人類の火についての理解は大きく変遷してきている。象徴的な理解は古代から現代まで力を持っている。また理知的には古代ギリシアにおいては4大元素のひとつと考えられた。西欧では18世紀頃までこうした考え方がされた。18世紀に影響力をもったフロギストン説も科学史的に重要である。
人類は古来、火を照明、調理、暖房、合図のために用いており、また近代以降は動力源としても火を利用してきた。「火の使用により初めて人類は文明を持つ余裕を持てた。」と考える人もおり、火を文明の象徴と考える人もいる。これはギリシャ神話における「プロメーテウスの火」の話を思い起こさせる。その後も火は人間の生活の中で非常に大きな地位を占め、火を起こすための燃料の確保は全ての時代において政治の基本となっている。とくに20世紀中盤以降はもっとも広く使用される燃料は石油であり、石油を産出する産油国はその生産によって莫大な利益を上げ、また石油価格の上下は世界経済に大きな影響を及ぼす。
火は火災を引き起こし、燃焼によって人間が物的損害を被ることがある。また、世界的な生態系にも影響する重要なプロセスである。火はある面では生態系を維持し、生物の成長を促す効果を持つ。また、火は水質・土壌・大気などを汚染する原因という側面もある[3]。 人類は火を様々に理解してきた。いかにして火を手に入れたのかという、火の起源神話も世界各地から知られている[4][5]。このタイプの火の起源神話として最も知られているものの一つに、ギリシア神話におけるプロメテウスの神話がある[6]。 火を信仰の対象とする宗教もある。古代世界において火は神格化され、畏敬の対象とされた[7]。例えばインド神話におけるアグニがある。また拝火教という異名を持つゾロアスター教もある。仏教もインドの拝火信仰と習合し、火葬などの文化を各地に伝えた。日本でもお盆の送り火(京都市の五山送り火が有名)をはじめ、国内各地で特徴的な火祭りが数多く存在する。なかでも小正月に行われる左義長(どんど焼き)は、日本各地にほぼまんべんなく存在する[8]。信仰の場以外でも、例えばキャンプファイヤーなど多くの行事、象徴的な場などで火は用いられている。現代でも火は象徴としての力を持ち続けている。四元素説における元素の関係図。 前6世紀、ヘラクレイトスは、流転する世界の根源に火を位置づけ[9][10]、魂を神的な火とみなした。前5世紀のエンペドクレスは、火を四元素のうちのひとつとし、プロメテウスに因んで「パイロ(古代ギリシア語: πυρ)」とした。デモクリトスは、魂と火を同一視し、原子は無数あるとしつつ、「球形のものが火であり、魂である」とした。アリストテレスの『自然学』において、火は四元素のひとつと位置づけられていた。古代ギリシャ哲学の流れを汲むイスラム科学でも火は元素の1つであると考えられた。(また中国大陸の哲学でも類似の考えかたがされていた)。18世紀ころまでのヨーロッパでも、おおむね主にアリストテレスの『自然学』における火の理解のしかたを継承したと考えてよい。ただし、他方で錬金術においては、火は物質や物質に仮託された精神の統合や純化を促す力、と考えられていた[7]。ゲオルク・エルンスト・シュタール 18世紀になると、多くの思想家は、熱や光に火の本質を求めようとした[7]。カントは、温度上昇を火の元素の移動と関連付けて理解した。 ゲオルク・エルンスト・シュタールは、火というのは可燃性の原質「フロギストン」によって起きていると考え1697年の著書『化学の基礎』でこれを表明した。この説(フロギストン説)は多くの人々に支持され最大の影響力を持っていた。同説に対抗する諸説はあったが、18世紀末にラヴォアジエが行った批判や同氏の理論の説得力などにより、燃焼を酸素との結合現象とする説を採用する人が増え主流となってゆくことになった。 火は炎心と内炎と外炎によって構成されている[11]。最も明るいのは内炎である。これは、炭素(すす)が最も多く含まれているためである。最も熱いのは、外炎である。これは、酸素と最も多く接触しているためである。また、内炎は、不完全燃焼をおこしている。 近年では「燃焼によって解放されたエネルギーのために、燃焼している物体(や気体)は発光する」と説明することがある。
火の理解史
火の構造、しくみ
燃焼詳細は「燃焼」を参照火には、燃料と酸素と熱が必要である。