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火打石などを使う打撃法も、摩擦法に比べ簡便であるために広く使用された[35]。光学法は特に技術が不用なので、晴れていれば誰でも利用できるが、専用の機材がなければ無理である。また、安定した太陽光が必要なため晴天でない場合や夜間には用いることができない。こうしたことから一般的な火おこし法ではなかったが、この方法を使って火を起こせることは一部では知られており、まれに利用もされた。また、ボルネオやビルマなど一部においては可燃物をピストンの中に強く押し付ける圧縮法で火を起こす民族も存在した。化学法と電気法は科学革命の起こった19世紀以後の産物であり、それまでの前近代社会において使用されることはなかった。こうしておこされた火種は、火口(ほくち)と呼ばれる燃えやすい物質で受けて、火を大きくさせたのち様々な用途に使用された[36]。しかし、こうした発火法はいずれも手間のかかるものであり、気軽に利用できるとは必ずしも言えなかった。

こうした点を改善し、点火を簡便に行える装置として開発されたのがマッチである。マッチは発火性のある物質をつけた短い軸木をこすり付けて火を起こすもので、系譜としては摩擦法に属する。赤リンの開発によって1852年に安全マッチが発明されると、簡単で安全な点火方法として普及し瞬く間にそれまでの点火方法を駆逐した。さらにライターなどの点火器具が次々と開発され、点火は以前と比べ非常に簡単なものとなった[37]
維持

火を維持するには、燃料酸素が必要である。火は燃料を消費して燃え続け、燃料がなくなれば消える。消えると再び点火するのはそれなりに難しいから、使い続けるためには燃料を切らしてはならない。そのためにはそれなりに工夫が必要である。

他方、地球上の普通の環境は、火の温度に比べて遙かに低い。そのため火の周囲の温度が低下すれば火は消えやすい。たき火の場合には、ある程度燃えれば底にたまった灰が良い受け皿になる。これを応用してあらかじめ灰を敷いたところで火を燃やすのが火鉢などである。ちなみに、灰で火のついたを覆うことで、火を完全に消さないままに長時間保存できるうまみもある。

逆に火の勢いが強くなると、周囲のものが熱などによって影響を受けやすい。特に人工的なものが多い中では、それらを破壊し、あるいは火事のもとともなる。そのためにも、火の周りに断熱的な構造を作るのは重要な工夫である。

燃料の供給は火の維持には欠かせない。もっとも古い形は薪をたき火に追加していくことである。後にこれは炭に置き換えられた。さらに油やガスなど液体燃料や気体燃料も利用されるようになった。液体燃料や気体燃料はそのまま点火するのは危険だから、一定量ずつ取り出して火に供給する仕組みが必要になる。そのために工業の進まない間は利用が難しかったが、現在ではむしろ主力となっている。
消火

火は高温であり、さらに火事を引き起こすこともあるから、消火を確実に行うことも重要である。火を扱う器具は消火の仕組みも備えなければならない。固体の燃料は消火したように見えても高温を維持している場合があり、再び発火する危険性があるため、事後の処理に注意を要する。

現在の主力である気体燃料や液体燃料の場合、それを供給する構造があるので、ここを操作して供給を絶つことで容易に消火ができる。また、そのあとに燃えさしを生じない点でも簡便である。
火災火災

火が人間の制御下を離れ燃え広がることを火災と呼ぶ[38]。一旦火災が起こると多くの人命や財産が失われる場合が多い。一旦火災が起こると自然に鎮火することを期待するのは難しく、初期においては消火器により、それでも足りない場合には消防の力を借り消火する事になる。開発の進んだ地域では火災に対処するため消防サービスが提供されている。消防士消防車などを使い、消火栓などの水を放水して消火する。燃焼している物質によっては化学消防車を使用する。

火災の予防には発火源となるものを除去することが第一である。また、火災を防ぐ方法についての教育も重要である。学校などの大きな建物では、火災に備えて避難訓練を実施している。ほとんどの法治国家では、放火犯罪である。

多くの国で建築における出火対策を定めている。能動的対策としてスプリンクラー設備がある。受動的対策として先進国では建築材料の耐火性能について法律で規定している。

人口の集中する都市で起こった火災は大きな被害をもたらし、64年ローマ大火1666年ロンドン大火のように歴史上広く知られているものも存在する[39]。日本では燃えやすい木造家屋が中心だったために都市の大火が多く[40]、なかでも江戸1657年明暦の大火を筆頭に、頻繁に大火に見舞われた[41]。その後都市の難燃化や防火体制の整備によって都市の火事は全世界的に減少・小規模化したが、戦争や地震などによって防火体制にほころびが生じたときには大規模な火事が発生する場合がある[42]

また都市での火事のほか、森林や草原を焼き尽くす、いわゆる山火事も存在する。山火事はどの森林でも発生するが、特にオーストラリアやカリフォルニアといった温帯の半乾燥地や、シベリアやカナダなどの冷帯の針葉樹林では頻発しており、山火事を前提とした生態系が成立している[43]。「火災」も参照
象徴としての火

灯明 ‐ 宗教などで崇められる火。無名戦士の墓の「永遠の炎」なども説明

聖火、聖なる火(英語版)

生命や「想い」の象徴

生命はしばしば火に喩えられ、また火も生命にたとえられる。が動く様や燃料を消費しつつ燃えるのが、生命体が栄養をとりつつ活動するのに類似している。反対に生命体のは、火が消えることに譬えられる。
死の象徴

一方で火災や戦火などや破壊の象徴とされる事もある。

処刑の方法としての火あぶりは見せしめ的な印象が強い。また、自殺の方法のひとつである焼身自殺はやはり衆目を引きつける事を目指し、特に訴えるものを持つ者によって行われることが多い。
比喩

恋愛感情や怒りのような高ぶる感情はしばしば火や炎にたとえられる(比喩)。「焼け木杭(ぼっくい)に火がついた」という表現は、一度焼けて炭になった木の杭はその後も簡単に火がつくことから、かつて恋愛関係にあった男女がありがちなことに再度恋愛関係になることを意味している。また「火を噴くように」怒ったりするのもこの例である。羞恥などで頬が赤くなるのを「火が出るよう」と形容する例もある。

また、危険なものとの認識から、危機に陥ることを「尻に火がついた」などという例もある。野球において投手が打ち込まれる(立て続けにヒットを打たれる)と「火だるま」や「炎上」といわれる。


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