火傷
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電撃傷

電撃傷(electrical injury)は、電流による損傷。電流への抵抗によって生じる5000℃ほどの熱で組織が破壊される。また、組織が出す水蒸気により、内部からの水蒸気爆発により損傷する。体内に電流が流れることにより火傷は非常に深部まで及ぶことが多い。

重症度は電圧、電流、伝導体への接触時間に左右される。交流電源は直流電源より危険度が高い。送配電線など6600V以上で感電した場合は高熱により瞬時炭化、又は原形をとどめず破壊される場合も多い。筋損傷、血管損傷、心停止(心室細動)のおそれがあり、また絶縁後も進行性壊死が見られる。主に深部組織が損傷するため、体表からの観察で重症度を判定するのは困難である。によって起こる事例は雷撃傷とも呼ばれる。
放射線熱傷

放射線熱傷(radiation burn)は、放射線被曝やX線の過剰照射[8]による損傷で、多くは放射線治療を行う医療現場で発生する[9]。高線量の放射線により皮膚を構成する細胞や血管が傷害され、熱傷に類似した症状を呈する。「核焼け」とも言われ、チェルノブイリ原子力発電所事故で消火活動に当たった消防士に見られた。また原爆の被爆では主にこのタイプである。

日焼けも厳密に言えば熱傷である。太陽光線に含まれる紫外線(UVA, UVB)に曝露すると、皮膚組織の破壊が起こる。日焼けといえども、照射時間・範囲のいかんによっては重態になる可能性がある。
ベータ熱傷
放射性核種が露出した皮膚や眼球に付着すると、高い運動エネルギーを持つ電子であるベータ線がその表面にエネルギーを与え、熱傷させる。このことをベータ熱傷と言う[10]

また放射線の熱傷は染色体破壊など遺伝子レベルで損傷を受けていることがしばしば見られる。
症状・診断

熱傷の重症度は、その深さと面積で決定される。
熱傷深度

皮膚は表皮と真皮からなる。熱傷の深さは皮膚のどの層まで損傷が及んでいるかで表される。

I度は、農作業、日光浴など、太陽への暴露によって起こり、最も外側の皮膚(表皮)が火傷した場合である。肌は、そのままであり、赤く、温かく、触ると痛い感じ、水疱はないか小さい。[11]

II度では、皮膚の第2層である真皮まで達しており、非常に赤く、水疱があり、非常に痛く、腫れもある。一般に7cmより小さい場合軽症とする。これより大きいか、顔、目、関節など身体機能に関する部分を含んでいる場合、外観や機能の喪失の懸念のため医学的な注意が必要となるため、救急に行く。[11]

III度では、皮膚のすべての層に達しており、皮膚は、黒や白くなり乾燥し、永久的な損傷を起こす可能性がある。大きさに関わらず、ただちに医師によって評価される。[11]

深度傷害組織外見症状治癒期間瘢痕
I度
(EB:epidermal burn)表皮・角質層まで発赤、充血痛み、熱感数日残らない
浅達性II度
(SDB:superficial dermal burn)表皮・有棘層、基底層まで水疱、発赤、腫れ、湿潤強い痛み、灼熱感、知覚鈍麻約10日間ほぼ残らない
深達性II度
(DDB:deep dermal burn)真皮・乳頭層、乳頭下層まで浅達性II度とほぼ同じだが、やや白くなる。浅達性II度とほぼ同じだが、知覚鈍麻が著しい2週以上残る可能性有
III度
(DB:deep burn)真皮全層、皮下組織、極度の場合は骨まで白や茶色などに変色、ひどく焼けただれる、乾燥、壊死、場合により炭化無痛、知覚なし1ヵ月以上ケロイドなどになり残る
足のII度の熱傷。緊満性水疱がみられる。III度の熱傷。黒い部分は壊死した皮膚である。
浅達性II度熱傷(SDB)と深達性II度熱傷(DDB)について

SDB、DDBは水疱を作る点で共通であるが瘢痕を残すか残さないかの点で予後が異なる。皮膚が薄い場合、初期の判定が困難で、受傷後数日から2週で判別するケースもある。通常、ピンセットなどで患部を圧迫し、ピンセットを離した時白くなった部位が元に戻ったらSDB、そのまま血流が滞り白かったらDDBである。また一般論としてDDBから植皮を治療法として検討するが、救命や感染対策以外の目的で手術をおこなう場合は、年齢・部位・面積・社会的背景などを考慮する。
深達性II度熱傷(DDB)とIII度熱傷(DB)について

DDBとの見極めは受傷後数日あるいは手術時に判明するケースもある。日本熱傷学会では熱傷深度をI・II・III度と分類する。日本熱傷学会でいうIII度熱傷をIII・IV・V度と細分化して表記する場合もみられる。
熱傷面積

熱傷面積にI度熱傷は含めない。熱傷面積はII・III度熱傷で計測する。単位は%BSA。(BSA:body surface area)[注釈 3]

熱傷面積を大まかに計測する方法として以下の法則がよく知られている。
手掌法
成人に適用手掌の面積[注釈 4]を全身の1%として計算する
9の法則
成人に適用頭部・左上肢・右上肢をそれぞれ9%、体幹前面・後面・左下肢・右下肢をそれぞれ18%、陰部を1%で計算する。
5の法則
乳幼児に適用乳児の場合、頭部・体幹前面・後面をそれぞれ20%、四肢をそれぞれ10%で計算する。幼児の場合、頭部を15%、左上肢・右上肢をそれぞれ10%、体幹前面を20%、体幹後面・左下肢・右下肢をそれぞれ15%で計算する。

II度以上の熱傷面積が成人の場合20%、小児の場合10%を超えると重症化するため、速やかに医師の処置を受けねばならない。

精密な熱傷面積の計測にはランド・ブロウダー図表が使用される。
気道熱傷・気道損傷

火災などで高温の気体やススを吸い込んだ場合、上気道気管に熱傷を負うことがあり、これを気道熱傷、気道損傷 (Inhalation Injury) と称する。熱傷を負った気道は徐々に浮腫を起こして狭窄し、窒息を招くため非常に危険である。気道の熱傷は外見からはわかりにくいので特に注意が必要である。気道熱傷のおそれがある場合は一見全身状態が良くてもあとから気道狭窄を起こす場合があるため挿管の必要がある。狭窄を起こした状態での挿管は困難もしくは不可能である。

気道熱傷の可能性を示す徴候として、口腔・鼻腔のススの付着が挙げられる。
熱傷重症度の基準

いずれも治療上の目安であり現実の判断は医療機関により異なる。基礎疾患群(循環器系、糖尿病、慢性腎ほか)はより重症と捉えるべきである。

BSA、BI、PBIの正確な算出には形成外科医により、期間を要することもあるが、重症熱傷につき受診時白血球数が入院死亡率と相関性があるとする報告がある。日本国外でSCORTENを採用する所もある[12]


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