無人偵察機
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また、試験的ながら攻撃用途での開発の先鞭が付けられ、ファイヤービーを武装化する実験に成功していた[19]
攻撃機の登場

20世紀末からは画像電子機器や通信機器、コンピュータの発達により、衛星通信により遠隔地でもリアルタイムで操縦と映像の取得、気象条件が良ければ完全自動操縦などが可能となり、対テロ戦争が始まった21世紀からはRQ-1 プレデターに代表される偵察機型から攻撃機型への展開が行われた[20]

アメリカやイスラエルと異なり、欧州各国は無人機の有効性に懐疑的な主張が多く、アメリカ軍と比較して開発が遅れた[8]。一方の中国イラク戦争でのアメリカ軍の無人機の戦果を目の当たりにして軍事における革命(RMA)として重視し[21]、無人機の開発で急速に存在感を示すことになった[22][23]

日本では、ラジオコントロール式の無人ヘリコプターである遠隔操縦観測システム(FFOS)の開発を1988年に開始し、2004年に陸上自衛隊に導入された。また2001年からは高性能の無人偵察機である無人機研究システムの開発を開始。 上空で戦闘機から分離された後、プログラミングによる自律飛行をしながら偵察を行い、自力で飛行場に着陸するというタイプだったが、正式採用はされなかった[24]。これは当時の自衛隊がドローンを不要であると考えており、幕僚監部が開発要求をしなかったためとされている[25]
新たな無人機の登場

衛星との双方向の通信によってリアルタイムの操縦が行える高性能な機体では、地上側にパイロット席に相当する移動式の操縦ステーションが設置、これと軍用無人機とが組み合わされ、全体が1つのシステムとして機能するものも現れている。アメリカ海軍P-8は当初から無人機との連携が考慮されているなど、無人機の存在を前提とした有人機も登場している。

近年では、ステルス化や艦載機型、超音速飛行が行えるものなどが開発されている[26]

無人ステルス機の研究も進められている。RQ-3 ダークスターX-47のような実験機を経て、RQ-170 センチネルが実戦に参加していると推測される。ただし、機密が多く詳細は明らかではない。

戦場で劇的な革命を起こすと予想される自立戦闘型無人機は、開発ハードルが高いため、自立型戦闘型と遠隔操作型無人機の中間の存在として、ロイヤルウィングマン無人機が各国で計画されている[27]。これは有人戦闘機と連携して任務を遂行する無人機で、MQ-28などすでに初飛行に成功した機体も開発されている[28]
問題点
パイロットの負担MQ-1Cの操縦者

大型機は衛星経由で遠隔操作が可能であるため、操縦員は地球の裏側の本国の基地内で、スクリーンを見ながら操縦していることも多い。このような無人機の運用は、操縦者が人間を殺傷したという実感を持ちにくいという意見がある[29][30]。この場合は長期間戦地に派遣されることもなく、定時で任務を終えれば、そのまま家族のいる自宅に帰るのである。「ミサイルを発射して敵を殺す戦場」と「息子のサッカーの試合を見に行く日常」を毎日行き来する、従来の軍事作戦では有り得ない生活を送ることや、敵を殺傷する瞬間をカラーテレビカメラや赤外線カメラで鮮明に見ることが無人機の操縦員に大きな精神的ストレスを与えているという意見もある[31]

国際政治学者P・W・シンガーによると、無人機のパイロットは実際にイラクに展開している兵士よりも高い割合で心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症している[32]

また、無人機の活用を推し進めるアメリカ軍では、無人機を操縦する兵士の負担が増している。有人機の操縦士に比べて無人機の操縦士は酷使されており、年間平均飛行時間は有人機では200-300時間だが、無人機では900-1,100時間にも上る。また、労働時間は平均で1日14時間、週6日勤務となっている。人手も不足しており、軍ではこれまで士官しか成れなかったパイロットに下士官も登用している[33][34]
通信の傍受

完全な自律機動ではない機体の場合、常に操縦側との通信が必要となるが、これは比較的簡単に妨害、あるいは傍受が出来る。アメリカ軍の運用するプレデターが撮影した映像が、ターリバーンによって傍受されていた例もある。ただし、多くの電波が行き交う都市部などでは、無人航空機の動作を意図的に妨害したり、無人航空機の位置を特定することは難しく、また莫大な費用がかかる[35]
無人機による事故やテロ

悪意ある使用者による盗撮や、操縦ミスによる事故、テロへの使用も懸念されている。特にテロへの利用は、アメリカ国防総省や、国土安全保障省なども警戒している。

2013年12月12日アルカイーダ系武装組織の活動が活発であったイエメンにて、アメリカ軍の無人攻撃機が結婚式へ向かう車列を誤爆。14人が死亡、24人が負傷した[36]

2014年には、フランス原子力発電所上空で、小型無人機による違法飛行が繰り返される事件が発生した。フランス国防安全保障事務局(フランス語版)は、組織的な挑発行為と見ているが、犯人の手がかりは無いとしている[37]

2015年1月には、アメリカの政府職員が、個人所有のDJI製ドローンの操作を誤り[38]ホワイトハウスの敷地内に墜落させる事故が発生、周囲一帯が封鎖される騒ぎとなった[39]。更には同年の4月にも日本の首相官邸の屋上で放射性物質を載せた同機種が墜落した状態で発見される事件も起こっている。詳しくは首相官邸無人機落下事件を参照。2017年には同機種などの商用無人機に爆弾を搭載してシリア・イラクでテロリストに使用される事例が多数報告されて問題となった[40][41][42]。また、多くの電波が行き交う都市部では、無線の混線を引き起こし、意図しない動作が起きる可能性もある[35]

2017年5月18日には中国海警局の船舶が尖閣諸島の日本領海に侵入し、無人機を飛行させたため、自衛隊F-15スクランブルし、領空侵犯と認定された[43][44]

2024年3月には横須賀基地ドローン侵入撮影事件が起こっている。
分類

分類のためのいくつかの観点について述べる。
用途による分類

UAVは、その機体の任務により以下のカテゴリーに分類され、マルチロール(多用途)の機体も多い。

用途備考
標的対空戦闘訓練において、味方の地上部隊や航空部隊から敵航空機役として標的になる。
偵察戦場で情報を収集し、味方に提供する。
戦闘攻撃能力を持ち、高い危険を伴う任務に投入される (UCAV)。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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