ところが、清代中期以降状況が大きく変化する。領域内の平穏と安定した経済、トウモロコシやサツマイモ等の新たな農業作物によって増え続けていた人口だったが(18世紀前半には推定2億人だった人口はわずか100年後の19世紀前半にはその2倍、推定4億人を突破したとされる)、イギリスなどの政策転換による銀の流入の減少(阿片戦争参照)、18世紀後半以降の全地球単位の寒冷化(異説もある)に伴う生産力の低下、さらに、太平天国の乱などの清末の一連の反乱により支えきれなくなった。ついに、19世紀後半には人口爆発とも呼べる事態が発生、大量の漢民族の周辺地域への拡散移動が始まった。
河北・山東など華北の人口は内モンゴル・満州へ移動し、華南の人口は東南アジア各地を中心に、一部は日本・朝鮮、さらにはアメリカ・オーストラリアなどに移住した。このうち、満州(現在の中国東北部)は中国内地との隣接区域であり、圧倒的な漢民族の人口圧によって事実上内地化した。例外的に、地理的に中国本土と最も地理的・文化的に近接しているはずの韓国のチャイナタウンについては、20世紀半ばから後半期にかけて衰退し、ついには消滅してしまった。理由として、朴正煕時代などの強い民族主義・反共主義政策などが挙げられるが、極めて特異な例として注目される。 東南アジアなどでは華僑・華人となり、自らの居住区として各地にチャイナタウンを作り上げている。シンガポールでは華人が最多数派である。マレーシア・インドネシアでは、かつて経済の主導権を握っており、そのため現地で多数派を占めるマレー人など在来民族との摩擦があった。 タイの華人はタイ人に同化する傾向が強く、また、タイ人の中にも中国由来の文化が取り入れられ、経済的にも政治的にも完全にタイ人と一体化している。政府の要職を占める華人も少なくない。 フィリピンでも華人はフィリピン人に同化する傾向にある。明・清時代からの古い華人が多く、現地化や混血が進んでいる。現在でも中国語を話し、中国の習慣を残している者は60万人から100万人程度と推定される。コラソン・アキノやロドリゴ・ドゥテルテなど、大統領経験者にも華人の血が流れている。 ミャンマー(ビルマ)では、おもに国共内戦期以降のKMT残党の逃避行に始まる雲南省からの華人の流入が今でも続いている一方で、前近代から移住してきた土着の華人のグループもある。彼らはミャンマー中央政府から先住少数民族と認められ、「コーカン族」と称されている。コーカン族の主な居住地はシャン州北部の雲南省との国境地帯であり、コーカン地区と称される。 異民族による支配が長かったため、中国北部と中国南部の漢民族の遺伝子には非常に大きい違いが見られる。本土日本人 (Mainland Japanese)、琉球人 (Ryukyuan)、アイヌ人 (Ainu)と他のアジア民族集団の系統樹[14][15]。 漢民族のY染色体ハプログループはO2系統が圧倒的多数を占め、最大65.7%[16]観察される。その他のY染色体ハプログループに関しては地域差が激しいが、オーストロネシア語族との関連が想定されるO1a系統も一部(特に上海を中心とする華東地方)で多く観察される(華東地方出身者167人中40人、即ち24%のサンプルに観察された例がある[17])。両広地方(広東省及び広西チワン族自治区)の一部ではO1b1系統(オーストロアジア語族と関連)も約30%観察されている。[18][19] C2系統は中国東北部(旧満州)の漢族では約17% [15% ~ 23%]、華北の漢族では約14% [11% ~ 18%]、華南の漢族では約7% [0% ~ 22%]観察された例がある[20]。 最近の研究から、東アジア人(モンゴロイド)を特徴付ける遺伝子があることがわかった[21][22]。
東南アジアの華人
遺伝子
脚注[脚注の使い方]
注釈
出典^ ⇒Travel China Guide - Han Chinese
^ ⇒Windows on Asia - Chinese Religions
^ ⇒China - Travel China Guide - Religions and Beliefs
^ ⇒Every Culture - Han people: Religion and Expressive Culture
^ ⇒Every Culture - Han Chinese in the People's Republic of China
^ ウィクショナリーには、炎黄子?
^ 中国の近代化と社会学史、張琢 著
^ ⇒「華人社会について」シンガポール日本文化協会 会長 顔 尚強[リンク切れ]
^ 中国の人口移動と民工by 厳善平
^ 『中国民族史』 1930年商務印書館出版
^ 中央日報(日本語WEB版)『 ⇒中国に純粋血統の‘漢族’は存在しない』2007年2月15日
^ 世界史とつなげて学ぶ 中国全史 岡本 隆司
^ 東アジア 民族の興亡―漢民族と異民族の4千年、大林 太良 (著)
^ Jinam, Timothy; Nishida, Nao; Hirai, Momoki; Kawamura, Shoji; Oota, Hiroki; Umetsu, Kazuo; Kimura, Ryosuke; Ohashi, Jun et al. (2012-12). “The history of human populations in the Japanese Archipelago inferred from genome-wide SNP data with a special reference to the Ainu and the Ryukyuan populations”