火星
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検出された水の量は、スペリオル湖の水の量に相当すると推定されている[21] [22] [23]

火星は、その赤みを帯びた色合いのように、地球から肉眼で簡単に見ることができる。火星の見かけの等級は-2.94で、これは金星、月、太陽に次ぐ明るさである。地上の光学望遠鏡では、地球の大気の影響を受けるため、地球と火星が最も接近したときに、300km程度の大きさのものしか見ることができない。
物理的性質地球と火星の大きさ比較。

火星は地球型惑星に分類される、いわゆる硬い岩石の地表を持った惑星である。火星にはが無く、酸化鉄(赤さび)を大量に含む赤い地表が広がっている。半径は地球の約2分の1、質量は地球の約10分の1であり、火星の地表での重力の強さは、地球の40パーセントほどである。火星の表面積は、地球の表面積の約4分の1であるが、これは地球の陸地の面積(約1.5億平方キロメートル)とほぼ等しい。火星の自転周期は地球のそれと非常に近く、火星の1日(1火星太陽日、1sol)は、24時間39分35.244秒である。また、地球と同じように太陽に対して自転軸を傾けたまま公転しているため、火星には季節が存在する。
質量

地球や金星と比べて火星の質量は小さい[24]。太陽系の惑星移動のモデルであるグランド・タック・モデルによると、木星は火星形成前に一度火星軌道程度まで太陽に近づき、のちに現在の軌道に落ち着いたとしている[24]。その際、火星軌道付近の微惑星がはじき飛ばされ枯渇してしまったため、火星が大きく成長できなかった可能性を示唆している[24]
大気詳細は「火星の大気」を参照火星(この低軌道写真の中の地平線で見える)の薄い大気火星探査機キュリオシティゲールクレーターで撮影した火星の青い夕焼け[25]。火星の大気は低重力によって塵が舞っていてミー散乱によって昼間の空は赤く、散乱しなかった青の光は直進することで青い夕焼けとなる[26]

火星の大気は希薄で、地表での大気圧は約750Paと地球での平均値の約0.75パーセントに過ぎない。逆に大気の厚さを示すスケールハイトは約11キロに達し、およそ6キロである地球よりも高い。これらはいずれも、火星の重力が地球よりも弱いことに起因している。大気が希薄なために熱を保持する作用が弱く、表面温度は最高でも約20℃である。大気の組成は二酸化炭素が95パーセント、窒素が3パーセント、アルゴンが1.6パーセントで、ほかに酸素水蒸気などの微量成分を含む。ただし、火星の大気の上層部は太陽風の影響を受けて宇宙空間へと流出していることが、ソビエト連邦の無人火星探査機のフォボス2号によって観測されている。したがって上記の火星の大気圧や大気組成は、長い目で見ると変化している可能性、そして今後も変化していく可能性が指摘されている。

2003年に地球からの望遠鏡による観測で大気にメタンが含まれている可能性が浮上し、2004年3月のマーズ・エクスプレス探査機の調査による大気の解析でメタンの存在が確認された。現在観測されているメタンの量の平均値は体積比で約11±4 ppbである。

火星の環境下では不安定な気体であるメタンの存在は、火星にメタンのガス源が存在する(または、少なくとも最近100年以内には存在していた)という興味深い事実を示唆している。ガスの生成源としては火山活動や彗星の衝突、あるいはメタン菌のような微生物の形で生命が存在するなどの可能性が考えられているが、いずれも未確認である。地球の海では、生物によってメタンが生成される際には同時にエタンも生成される傾向がある。一方、火山活動から放出されるメタンには二酸化硫黄が付随する。メタンは火星表面のところどころに局所的に存在しているように見えることから、発生したメタンは大気中に一様に分布するよりも短時間で分解されていることがうかがえる。それゆえ、おそらく持続的に大気中に放出されているとも推測される。発生源に関する仮説でどれがもっとも有力かを推定するために、メタンと同時に放出される別の気体を検出する計画も現在進められている。

火星大気には大きく変化する面もある。冬の数か月間に極地方で夜が続くと、地表は非常に低温になり、大気全体の25パーセントもが凝固して厚さ数メートルに達する二酸化炭素の氷(ドライアイス)の層をつくる。やがて、極に再び日光が当たる季節になると二酸化炭素の氷は昇華して、極地方に吹き付ける時速400キロに達する強い風が発生する。これらの季節的活動によって大量の塵や水蒸気が運ばれ、地球と似たや大規模な巻雲が生じる。このような水の氷からなる雲の写真が2004年にオポチュニティによって撮影されている( ⇒NASA撮影画像へのリンク)。また、南極で二酸化炭素が爆発的に噴出した跡がマーズ・オデッセイによって撮影されている[27]

火星は短い時間尺度では温暖化していることを示唆する証拠も発見されている[28]。しかし21世紀初頭の火星は1970年代よりは寒冷である[29]。火星の質量は地球の11%で、地球より太陽からの距離が離れているが、気候変動、観測可能な気候パターンなど、気候面では重要な共通点を持っている[30]
温度

火星の有効温度は氷点下56℃であり、実際の温度の氷点下53℃とほとんど変わらないのは、二酸化炭素が0.006気圧であり水蒸気もほとんど存在せず温室効果が弱いからである[31]
地質詳細は「火星の地質学的歴史」を参照スピリットが抉った地表。明るいシリカ二酸化ケイ素)が剥き出しになっている。

火星の表面は主として玄武岩安山岩からなっている。いずれも地球上ではマグマが地表近くで固まって生成する岩石であり、含まれる二酸化ケイ素(SiO2)の量で区別される。火星では多くの場所が厚さ数メートルあるいはそれ以上の滑石粉のような細かい塵で覆われている。

マーズ・グローバル・サーベイヤー探査機による火星の磁場の観測から、火星の地殻が向きの反転を繰り返すバンド状に磁化されていることが分かっている。この磁化バンドは典型的には幅160キロ、長さ1,000キロにわたっている。このような磁化のパターンは地球の海底に見られるものと似ている。1999年に発表された興味深い説によると、これらのバンドは過去の火星のプレートテクトニクス作用の証拠かもしれないと考えられている。しかしそのようなプレート活動があった証拠はまだ確認されていない[32]2005年10月に発表された新たな発見は上記の説を支持するもので、地球で発見されている海底拡大によるテクトニクス活動と同様の活動が太古の火星にあったことを示している[33]。もしこれらが正しければ、これらの活動によって炭素の豊富な岩石が地表に運ばれることによって地球に近い大気が維持され、一方で磁場の存在によって火星表面が宇宙放射線から守られることになったかもしれない。またこれらとは別の理論的説明も提案されている。オポチュニティによって撮影された火星の岩石の顕微鏡写真。過去に水の作用によって作られたと考えられている。

オポチュニティによる発見の中に、メリディアニ平原で採取した岩石から小さな球形の赤鉄鉱ヘマタイト)が発見された。この球体は直径わずか数ミリしかなく、数十億年前に水の多い環境の下で堆積岩として作られたものと考えられている。ほかにも鉄ミョウバン石など、硫黄臭素を含む鉱物が発見されている。これらを含む多くの証拠から、学術誌サイエンス2004年12月9日号において50名の研究者からなる研究グループは、「火星表面のメリディアニ平原では過去に液体の水が断続的に存在し、地表の下が水で満たされていた時代が何回かあった。液体の水は生命にとって鍵となる必要条件であるため、我々は火星の歴史の中でメリディアニでは生命の存在可能な環境が何度か作られていたと推測している」と結論している。メリディアニの反対側の火星表面では、コロンビア・ヒルズにおいてスピリット針鉄鉱を発見している。これは(赤鉄鉱とは異なり)水が存在する環境で「のみ」作られる鉱物である。


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