炭素繊維(たんそせんい、英: carbon fiber、中: ???)は、アクリル繊維またはピッチ(石油、石炭、コールタールなどの副生成物)を原料に高温で炭化して作った繊維。日本工業規格(JIS)では「有機繊維のプレカーサーを加熱炭素化処理して得られる、質量比で90%以上が炭素で構成される繊維。」と規定されている[1]。アクリル繊維を使った炭素繊維はPAN系(英: polyacrylonitrile)、ピッチを使った炭素繊維はピッチ系(英: pitch)と区分される[2]。炭素繊維を単独の材料として利用することは少なく、合成樹脂などの母材と組み合わせた複合材料として用いることが主である。炭素繊維を用いた複合材料としては炭素繊維強化プラスチック、炭素繊維強化炭素複合材料などがある。 炭素繊維の長所を一言で言うと、「軽くて強い」という点である。鉄と比較すると比重で1/4、比強度で10倍、比弾性率が7倍ある[2][3]。その他にも、耐摩耗性、耐熱性、熱伸縮性、耐酸性、電気伝導性に優れる。短所としては、製造コストの高さ[4]、加工の難しさ、リサイクルの難しさ[5]が挙げられる。また、素材自体が異方性を持ち、どういった形で積層するか、また、損傷を受けた場合の破損の判断が難しく、クリティカルな状況での使用は細心の注意が必要である。 PAN系炭素繊維の単繊維は太さは5-7μmである。この多数の単繊維で構成された繊維束をフィラメントと呼び、さらに1,000本から数万本のフィラメント
特徴
歴史
1959年 - ユニオン・カーバイドの子会社ナショナル・カーボン
1961年 - 日本の通商産業省工業技術院大阪工業試験所(現:産業技術総合研究所)の進藤昭男によりPAN系炭素繊維が発明される[7][8][注釈 1]。
1963年 - 群馬大学の大谷杉郎によりピッチ系炭素繊維が発明される[9]。
1970年代以降 - 優れた強度を持つ特性から、強化プラスチックの補強材や複合材料の素材として使われ始めるようになる。
1980年代以降 - 製造コストの低減や加工方法の進歩が見られ、ロケットや航空機などの大型輸送機器からテニスラケットや釣り竿、白杖など身近な道具、さらには剣道の竹刀や弓道の和弓など武道用具の分野にまで応用の幅を広げた。
2006年 - PAN系世界最大手の東レが、ボーイングと炭素繊維を機体の大部分に利用する世界初の旅客機(ボーイング787)開発のため、炭素繊維を2021年までの16年にわたって供給する長期大型契約を締結し、注目を集めた。
PAN系炭素繊維
トウは、そのフィラメントの本数の多寡により区分されており、24,000本以下でレギュラートウあるいはスモールトウ、40,000本以上でラージトウと呼ばれる。レギュラートウは低密度、高比強度、高比弾性率で、航空機や人工衛星の材料や、ゴルフ用シャフト、釣り竿、テニスラケットといったスポーツ・レジャー用途で多く使われている。一方のラージトウは、レギュラートウに比較的して安価なため、風車や自動車などの材料など産業用として主に利用されている。
PAN系炭素繊維の2010年の全世界生産量は、レギュラートウが55,300トン、ラージトウが14,800トンで合計70,100トンと推計されている[10][11][12]。 PAN系炭素繊維は以下の工程で連続的に製造される[2][10][13]。
PAN系炭素繊維の製造方法
PAN繊維合成:アクリロニトリルからポリアクリロニトリル繊維(PAN繊維)を重合する。
耐炎化工程:空気中で200-350℃で数時間[4]熱処理する。