無人偵察機
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標的機とは、 空対空ミサイルや地対空ミサイル、対抗手段、レーダー、その他のセンサーを含む兵器や、それらシステムのテストと評価を行うときに、標的となる無人機である[47]

従来標的は、標的曳航機の機体後部から吹き流しを曳航したり、有人機にミサイルシーカー(目標捜索装置)を搭載して操縦により機動を再現していた。しかし吹き流しでは有人機の至近へ射撃するため幾度となく誤射が発生し、有人機をミサイルに見立てる場合には捕捉の訓練しか出来ないため、標的そのものを飛行させる標的機が考案された。

地上から無線操縦されるラジコン式の標的機は臨機応変に動きを変えられるが電波の届く範囲での運用となる。プログラムにより制御される標的機は運用範囲は広いが事前に設定されたコースしか飛べない。

航空機の動きを高度に再現する場合には有人機を改造した機体が利用されるが、高価であるため老朽化などで退役する機体が選ばれる[48]

帰還する必要がないため降着装置を有しない機体も多く、ミサイルのように管制機のパイロンから投下する物もある。また標的機のGAF ジンディビック初期型は10時間ほどで寿命を迎える使い捨てエンジン(アームストロング・シドレー ヴァイパー)を採用するなど、割り切った設計となっている。しかしコストダウンを徹底しても吹き流しに比べ遙かに高価であるため、現代でも標的曳航機による訓練が行われている。現代の標的曳航機は他に無人標的機の運搬や管制、チャフの散布や電波妨害など複数の訓練に対応した訓練支援機として使用されることが多い。
デコイADM-141 TALDを発射するF-14

航空機に搭載するデコイとして、母機から投下し自律的に行動する小型の無人航空機(空中発射デコイ)が存在する。これらは対空ミサイルを引きつけるため電波や赤外線を放射する。

アメリカ空軍では戦略爆撃機を迎撃する地対空ミサイル対策として、ミサイルが狙う目標を増大させることで脅威を分散させて生存性を向上させるというプランに基づき、B-52にADM-20 Quailを搭載した。ADM-20は敵の防空圏に進入する段階で母機から投下され、母機と編隊を組んで長距離を飛行、燃料が切れた時点で放棄される。エンジンは爆撃機と同等の速度を要求されたが使い捨てのため低品質の材料を使用しコストを抑えたゼネラル・エレクトリック J85が採用された。J85は基本性能が認められ高品質の材料で製造される有人機用として設計を改められ、ベストセラーとなった。

このほかにもイスラエル・ミリタリー・インダストリーズ社とブランズウィック社の(ADM-141 TALD)、レイセオン社の(ADM-160 MALD(英語版))などがある。

空中発射デコイは実際の航空機に近い飛行を再現するなど高機能化が進んでおり、対空ミサイルに対して欺瞞効果は向上したが使い捨てにしては高価となったため、エンジンを搭載しないグライダーや母機から曳航するより低コストなデコイも存在する。しかしハードポイントを占有し重量もあるため、戦闘機ではより安価で小型軽量なフレアチャフなど、使い捨てのパッシブ・デコイが主流である。

現代では訓練に時間と費用がかかるパイロットの喪失は機体の喪失以上に問題であり、特攻のような手段は忌避されているが、無人機は人的損失が無いことから囮や目標への突入などへのハードルが低く、目標への突入を前提とした徘徊型兵器も実用化されている。イラク戦争では無人機をイラク軍の防空網に侵入させ対空砲火を引きつけることで有人機への攻撃を低下させた他、2020年ナゴルノ・カラバフ紛争において、アゼルバイジャン軍は無人機化したAn-2を囮として飛行させることで、アルメニア軍の配備したS-300の位置を特定し、徘徊型兵器(ハーピー)で攻撃することで、人的損耗を防ぎながら防空網を無力化することに成功した[49]
無人偵察機RQ-4 グローバルホーク

偵察機は極端な低空や高高度を飛行するため危険性は高いが、偵察衛星より安価で柔軟に運用できることから早期に実用化された。現代では長時間を飛行し広域する大型機から1人で持ち運べる小型機まで様々な機体が運用されている。

無人機ではパイロットの安全を考慮する必要が無いため、RQ-4のように偵察に特化した機体設計が可能となった。またカメラや通信機器の小型化・高性能化により偵察機能は標準装備に近くなり、攻撃機との兼用が可能な機体も登場している。ボーイングが開発中の艦載空中給油機MQ-25」は偵察機としての運用も可能であり、空母のスペースを圧迫しないことが特徴となっている。

偵察任務には長時間の滞空が求められるために固定翼機が多いが、回転翼機も存在する。FFOSはヘリコプター型で運動性が高い代わりに速度や高度、巡航距離の性能が固定翼機に比べて低いほか、高度な制御技術を要している。ほかに回転翼の無人機としてはボーイング社がA160 ハミングバードを開発中である。無人偵察機に似たコンセプトのものに、陸上ではUGV(Unmanned Ground Vehicle:無人陸上車両)、海中ではAUV(Autonomous Underwater Vehicle:無人潜航艇)が構想されており、試験段階にあるが、広範には用いられない。

射弾観測には有人観測機が利用されていたが、大型機の映像を確認することが主流となり、射弾観測のためだけに有人機を飛行させることはなくなった。前線の部隊でも小型機により独自の観測が可能となった。

アメリカRQ-4 グローバルホーク日本遠隔操縦観測システム (FFOS) などがある。イスラエルに対立するイスラム武装組織ヒズボラ2006年に無人偵察機「ミルサード」の所有を公表している。

戦闘機のウェポンベイに搭載可能なサイズの使い捨てUAVも研究されている。

民生用のドローンは操作が容易で小型ながらカメラを搭載することも可能であるため、航空機を保有できないゲリラなどが安価な偵察手段として多用している。2016年にはISによって自爆攻撃や迫撃砲の観測指揮に使われた。ドローンから送られる画像を見ながら指揮官が指示を出し、車爆弾に乗り込んだ乗員はスマートフォンで通話し情報を得ながら敵軍に突入して自爆し、シリア軍やイラク軍に大きな損害を与えた。


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