建築構造としての積み方にはフランドル積み (Flemish Bond[注 1])、イギリス積み (English Bond) などがある。
正面から見たときに、一つの列に長手と小口が交互に並んで見えるのがフランドル積み。一つの列は長手、その上の列は小口、その上の列は長手、と重ねてゆくのがイギリス積みである(下図・濃淡は小口と長手の区別のため便宜的につけたもの)。イギリス積みは厳密には角にあたる部分の手前にようかん (Quarter) が入るが、この部分に七五を用いて処理している場合にはオランダ積みと呼ぶこともある)[11]。
日本では、フランドル積みの方がより優美に見えるが、手間がかかり、構造的にはやや弱くなるという説が出されたことから廃れた[11]。
このほか、長手積み (Stretcher Bond) とは全ての列に長手だけが見えるように重ねる積み方で、小口積み (Header Bond) とは全ての列に小口だけが見えるように重ねる積み方である。歩道などにレンガを敷く時は、市松模様や網代模様も見られる。
表面に化粧煉瓦を置くこともあり、必ずしも躯体が煉瓦積みの構造体ではないもの(鉄筋コンクリート構造体や鉄骨ラーメン構造体など)がある。
小口積み
イギリス積み
フランドル積み
法律
日本においては、建築基準法施行令、第3章構造強度、第4節組積造 において、建築方法や壁の厚みなどが決められており、2階以上の建物の場合は壁を厚くし、各階に臥梁という鉄筋コンクリートの補強をすることが定められている[12]。
寸法・規格日本の規格レンガの大きさ比較。“さいころ”は“半ます”より5mm短くなっている国ごとの規格の違い(単位:mm)
レンガの寸法は、職人が持ちやすい大きさで慣習もしくは規格によって統一されている場合が多い。国・地域・時代によって違いがあり、たとえば現在のアメリカでは203mm(8inch) x 102mm(4inch) x 57mm(2-1/4inch)、イギリスでは215mm(8-15/32inch) x 102.5mm(4-7/16inch) x 65mm(2-15/16inch)、日本では210mm x 100mm x 60mmのものが広く使われている(日本ではJIS規格が定められるまで、様々な寸法のレンガがあった)。この寸法を標準とし、各辺を1/2、1/4、3/4などの単純な分数倍したものを組み合わせて用いる。たとえば、日本で建築用に使われているものには以下のような寸法がある(単位:mm)。
全形(210 x 100 x 60)
ようかん(210 x 50 x 60)
半ようかん(100 x 50 x 60)
半ます(100 x 100 x 60)
さいころ(100 x 100 x 60)
また、JIS(日本産業規格)には、以下のものが定められている。
普通レンガ(JIS R1250)
建築用レンガ(JIS A5213)
耐火レンガ(JIS R2204?2206、JIS R2213) … 炉材として使われる。
ヨーロッパの規格
ヨーロッパの規格は、EN 772 にまとめられている。
煉瓦の種類釉薬を塗った釉薬煉瓦を使ったイシュタル門のレプリカローマ建築で用いられる薄いことが特徴のローマレンガ。生産地・生産年が分かる刻印が押されている。
軽量煉瓦 - 粘土に骨材(膨張粘土骨材(英語版))を混ぜて比重を軽くした煉瓦
Engineering brick(英語版)
耐酸性や強度があるレンガ
耐火煉瓦(Fire brick)
製鉄高炉の内部は最高2000℃にも達し、このような高温条件に耐えるための特別な煉瓦が耐火煉瓦である。耐火煉瓦が発明される以前のたたら等の金属の精錬や加工のための熔解を行う炉は、1回の操業で壊して中身を取り出す消耗品が多く、高温や高効率を求める構造上の工夫の余地は乏しかった。耐火煉瓦の実用化により炉はより高度な設備機能を持ちうる耐久財となり、産業の飛躍をもたらした。
クリンカーレンガ(英語版) - 耐火煉瓦、レンガの表面がガラス化して黒ずんでいる。
珪石煉瓦 - 珪石を主原料とする耐火煉瓦[13]
シャモット煉瓦 - 耐火粘土を焼いた耐火煉瓦。
マグネシアレンガ (magnesia brick) - 酸化マグネシウム(MgO)を用いた高い温度に耐えられる耐火煉瓦
など
原産地由来レンガ
Cream City brick
London stock brick
Nanak Shahi bricks
Roman brick
など 石材と違い柔らかいうちに規格の決まったサイズで製造でき、無焼成レンガと違い水に強く洪水被害が多い地域でも使用できるメリットがある反面、焼成するプロセスがあるためコスト・焼成温度管理・燃料調達・二酸化炭素排出などのデメリットがある。
装飾
スリップウェア、釉薬を使った彩色も行われた。
無焼成レンガ
日干し煉瓦
「アドベ#アドベレンガ」も参照日乾煉瓦と表記されることもある日干し煉瓦は、粘土を固めた後に天日で乾燥させて造る煉瓦である。もっとも原始的な製法としては、地中の粘土層をそのまま適当な大きさに切り出し、地面に並べて乾燥させる[注 2]。よく成形して乾燥させた日干し煉瓦は、見かけ以上に耐候性に優れ、普及している地域には希な規模の集中豪雨や長雨に晒されない限り、建設資材としての機能を保持し続ける。地震に弱いという欠点もあるものの、乾燥地帯では理想的な建築材料の一つであり、歴史的にも広く使われている。中国語では、? と呼ばれる。
Compressed earth block
「en:Compressed earth block」も参照粘土などを加熱せずに圧縮することで作られたレンガ。二酸化炭素を排出しないなどのメリットがある。
焼成レンガ
煉瓦のメリット
原材料の土と水が安く入手が容易[14]。
製造技術が低くても一定の規格・基準の製品が作れる[14]。
大工や石工、建築士などの技術がなくても家が建てられる[14]。
断熱性がある[14]。
焼成煉瓦は耐久性が50-100年ある[14]。
煉瓦の問題
成形性
乾燥または火の通りの問題から、日干しと焼成のいずれも、部材の大きさと厚みが制約されるため近代以後はより成形自由度の高いコンクリートが台頭することとなった。
水の被害・害虫と耐久性
非焼成煉瓦は、雨や洪水などの水の被害でぬかるみ劣化する[15][14]。さらに、シロアリも湧くため20-30年程度しか持たない[14]。
大気汚染
インドでは、大気汚染物質の排出の主要原因としてレンガ工場が上げられている(調理30%、レンガ工場15%、車両15%、工業活動15%、野焼き5%)[14]。
森林破壊、砂漠化、二酸化炭素排出
煉瓦を焼く燃料としても、煉瓦の間を埋めるモルタルの原料となる石灰の入手にも燃料を必要とし、二酸化炭素排出、森林破壊の面でも環境破壊が危惧されている[16]。インダス文明で最大の都市遺跡モヘンジョダロが衰退した理由として焼成煉瓦を多用して砂漠化したという指摘もある[17][18]。中国、明代の皇帝が、万里の長城用レンガを焼くために森林破壊を行ったという話もある[19]。しかし科学の発展で、燃料も原材料も多様化しており、型枠として木材を用いるコンクリート造よりも木材が節約できる場合がある。コンクリートの打ち込み型枠としてブロックを利用し、そのまま取り外さずに躯体として一体化する型枠ブロック工法や圧縮してブロックにする方法も確立され、環境への配慮が行われている。
地震
組積造の宿命として耐震性に欠ける。1906年のサンフランシスコ地震、1933年のカリフォルニア州ロングビーチでの地震被害から、地震が多い地域では使用が避けられる傾向がある[20]。