トリオ漫才(役割が固定された場合)においては、ボケ2人・ツッコミ1人の比率が主流である。ネタの役割分担によって、フリ(後述)にあたる小さいボケを「小ボケ」、オチに至る大きいボケをする者を「大ボケ」、と区別することもある。 上記の役割と兼ねて、「筋フリ[7]」または「フリ」という、ネタの構成を進行・展開・転換する役割を、メンバーのいずれかが担わなければならない。『大辞泉』の「ツッコミ」の項は「漫才で、ぼけに対して、主に話の筋を進める役」としており、ツッコミがフリを担う、と定義しているが、ボケがフリを担当するコンビも少なくない。 ボケ・ツッコミが固定したコンビを仮定した場合、ツッコミが進行するコンビ、ボケが進行するコンビ、ボケ・ツッコミ双方が進行するコンビの3種が考えうる。 前田勇 現代の漫才を大きく二つに分けた場合、「しゃべくり漫才」と「コント漫才」に分かれる。 しゃべくり漫才とは、日常の雑談や時事を題材に掛け合いのみで笑わせる漫才を指す。創始者は、横山エンタツ・花菱アチャコ。1980年代の漫才ブーム以降、上述の音曲漫才や歌謡漫才は急速に廃れ、しゃべくり漫才が漫才の王道・正統派とされるようになった。しゃべくり漫才の定義について、ナイツの塙宣之は「キッチリ定義することは難しいが、あえて言うならば、しゃべくり漫才とは日常会話だと思います」と語っている[19]。 コント漫才とは、「お前コンビニの店員やって、俺は客やるから」とコントに入っていくパターンの漫才を指す。衣装や小道具、効果音を使わずに、立位置もそのままで設定した役になりきるという点でコントとは異なる。設定を振ってコントに切り替えることを、符牒でコントインと呼ぶ。センターマイクから離れることも多いため、しゃべくり漫才と比べて邪道とされることもある[注 2]。 近年では「俺コンビニ店員するから、お前はそこで見てて」というように、ボケが独自の世界観に没入し、ツッコミはその邪魔にならないように外から指摘するコント漫才も増えている。
フリ
漫才のスタイル
音曲漫才
俗曲漫才俗曲(民謡、俗謡)の類を主とするもの。三人奴などが該当する[9]。
語りもの漫才浄瑠璃、浪曲、琵琶語りの類を主とするもの。昭和中期における浪曲漫才の諸グループ(玉川カルテット、宮川左近ショーなど)が該当する[10]。
歌謡漫才流行歌・歌謡曲の類を主とするもの。かしまし娘、暁伸・ミスハワイ、タイヘイトリオ、フラワーショウなどや、音楽ショウと総称された諸グループ(あきれたぼういず、小島宏之とダイナブラザーズ、あひる艦隊、横山ホットブラザーズなど)が該当する[11]。
曲弾き漫才楽器の曲芸的演奏を主とするもの。市川福治・かな江、桜津多子・桜山梅夫、都上英二・東喜美江などが該当する[12]。
踊り漫才本格的舞踊を滑稽にくずして見せるもの。砂川捨丸・中村春代の捨丸による「舞い込み」や、松葉家奴・喜久奴の奴による「魚釣り」などが該当する[13]。
しぐさ漫才
寸劇漫才舞台劇、劇映画などの断片を模写するもの。砂川捨丸・中村春代による『金色夜叉』、チャンバラトリオによる一連のパロディなどが該当する[14]。
身振り漫才身振り、表情を主とするもの。吉田茂・東みつ子の茂による「かぼちゃ」などが該当する[15]。
仮装漫才仮装を見せるもの。コントのように役柄を演じるためではなく、仮装それ自体で笑いを誘うことを旨とする。松葉家奴・喜久奴の奴が和服の裏地に「火の用心」などの言葉を染め抜いておき、タイミングよく観客に示すギャグなどが該当[16]。
しゃべくり漫才
掛け合い漫才掛け合いでしゃべるもの[17]。並木一路・内海突破、夢路いとし・喜味こいしが該当。
ぼやき漫才1人がしゃべり続け、相方は相槌を打つだけのもの。本質的には漫談である。都家文雄によって創始され、弟子の人生幸朗・生恵幸子や東文章・こま代に受け継がれた。このほか、西川のりお・上方よしおなどが該当する[18]。
しゃべくり漫才・コント漫才
歴史
萬歳から万才へ正月の祝賀会で萬歳を披露する2人組を描いた19世紀の日本画(作者不明)。