるとみられる、より大きな揺れが観測されていた。本震の際に由布市では震度6弱の激しい揺れを観測したが、これは本震に誘発地震の揺れが重なった結果で、誘発地震がなければ震度4程度だったと考えられるという[105][106]
地震活動の推移

最初の地震から1か月後までには、大分県中部の地震活動は低下した[73]。熊本県熊本地方および阿蘇地方では、5月以降減衰傾向であるが6年後の2022年現在も活動が継続している[107][108]

4月14日21時以降、2年後の2018年4月13日までに一連の地震で震度1以上を観測する地震(有感地震)は4,481回発生しており、うち最大震度4以上の地震は145回発生している[109]。最初の地震から1年間の有感地震は4,297回で、新潟県中越地震の999回、鳥取県西部地震の1,196回を超え、内陸または沿岸で発生した地殻内地震としては、震度計による観測が始まった1996年4月以降で最多となっている[110]

気象庁は、複数の地震を一つの地震としてカウントしていた地震について精査を行い10月11日に発表した[111]。精査の結果、最大震度1以上の地震回数が確定し、最大震度5強の地震が1回(15日0時6分[44])、5弱の地震が3回(14日23時43分[42]、16日3時9分[50]、16日9時50分[55])増えるなど、10月10日24時現在で、有感地震は計1,944回増え、2,136回から4,089回へと修正された[111]

最大震度3以上の地震の回数[9]
(熊本県熊本地方、熊本県阿蘇地方、大分県西部、大分県中部)日最大震度小計
345弱5強6弱6強7
4月14日
(21時以降)21122—1—137
4月15日191011—1—32
4月16日1535161211215
4月17日2911—————40
4月18日234—1———28
4月19日20211———24
4月20日151—————16
4月21日112—————13
4月22日41—————5
4月23日1——————1
4月24日から
5月 7日まで459—1———55
5月 8日から
5月21日まで182—————20
5月22日から
6月 4日まで9——————9
6月 5日から
6月18日まで521————8
6月19日から
7月2日まで52—————7
累計378109115422510

地震活動の見通し

気象庁は通常、大きな規模の地震の後には余震の発生確率を発表しているが、熊本地震では「過去の経験則があてはめられない」として発表を取りやめた[112]

4月24日午後の気象庁の記者会見で地震津波監視課長・青木元は熊本県と大分県の地震活動について、「全体的には回数の増減を繰り返しながら地震が継続している」と述べ、それまでの地震で揺れが強かった地域では家屋の倒壊や土砂災害の危険性が高まっているので、引き続き強い揺れに警戒するように呼びかけた[113]。最初の地震から約1か月後の5月13日、政府の地震調査委員会は今後も最低1か月程度は熊本県熊本・阿蘇地方でM5 - 6(最大震度6弱程度)、大分県中部でM5程度(最大震度5強程度)の余震が発生する可能性があるとの評価をまとめた[73]。地震調査委員会はさらに、過去に2 - 3か月の間隔を置いて同程度の地震が発生した例があるとして、「今後も最低2か月程度は、震度6弱以上の揺れに見舞われることも否定できない」と発表した[73][114]

離れた地域などでこれまでに経験したことのない地震活動の広がり方をしていることから、活動の範囲がさらに拡大する可能性も指摘された[97]。複数の専門家が、大きな地震がまだ起きていない日奈久断層帯の南西側部分(八代市から水俣市付近)へ地震活動が広がる可能性を指摘しており、最も危惧されている[102][100][97][115][116]


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