4月14日21時26分、熊本県熊本地方[注釈 2]を震央とする震源の深さ11 km、気象庁マグニチュード (Mj) 6.5、モーメントマグニチュード (Mw) 6.2[4] の地震(前震)が発生し、同県の益城町で震度7を観測した[14]。
その28時間後の4月16日1時25分には、同じく熊本県熊本地方を震央とする震源の深さ12 km、Mj7.3、Mw7.0[4] の地震(本震)が発生し、西原村と益城町で震度7を観測した[15]。Mj7.3 は1995年に発生した兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)と同規模である。
当初、14日に発生したM6.5 の地震が本震と想定されていた。しかし16日未明に上記Mj7.3 の地震が発生したことを受けて気象庁は同日、後者(16日未明)の地震が本震で、前者(14日)の地震は前震であったと考えられるとする見解を発表している[16][17]。過去に当初の発表から訂正され、本震と余震が入れ替わる事態は海溝型地震である2011年の東北地方太平洋沖地震においても起こっているが、内陸型(活断層型)地震でマグニチュード6.5以上の地震の後にさらに大きな地震が発生するのは、地震の観測が日本において開始された1885年以降で初めての事例であり、また同じ地点で震度7が2回観測されるのは、初めてのことであった[12][18]。一方で、静岡大学客員教授の吉田明夫は14日と16日の地震のメカニズムが異なるとし、「『前震 - 本震』ではなく独立した活動とみた方がいい」と指摘している[19]。
14日の地震は日奈久断層帯の北端部の活動、16日未明の地震は布田川断層帯の活動によるもので、隣接する二つの断層帯が連動することで発生した連動型地震とみられている[19][20]。東京大学地震研究所教授の纐纈一起は、「活発な断層帯が隣り合う特別な条件下において一連の地震が発生した」と指摘している[12]。一方、名古屋大学教授の鈴木康弘は「別々の断層帯でなく、一続きの断層帯とみるべき」と主張しており、前震の割れ残りが動いたことで本震が発生したとしている[21]。
さらに16日の本震以降、熊本県熊本地方の北東側に位置する阿蘇地方から大分県西部にかけての地域と、大分県中部[注釈 2](別府-万年山断層帯周辺)地域においても地震が相次ぎ、熊本地方と合わせて3地域で活発な地震活動がみられた(詳細は後節)。熊本地方の大地震が離れた地域の地震活動を誘発した可能性(誘発地震)が考えられているが、このような例は気象庁の担当官も「(日本の)近代観測史上、聞いたことがない」としている[22]。これらの理由により、前震・本震・余震の区別が難しいとされ[19]、気象庁は「16日のものが本震とも言えるが、3種の区別をせずに見ていきたい」と説明している[12]。なお、研究者の石橋克彦は、前震と本震の大きさに関して厳密にM6.5で区切らなければ観測時代でも内陸の浅い地震にも多くの類似事例があり、歴史時代には近い時期に地震が連続した例として慶長豊後地震前後の一連の地震、寛文近江・若狭地震、善光寺地震、伊賀上野地震など多くの事例があるとしている。メディアなどは本地震の特異性を強調しすぎているが、この様な事例は決して不思議でもなく地震現象を冷静に理解しておくことが地震対策の基本であると指摘を行っている[23]。遠田晋次も地震が連続した例として、2002年のデナリ断層帯の地震をはじめとして、過去には天正地震、慶長豊後地震-慶長伏見地震の一連の地震など遅れ破壊型の連鎖地震の例を挙げている[24]。 気象庁は最初の4月14日21時26分の地震を「平成28年(2016年)熊本地震」(英語: The 2016 Kumamoto Earthquake)と命名し、4月15日に発表した[25]。4月16日には、さらに規模が大きい地震が発生し、同庁は4月17日、今後の状況を見た上で名称を再検討する意向を表明[26]。しかし4月18日に、気象庁地震津波監視課課長の青木元が、記者会見で一連の地震について「熊本地震と引き続く地震活動と捉えている」との見解を示し、名称を変更しない考えを明らかにした[27]。4月21日に気象庁は、「平成28年(2016年)熊本地震」は「4月14日21時26分以降に発生した熊本県を中心とする一連の地震活動」を指すとする説明を発表した[28][29]。 報道においては朝日、産経、毎日、読売の各全国紙の電子版で熊本県外への地震の影響に言及する記事(2016年5月1日以降)でも見出しなどで「熊本地震」という呼称を使用している例がある[30][31][32][33]。他方、大分県の地方紙である大分合同新聞の記事(4月22日付け朝刊以降)では、「熊本地震」のほか「熊本・大分地震」という呼称も使用している[34][35][36]。 熊本県又は大分県において2016年4月14日以降に発生した震度5弱以上またはMj5.0以上の地震を以下に示す。 なお、2019年1月3日に和水町で震度6弱を観測した地震について、気象庁の担当官や京都大学の梅田康弘は、熊本地震の活動領域から離れているため直接的な関連はないとの見解を示している[37][38]。詳細は「熊本地震 (2019年)」を参照。 熊本県又は大分県において2016年 4月14日以降に発生した
名称
主な地震の一覧
震度5弱以上またはMj5.0以上の地震(気象庁資料による)発震日時
[表註 1][表註 2]震源[注釈 2][表註 3]規模 ( M J M A {\displaystyle M_{JMA}} )