潮汐
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引力は天体からの距離の2乗に反比例するので、その差分で決まる潮汐力は距離の3乗に反比例する。また、これらの力は天体の質量に比例する。地球から太陽までの距離は月までの距離の約390倍あり、太陽の質量は月の質量の約2700万倍ある。これから計算すると、太陽の引力は月の引力の約180倍であるが、太陽の潮汐力は月の潮汐力の約0.45倍にしかならず、月の潮汐力の影響が大きい。月の潮汐力を太陰潮、太陽の潮汐力を太陽潮という。火星が地球に最も近づいた時の火星による潮汐力を計算すると月の約100万分の1であり、無視することができる[10]。他の惑星についても同様である。
潮汐に関する研究の歴史

大プリニウスの『博物誌』には、潮汐と月の関係について述べられている[11]

天体の引力による潮汐の理論を考案したのはニュートンラプラスである。ニュートンは起潮力に対する海面の静力学的な平衡状態を扱っていたのに対し、ラプラスは海水の動力学的な運動を方程式化した[12][13]
遠心力地球と月は、地球内部にある共通重心のまわりを公転している。地球と月の共通重心の運動。地球の極の方から見ている。地球上のどの点でも回転速度が一定であることに注意。

潮汐の原因を説明するのに、地球の公転運動が場所によって異なるという説明がされることがあるが、これは正しくない。

月と地球とは、両者の重心を結ぶ直線上の一点を中心として互いに回転運動をしている。この共通重心は、地球の重心から約4,600kmの位置、すなわち地球の内部にある。

自転を考えない場合、共通重心まわりの運動を地球の極の方から見た右図で考えると、公転運動の際に図中の地球の下側の部分は常に下側の位置を変えず、他の部分も向きは変わらない。この運動による回転速度は地球上のどの点でも等しくなっている。よって、この運動によって生じる遠心力も、地球上のどこでも同じ大きさとなっている。公転に連動して自転する座標系で考えると、月の直下では遠心力が弱く、反対側では遠心力が強くなり、地球から外向きの力が生まれているように見える。しかしこの力は常に外向きである。つまり、自転による遠心力そのものにすぎない。自転による遠心力も、見かけの重力場の差分に起因する広い意味での潮汐力だとも言えるが、時刻によらず常に外向きである。そこに自転による地表面の通過があるので、地上の各地で干満が通過していくことになり、潮汐は起こる。
実際の潮汐

実際の満潮・干潮は、海水の慣性や、海流、水温や塩分濃度、気圧、湾岸の形状など種々の要因によって、天文学的に導かれる時刻とずれが生じる。

実際の潮位の変化は、周期と振幅が異なるさまざまな波を重ね合わせたフーリエ級数で表すことができ、個々の波を分潮と呼ぶ[14]。潮位予報を行う機関では数十の分潮を用いて予想潮位を計算している[15]
海岸

垂直・水平それぞれの方向に、干満の差が大きい海岸、小さい海岸がある。

水平方向の差の大きさは海岸の傾斜により、当然ながら同じ水位差であれば傾斜が緩い方が、つまり遠浅な方がその差は大きい。砂浜や、特に干潟のような傾斜のなだらかな場所では、水平方向にして数百 - 数千メートルにも及び海岸線が変化することがあり、そこに豊かな生態系がはぐくまれている。ただし、そのような場所で潮干狩りなどすると、潮が満ちてきたときにひどく長い距離を急いで逃げねばならない場合がある。

垂直方向の差は、つまり潮位差であるが、一般に内湾的な海域では潮位差が小さい。これは水位変化のためには海水が大きく移動しなければならないが、内湾的傾向が強ければ海水がほとんど閉じこめられてしまっていて、水位変化の起きようがないためである。たとえば日本海や地中海は潮位差が小さいことが知られている。この場合、内湾の奥のほうが深い場合と浅い場合ではその潮位差の変化量が著しく異なる。浅い場合は、外海の干満に引きずられる形で内湾の水が出入りすることになり、外海よりも潮位差が大きくなることもある。有明海瀬戸内海アゾフ海などはその典型である。
河口域

河口域では潮の満ち干によって干潮時には淡水が最河口まで流れくだり、満潮時には海水が上流方向に侵入する。そのため海水と淡水が混じる区域があり、これを汽水域という。実際には海水は淡水より比重がやや大きいので、流れ下る淡水の下に海水が流れ込むなど複雑な状況もある。

非常に大きい河口の場合、潮汐による海水面の変化により流れ込む水の量が大きくなり、大きな波を形成することがある。これを海嘯といい、アマゾン川ポロロッカや中国の銭塘江のものが有名である。
生物との関係

海と陸とでは、棲息する生物相が全く異なる。海岸線では干潮時には海水から顔を出し、満潮時には海水中に没する地域があり、これを潮間帯という。潮間帯は生物にとっては海の区域でありながら、一時的に陸になる区域であり、独特の生物相を持つ。潮間帯の直下、低潮線の下を潮下帯、潮間帯のすぐ上、高潮線の上を潮上帯と言う。

潮の満ち引きは、当然海に住む生き物達にも大きな影響を与える。総じて彼らは大潮の時に産卵することが知られている。また、大潮になると魚類の活性が上がるとも言われており、アメリカで釣り大会を行う場合は大潮の週末と決まっている。日本の釣具店にはほぼ必ず潮見表が置いてあり、潮見表を元に釣りに出かける釣り客も多い。
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地震との関係

潮汐は地震の発生と有意な関係があるとされる[16][17]。潮汐力が地球内部の岩盤にも影響を与え上下伸縮を引き起こしているためで、特に断層の方向と地球潮汐の方向が一致し力が最大となったときに、地殻変動ひずみの限界と重なり最後の一押しとなって地震を誘発するものと考えられている[18]東京大学の研究チームも1万件以上の地震データから、潮汐力の強い時期に巨大地震の発生確率が上昇するという研究結果を英科学誌ネイチャー ジオサイエンス」に発表しており、同研究では小さな岩石の破壊が潮汐力によって大規模な破壊へと発展していく可能性が示唆されている[19][20]。潮汐が地震の引き金になったとみられるケースは世界における地震全体の5%程と推定されている[21]
東北地方太平洋沖地震

2011年に発生した東北地方太平洋沖地震誘発地震とみられている長野県北部地震では、潮汐に関係するとみられる地震が最大規模となった M 6.7 の地震を含む全体の約50%という非常に高い相関で確認された[21]

また、本震発生以降に1976年から2011年までの期間に東北地方太平洋沖地震の震源域で発生した Mw 5 以上の地震と潮汐力の関係をあらためて調査したところ、1976年からの約25年間は相関関係がなかった。しかし、2000年頃より次第に相関関係が現れ、その後、本震が発生した2011年3月11日までは明瞭な傾向が出現し、断層にかかる力が最大になる時間帯に地震が発生していた。特に、前震とされる3月9日11時45分に発生した地震の震源と3月11日の本震破壊開始点の間の領域付近には強い相関が現れていたが、3月11日以降は潮汐力との関係は見られなくなった[18]
文化での扱い

沖縄県や鹿児島県、
伊豆諸島漁師のあいだでは、「八・六計算」と呼ばれる計算法で潮汐の日時を導き出している[22]。旧暦15日までは日の数字に8をかけ、出てきた数字の2桁目が干潮の時となる。次に1桁目の数字に6をかけ、出てきた数字が分に相当する。旧暦16日以後は、先に日付から15を引いて同様に計算する。これは、干潮時刻が一日ごとに概ね48分ずつ遅れることを利用している。

衛星ラジオ局セント・ギガは、放送開始当初、潮汐と月の運行を組み合わせた「タイド・テーブル」に基づく音楽放送を行っていた。

実験水槽における潮汐

工学や生物学(甲殻類など)などでは実験に潮の満ち干や水位変化を作り出すことができる実験水槽を用いる[23]

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脚注[脚注の使い方]
注釈^ なお、天体表面の液体だけでなく、気体(大気大気潮汐)にも影響は出ている。


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