無意識
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[要出典]現在では、精神分析学に対する批判も含めて、「無意識」という言葉・概念を使用することに対する消極的な傾向が存在する。[要出典]
深層心理学における無意識概念他の部分との関係性を含めた心の仕組みを説明する際には、氷山の比喩がよく用いられる

ジークムント・フロイト現象学的な内的体験(主観的体験)をうまく整合的に解釈するため、人間には意識化できない心的領域である無意識領域[注釈 2]が存在するとして精神分析学を創始した[注釈 3]

フロイトの無意識は教育などで後天的に形成される意識化できない領域であるが、一方ユングはそれに加えて、先天的に人間が普遍的に共有して保有するどうやっても意識化できない領域も存在するとした。
フロイトの精神分析学における無意識概念

ウィーン大学の生理学研究室で神経学者として神経伝達の実験・研究をしたのち、精神医学の臨床医となったジークムント・フロイト[1]は、人間の心的過程の中には自我では意識できない領域があり、それは幼少期からの周囲の道徳的規範の影響下で、その道徳的規範と相違する意識内容が抑圧されることで形成される(無意識領域へ追いやられる)ものとした[2][注釈 4]

フロイトは、無意識の存在を仮定した上で、当時の精神の病気の一部(ヒステリーなど)は、その患者の自我と相違する無意識(抑圧された内容)を原因として生じる内的体験であるとし、抑圧を解放させることで治癒すると主張した。そして、その本人の内省行為などですら取得できない無意識の内容を把握するため、催眠などを通して夢の体裁で語らせ、その夢の内容(: trauma、トラウマ)を無意識の内容として解釈することで患者の無意識内容を把握する方法(夢判断)を編み出し、精神分析学(psychoanalysis)を創始した。
ユングの分析心理学における無意識概念

幼少期に周囲からの道徳的影響という抑圧によって形成されるというフロイトの無意識は、その成り立ちから内容は幼児的傾向のものに限られる[3]。また、仮にある人間のすべての抑圧を解放してしまえば、そのすべての無意識の内容に対して、解釈するためのその人がかつて遭遇した抑圧の記憶が対応付け可能なはずである。

当初フロイトの熱心な信奉者であり、フロイトと共に無意識の世界に魅了されていたカール・グスタフ・ユングは、精神分裂症患者[注釈 5]の観察経験から、次第にフロイトの考え方に疑問を抱くようになった。

例えば、ユングはあるとき、ある精神分裂症患者の述べる内的体験の内容が、ユングが読んでいたギリシャ語で書かれた古いミトラ教の祈祷書の内容に似通っていることに気づいた[4]。フロイトの考え方に従い、因果的な解釈をすれば、その患者が以前にその本を読んでいたがなんらかの理由で無意識に押し込められていたものが発露したと解釈すべきである。しかしながら、その患者はギリシャ語を読めず、そもそもその本の出版もその妄想を述べた後であり、その患者がこのような内容を先に読んでいたとは考えられない。

遭遇しておらず知り得ない内容はフロイトの無意識にはなり得ない。そこでユングは、人間の無意


トの無意識のようなその個人の生活と関連している個人的無意識(personal unconscious)以外に、他の人間とも共通に普遍性を持つ普遍的無意識(collective unconscious;集合的無意識)が存在し、しかもそれらは層を成していると考え、その考えに基づいて分析心理学(analytical psychology)を創始した[注釈 6][注釈 7]
広義の無意識

「意識でない領域」に関しては、様々な解釈が行われている。催眠状態での意識状態や、宗教的な儀式や薬物摂取で生じる「変性意識(変成意識)」なども、通常の意識でない状態である。

また、このような広義の変成意識などの他に、サブリミナルなどの「意識でない状態・領域」が考えられてきた。「意識でない領域」の存在は確実であるとしても、主観的に把握されるそのような領域について、客観的な記述や説明が行えるかというと困難である。

フロイトやユングの理論における「無意識」は、彼らが理論的に想定した構造の存在は、結果的に実証されないものであることが判明したが、[要出典]20世紀前半に生まれた、このような「無意識の概念」は、文化的に大きな影響を与えたことも事実であり、思想芸術において、現在もなお影響を有している。

しかし、無限定に無意識を述べることは、個々人の主観的な把握になり、またトランスパーソナル心理学における無意識もそうであるが、あまりに仮説的要素の大きい無意識は、実証性がますます困難であり、疑問となる。[要出典]サブリミナルも、何を意味する概念なのか、不確定要素が多すぎる。[要出典]主観的要素や解釈があまりに大きなそのような言葉の用法や概念については、[要出典]疑問があると言うべきである。

無意識については未解明な領域である可能性が高く、心理学の分野や脳科学の分野や他の分野等で研究されている。

脳科学の分野ではデフォルト・モード・ネットワーク(DMN)と呼ばれる脳内の複数の領域で構成されるネットワークについて研究されている。ぼーっとしている状態などでも脳は活動していて、その活動の機能がデフォルト・モード・ネットワークによるものではないかと考えられている[5]。また、ぼんやり空想にふけることをマインドワンダリング(MW)といい、多くの建設的な側面があるとされる[6][7]
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 「意識を失う(to be unconscious)」との誤解を避ける為、潜在意識(: subconscious、: Unterbewusstsein)の用語が使われることも多い。


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