漢字
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しかし現代中国語の単語は、大部分が2つ以上の漢字を組み合わせたものになっている[16]

本来、1字が一義を表すことだけを重視して表意文字としてきたのだが、これは古代中国語の1音節が1つの意味を表す孤立語的な言語構造に由来するのであって、正確には音と意味両者を表記する表語文字である。つまり、1字が1語を表しているのである。このような漢字の特徴から伝統的な文字学では漢字を形・音・義の3要素によって分析してきた。

しかし、1つの音の持つ語が派生義を生んで、1字が複数の(まったく正反対の、あるいは無関係で一方の字義からは想像することはできないような)字義を持っていたり、読みが変わって、複数の字音を持っていたりする場合もある。また、外来語を表記する場合など、単純に音を表すために作られた漢字もあり、字義を持たない場合もある。字義の有無を問わず、1音節を表す文字という点において音節文字である日本語の仮名とは近い関係にある。
漢字を輸入した国と、現在の使用状況「漢字廃止論」、「漢字復活論」、および「日本における漢字」も参照漢字文化圏における主な言語での「漢字文化圏」「東アジア文化圏」という概念の言い方と書き方

日本朝鮮琉球王国ベトナムは、古代中国から漢字を輸入して使用した。また、シンガポールマレーシアのように、中国から移住した人たちが多く住み、漢字を使用している地域がある。これらの漢字を使用する・していた周辺諸国を包括して漢字文化圏と呼ぶ。

日本では漢委奴国王印古墳時代稲荷台1号墳に埋蔵されていた鉄剣の銘文が、日本における初期の漢字事例とされており[17][18][19]、また近年の研究で、朝鮮半島を経由して伝来した文字・使用方法が存在する可能性が指摘されている[20][21][18]

現在、漢字は、中国(中華人民共和国)・台湾(中華民国)・日本(日本国)で日常的に、韓国(大韓民国)・シンガポールなどで限定的で用いられている。しかし、20世紀後半の各国政府の政策で漢字を簡略化したり使用の制限などを行ったりしたため、現在では、これらの国で完全に文字体系を共有しているわけではない。

また、北朝鮮ベトナムのように、漢字使用を公式にやめた国もある。しかし、漢字は使わなくなっても漢字とともに流入した語彙が各言語の語種として大きな割合を占めている。

漢字音は地域・時代によって変化する。しかしながら、淵源となる中古音から各地域の音韻変化に従って規則的に変化しているため、類推可能な共通性を持っている。また地域により発音が違う場合でも同じ字で表すことができるため、国境を越えて漢字を使った筆談でコミュニケーションを取ることもある。字形の複雑さから、手書きする場合には、書き間違いや省略などによって字体は少なからず変化してきた。そうして変化した字体のうち、ある程度の範囲に定着した俗字が各国において正字に選ばれ、字形にわずかな差異が見られる場合がある。また地域音や地域特有の字義を表すための国字方言字異体字も多く作られてきた。
漢字の数

中国語音節の数は、現代普通話の場合、声調の組み合わせを考えても1,600種未満であり、音節文字であれば、これだけの文字種があれば足りる計算になる。しかし、同音異義の語を、部首をつけるなどの手法を用いて区別する漢字は、5,000種前後が同時代的に使用されてきた。これに、時代の変遷による字体の変化、同じ字音、字義を表す異体字、地域変種などを加えて整理すると、簡単に1万を越す漢字が集まることになり、歴代字書は時代が下るにつれて多くの漢字を集め、1994年の『中華字海』に至っては85,568字を収録している。ただし、ほとんどの文字は歴史的な文書の中でしか見られない使用頻度の低いものである。研究によると、中国で機能的非識字状態にならないようにするには、3,000字から4,000字の漢字を知っていれば充分という[22]

一般に非文明化部族の言語語彙が多すぎて整理されていない傾向にあり、漢字は発生当時の時代の非合理性をそのまま引き継いでしまったという批判がある[23]。このように近代以降、異体字を整理したり使用頻度の少ない漢字の利用を制限しようとする動きは何度もあったが、現在でもその数は増え続けている[注釈 1]。常に新しい字が創作されるため、過去から現在に至る過程で、どれだけの数の漢字が作られたかは明確ではない。たとえば、既存の中で考慮される漢字がない何かしらの意図を表現するために、新しい種類が作られてきた。漢字の理論とは万人に開かれたもので、適当と思われれば新たな漢字をつくる事が誰にでもできる。しかしながら、このように発明された漢字は、公的に認められた一覧からはしばしば除かれて行く[24]。以下に、主要な歴史的中国語辞典(字書)が採録した漢字数を表す。

中国語辞典に記された漢字の数[25][26]年辞書名漢字数
100説文解字9,353
543玉篇12,158
601切韻16,917
997龍龕手鑑26,430
1011広韻26,194
1039集韻53,525
1208五音篇海54,595
1615字彙33,179
1675正字通33,440
1716康熙字典47,035
1916中華大字典(英語版)48,000
1989漢語大字典(第一版)54,678
1994中華字海85,568
2001異體字字典(正式一版)105,982
2010漢語大字典(第二版)60,370
2014漢字海102,447
2024異體字字典(正式七版)106,303

コンピュータで処理するための文字集合では、Unicode 13.0が92,856字以上を[注釈 2]、日本の企業のソフトウェア今昔文字鏡』が(漢字以外の文字も含むが)約16万字を[28]収録するなど、さらに多くの漢字を集めているものもある。一方、中華民国台湾)行政院教育部の『異體字字典(正式七版)』によれば、漢字の正字数(異体字を含まない)は29,920字[29]であるが、こちらは国字を含んでいない(「付録」としてだけ収録してある[30])。
歴史

伝承によると、中国における文字の発祥は、黄帝の代に倉頡が砂浜を歩いた鳥の足跡を見て、足跡から鳥の種類が分かるように概念も同じようにして表現できることに気づいて作った文字とされる。また『易経』には聖人が漢字を作ったと記されている。

新石器時代の出土土器の表面に文字状の彫り込みが見られる。しかし記号・デザインの一種とも考えられており、中期まで続く。これらは漢字と系統を同じくするかは定かではなく、漢字の誕生と言えるかは不明である。

考古学的に現存する最古の漢字は、後期において占いの一種である卜(ぼく)の結果を書き込むために使用された文字である。これを現在甲骨文字(亀甲獣骨文)と呼ぶ。 漢字としての完成度が高いことが研究により明らかにされている。

当時の卜はの甲羅やの肩胛骨などの裏側に小さな窪みを穿ち、火に炙って熱した金属棒(青銅製と言われる)を差し込む。しばらく差し込んだままにすると熱せられた表側に亀裂が生じる。この亀裂の形で吉凶を見るのであるが、その卜をした甲骨に、卜の内容・結果を彫り込んだのである。

木簡を表す甲骨文字が見られることから、それらを用いて記した文字もその時代にあったと推測されるが、考古学的出土はない。

現在存在する中での最古の漢字は、殷墟から発掘される甲骨などに刻まれた甲骨文字である[31]。その内容は王朝第22代武丁のころから書かれたものであるため、それ以前には新石器時代遺跡等で発見される記号はあっても、文字として使用できる漢字ができあがったのは紀元前1300年ごろのことだと考えられる[32]。この甲骨文字は物の見たままを描く象形文字であり、当時の甲骨文字はに近い様相を持つものも多かった。その一方で、ある種の事態を表現する動詞形容詞の文字も存在した。たとえば、「立」の原型である人が地面を表す横棒の上に書かれた字(指示文字)、女性が子供をあやす様から「好」や、人が木の袂(たもと)にいる様から「休」などの字(会意文字)も既に含まれていた[33]。さらに、同音の単語をすでにある別の字で表す代用字もあり、たとえば鳥の羽を示す「翼」の原型は、同音で次のことを示す単語に流用され、これがのちに「翌」となった[33]


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