漫画
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また、同年にはベルギーの新聞『ル・ヴァンティエーム・シェクル(20世紀新聞)』付録の白黒漫画で、タンタンの冒険が初登場した[14]。タンタンの物語は1929年に『タンタンソビエトへ』の一冊にまとめられ、ユーロピアン・コミックスのコミック・アルバムの形式で出版された。

そのほかにも、1929年には新聞漫画を再版した『ザ・ファニーズ』が出版されている。この漫画はアメリカ合衆国においてニューススタンドで発売された、最初の4色印刷の漫画として評価されており、タブロイド判のサイズで印刷されていた。この判型は当時の新聞の日曜版と混同されやすく、売り上げを伸ばせなかったため、36号で廃刊となった。

現在のアメリカン・コミックス形式で出版された最初の漫画は、日曜版のタブロイド判サイズを半分にした判型による『ファニーズ・オンパレード』であった。ニューヨークのイースタン・カラー・プリンティング社で働いていたハリー・L・ウィルデンバーグとマックス・C・ゲインズにより、広告用の景品として1933年に出版されたこの雑誌の成功は、同種の景品雑誌出版の呼び水となった。やがてゲインズは余った雑誌に10セントの価格を表示したカバーをかけて、ニューススタンドで販売することを思いつき、それらをすべて売り切った。これにより、イースタン社はニューススタンドで販売される漫画雑誌『フェイマス・ファニーズ』を1934年5月に創刊した。

1935年までの漫画は、主に当時のパルプ雑誌に影響された独自の素材を利用していたが、このころから漫画外の素材が漫画に用いられるようになった。ウィル・アイズナーは漫画外の素材を漫画に持ち込んだ漫画家であり、漫画外の素材を漫画に適用すべく改良し、漫画の文法を発明したことにより高く評価されている。アイズナーにより案出された漫画の手法としては、場面を突然に切り替える「ジャンプ・カット」などがある。

アメリカでは1938年に、『アクション・コミックス』第1号でスーパーマンが初登場し、アメリカン・コミックスの黄金時代と呼ばれる期間が到来した[15]。また同年にベルギーでは、バンド・デシネの特徴である週刊形式の漫画雑誌『スピルー』が創刊された[14]。しかし第二次世界大戦後に俗悪コミックへの反対運動が激化し、これを受けて1954年にコミックス倫理規定委員会が設立されて「トータルデザスター(総破壊)」と呼ばれる厳しい規制が導入された結果、アメリカの漫画産業は衰退期に入り、一時スーパーヒーローのジャンル以外の漫画はほとんど発行されなくなった[16]。具体的には、警察は絶対悪く描かない、教会へ行かないようなヒーローはダメ、教師を馬鹿にするようなヒーローもダメ、離婚や離婚家庭を肯定的に描かない、セックスもバイオレンスも、そういう感覚を刺激する表現は禁止というものである[17]

アメリカでは、第二次世界大戦期以降、高等教育を受けておらず社会経験が少ない新兵向けの副読本として、任務中の注意点や生活規範などを解説した漫画が軍主導で多数企画され、ウィル・アイズナーなどのコミック作家が請け負っていた(英語版記事「PS」参照)[注 2]

日本では、第二次世界大戦後の漫画の表現技法がのちの漫画家たちに大きな影響を与え、現在まで日本の漫画の表現技法として定着している[18]。日本の漫画の歴史については、「日本の漫画」「日本の漫画の歴史」項を参照。
各国の漫画

世界各国で漫画は発行されているが、なかでも日本アメリカフランスの3か国は独自のアートスタイルと市場を持つ[19]

アメリカン・コミックスは、新聞漫画であるコミック・ストリップと、大手出版社からコミック・ブック形式で発行されるメインストリーム・コミック、そして独立系出版社のオルタナティヴ・コミックとに分かれる[20]スーパーヒーローもののコミックに代表され[21]、アメリカ国内でもその認識が強い[22]。コミック・ブックはカラーが中心である[23]

フランスの漫画はバンド・デシネと総称され、これにはフランスのみならず、ベルギー漫画などフランス語圏諸国のものが含まれる[24]。フランスでは「第9の芸術」と呼ばれることもあり、エンターテイメント性の高いものが中心ではあるが、技巧や芸術性の高いものも存在する[25]

世界的にはカラーが主流であるが、日本の漫画はおもにモノクロで描かれ[26]、独特のデフォルメされた絵柄や表現技法、ストーリーの長さ、そして老若男女すべてを対象とする読者層の広さと、ジャンルの多様性に特徴があるとされる[27]

そのほかの国家の漫画については、中国の漫画香港の漫画、台湾の漫画(中国語版)、韓国の漫画フィリピンの漫画マレーシアの漫画インドの漫画トルコの漫画の各記事を参照のこと。
産業

産業としての漫画の市場規模は、日本が突出して大きく、他国の数倍以上の規模を持っている。アメコミ・マンガ・バンドデシネなどすべての漫画を含めた2008年度の漫画の売り上げは、日本が4,483億円、アメリカが281億円、フランスが246億円と推定されており、そのほかの国はさらに小さなものとなっている[20]。その後は日本が伸び悩む一方で世界的には市場は伸長し、2017年度には日本39億ドル、アメリカ10億ドル、中国8億ドルの順となっている[28]。日本では出版物の3分の1を漫画が占めるほど大きな地位を占めているが、1995年以降漫画の売り上げは長期低落傾向にある[29]


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