火星
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火星にはフォボスダイモスという2つの衛星があり、小さくて不規則な形をしている。これらは、火星のトロヤ群である「5261 エウレカ」と同様に、捕獲された小惑星である可能性がある[5] [6]

火星はいくつかの無人探査機によって探査されている。1964年11月28日にNASAによって打ち上げられたマリナー4号は、1965年7月15日に火星に最接近した、火星を訪れた最初の宇宙船である。マリナー4号は、地球の約0.1%という弱い火星の放射線帯を検出し、深宇宙から他の惑星を撮影した最初の画像となった[7]ソ連の火星探査機マルス3号」は着陸船を搭載し、1971年12月にソフトランディングを果たしたが、タッチダウンの数秒後に連絡が途絶えた[8]。1976年7月20日、「バイキング1号」が火星表面への着陸に初めて成功した[9]。1997年7月4日、火星探査機「マーズ・パスファインダー」が火星に着陸し、7月5日には火星で活動した初のロボットローバー「ソジャーナー」を放出した[10]。2003年12月25日には、欧州宇宙機関(ESA)が初めて火星を訪れた探査機「マーズ・エクスプレス」が軌道上に到着した[11]。2004年1月には、スピリットオポチュニティと名付けられたNASAのマーズ・エクスプロレーション・ローバーがともに火星に着陸し、スピリットは2010年3月22日まで、オポチュニティは2018年6月10日まで活動した[12]。NASAは2012年8月6日、火星の気候と地質を調査する「マーズ・サイエンス・ラボラトリー(MSL)」ミッションの一環として、探査機「キュリオシティ」を着陸させた[13]。2014年9月24日、インド宇宙研究機関(ISRO)は、初の惑星間ミッションである探査機「マーズ・オービター・ミッション」が軌道上に到着し、火星を訪れた4番目の宇宙機関となった[14]アラブ首長国連邦は、2021年2月9日に火星探査機を火星の大気圏に投入し、火星へのミッションを成功させた5番目の宇宙機関となった[15]。また、NASAのローバー「パーサヴィアランス」が2021年2月18日に火星への着陸に成功した。

火星の過去の居住性現存する生命の可能性を評価する調査が行われている。欧州宇宙機関のロザリンド・フランクリン・ローバーのようなアストロバイオロジー・ミッションが計画されている[16] [17] [18] [19]。火星の気圧は地球の1%以下と低いため、火星の地表に液体の水は存在しない[20]。2つの極地の氷冠は、大部分が水でできているとされる。南極の氷冠に含まれる水の氷の量は、もし溶けた場合、惑星の表面を11メートルの深さまで覆うのに十分である。2016年11月、NASAユートピア平原領域で大量の地下氷を発見したことを報告した。検出された水の量は、スペリオル湖の水の量に相当すると推定されている[21] [22] [23]

火星は、その赤みを帯びた色合いのように、地球から肉眼で簡単に見ることができる。火星の見かけの等級は-2.94で、これは金星、月、太陽に次ぐ明るさである。地上の光学望遠鏡では、地球の大気の影響を受けるため、地球と火星が最も接近したときに、300km程度の大きさのものしか見ることができない。
物理的性質地球と火星の大きさ比較。

火星は地球型惑星に分類される、いわゆる硬い岩石の地表を持った惑星である。火星にはが無く、酸化鉄(赤さび)を大量に含む赤い地表が広がっている。半径は地球の約2分の1、質量は地球の約10分の1であり、火星の地表での重力の強さは、地球の40パーセントほどである。火星の表面積は、地球の表面積の約4分の1であるが、これは地球の陸地の面積(約1.5億平方キロメートル)とほぼ等しい。火星の自転周期は地球のそれと非常に近く、火星の1日(1火星太陽日、1sol)は、24時間39分35.244秒である。また、地球と同じように太陽に対して自転軸を傾けたまま公転しているため、火星には季節が存在する。
質量

地球や金星と比べて火星の質量は小さい[24]。太陽系の惑星移動のモデルであるグランド・タック・モデルによると、木星は火星形成前に一度火星軌道程度まで太陽に近づき、のちに現在の軌道に落ち着いたとしている[24]。その際、火星軌道付近の微惑星がはじき飛ばされ枯渇してしまったため、火星が大きく成長できなかった可能性を示唆している[24]
大気詳細は「火星の大気」を参照火星(この低軌道写真の中の地平線で見える)の薄い大気火星探査機キュリオシティゲールクレーターで撮影した火星の青い夕焼け[25]。火星の大気は低重力によって塵が舞っていてミー散乱によって昼間の空は赤く、散乱しなかった青の光は直進することで青い夕焼けとなる[26]

火星の大気は希薄で、地表での大気圧は約750Paと地球での平均値の約0.75パーセントに過ぎない。逆に大気の厚さを示すスケールハイトは約11キロに達し、およそ6キロである地球よりも高い。これらはいずれも、火星の重力が地球よりも弱いことに起因している。大気が希薄なために熱を保持する作用が弱く、表面温度は最高でも約20℃である。大気の組成は二酸化炭素が95パーセント、窒素が3パーセント、アルゴンが1.6パーセントで、ほかに酸素水蒸気などの微量成分を含む。ただし、火星の大気の上層部は太陽風の影響を受けて宇宙空間へと流出していることが、ソビエト連邦の無人火星探査機のフォボス2号によって観測されている。したがって上記の火星の大気圧や大気組成は、長い目で見ると変化している可能性、そして今後も変化していく可能性が指摘されている。

2003年に地球からの望遠鏡による観測で大気にメタンが含まれている可能性が浮上し、2004年3月のマーズ・エクスプレス探査機の調査による大気の解析でメタンの存在が確認された。現在観測されているメタンの量の平均値は体積比で約11±4 ppbである。

火星の環境下では不安定な気体であるメタンの存在は、火星にメタンのガス源が存在する(または、少なくとも最近100年以内には存在していた)という興味深い事実を示唆している。ガスの生成源としては火山活動や彗星の衝突、あるいはメタン菌のような微生物の形で生命が存在するなどの可能性が考えられているが、いずれも未確認である。地球の海では、生物によってメタンが生成される際には同時にエタンも生成される傾向がある。一方、火山活動から放出されるメタンには二酸化硫黄が付随する。メタンは火星表面のところどころに局所的に存在しているように見えることから、発生したメタンは大気中に一様に分布するよりも短時間で分解されていることがうかがえる。それゆえ、おそらく持続的に大気中に放出されているとも推測される。発生源に関する仮説でどれがもっとも有力かを推定するために、メタンと同時に放出される別の気体を検出する計画も現在進められている。

火星大気には大きく変化する面もある。冬の数か月間に極地方で夜が続くと、地表は非常に低温になり、大気全体の25パーセントもが凝固して厚さ数メートルに達する二酸化炭素の氷(ドライアイス)の層をつくる。やがて、極に再び日光が当たる季節になると二酸化炭素の氷は昇華して、極地方に吹き付ける時速400キロに達する強い風が発生する。これらの季節的活動によって大量の塵や水蒸気が運ばれ、地球と似たや大規模な巻雲が生じる。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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