漁業権
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ある種の独占排他的な権利が設定されている。

沿岸土地の所有者に沿岸権(英: riparian rights)が一括して付与されており、その沿岸権の一部に その区域で漁業を行う権利も含まれている。つまり、沿岸の土地を所有している者が、隣接する海域の漁業権も持っていることになる。

この漁業権は「特定の個人に帰属するもの」ではなく、「特定の土地に付随する権利」である。よって、土地所有権が移転すると、それとともに漁業権も移動する。
ニュージーランド

もともとニュージーランドでは、自国の国民・市民に対して自由漁業を行うことを慣例として認めている[3]

ニュージーランドでは漁業を専業とするのは水産会社だけだったという事情があったので、1986年に制定されたFisheries Amendment Act 1986(「1986年 漁業修正法」)では、魚を獲る権利としてではなく、漁業産業を行う権利という形で扱われている[3]。漁業労働者も、漁民(漁師)として扱うのではなく、「水産会社従業員」と位置づけ、水産会社に与えられた権利を執行する者と解釈された[3]

この法律が施行された結果、それまで自由に行われていた漁労行為の権利が侵害されるようになり、問題となった[3]。特に、マオリたちがワイタンギ条約によって国王から保障されている、自由に漁労を行う権利が侵害されたことは大問題になった[3]。また、市民が健全なレクリエーションとして行っている遊魚についても、さまざまな見解が示されるようになった[3]
日本法の漁業権
法的性格

現在の日本の漁業権は、沿岸漁業の秩序維持と漁民の経済的な保護を目的としている[4]

日本でも古代では「万民による自由使用の原則」があり、どの海域でも皆に漁業をする権利があった。それが変わり始めたと分かることが起きたのは江戸時代のころである。→#日本の漁業権の歴史

「日本の漁業権は古くからある水面に関する制度を近代法的に整備して成立した[2][疑問点ノート]」と解説する人もいる。

現在の日本における「漁業権」は、公法上の権利(特許)である。漁業権に関する申請・届出・許可・認可は「漁業法」が規定しており、また、処分に対する異議申立については、行政手続法行政不服審査法行政事件訴訟法の適用を受ける。しかし、これら公法の適用は、私法の適用を当然には否定しないから、公法の規定に反しない限りにおいて、私法の適用が認められる。

例えば、漁業権の申請と許可の関係は、意思の合致という点において契約関係と解釈することが可能であり、漁業権は、漁業法などの公法の規定に反しない限りにおいて、行政機関に対する私法上の債権としての性質を持つ、とされている。また、行政機関における公法上の権利に関する取り扱いは、公法の規定の範囲内において行政機関の裁量に任されているが、権利の取り扱いが行政機関の性質に照らして著しく不適当であるときは、行政訴訟において、公序良俗違反や信義誠実の原則、権利濫用などの私法上の規定を理由とした制限が加えられることがある。

このように、公法上の権利を私法上の権利と同様に扱う考え方を「公法私法一元論」といい、判例及び学説においては、この考え方が有力である。公法上の権利は一般的性質として、行政機関に対する私法上の債権としての性質を有するものであるから、公法上の権利である漁業権についても、行政機関に対する私法上の債権としての性質が認められるのである。

このような公法上の権利の一般的性質とは別に、漁業法23条は、漁業権を民法上の物権とみなし、土地に関する規定を準用すると定めている。この規定は行政機関が、漁業法に基づく公法上の処分を行うにあたり、私法上の物権に対する取り扱いに準じて行うことを定める規定である(公法私法一元論とは異なり、純然たる公法上の規定である)。

漁業法23条は、「民法上の物権とみなす」としてはいるが、実際には、漁業権の譲渡は、例外的な移転を除いて禁止され(同法26条1項)、貸付は不能(同法30条)であり、抵当権の設定、使用方法に至るまで、漁業法は多くの制限を科しており、民法上の物権とみなしていると考えられる点は殆どない。

また、海面は、土地所有権の設定対象にはならず、用益物権は、土地所有権に基づく支配権の一部を譲渡した形態であるから、海面に設定することが可能な漁業権は、用益物権ではない。
漁業権の種類

漁業権漁業は、以下の3種に大別される(漁業法6条2項)。漁業権から派生する「入漁権」に基づく漁業も分類上含む。定置漁業権、区画漁業権の2種については、免許を受ける漁業者個人が権利主体となり、共同漁業権、特定区画漁業権については、免許を受ける漁業協同組合(漁協)あるいは漁業協同組合連合会(漁連)が権利主体となる。

漁業者以外がレクリエーションとして魚を釣る場合もあるため、「遊漁券」には切符形式の1日漁業権もある[5]
定置漁業権
一定期間、一定場所にその他の漁具を敷設・定置して漁業を営む権利(同法6条3項)で、以下の種類がある。

身網が水深27 m以上(沖縄県では15 m以上)の大規模定置網漁業(例外として、瀬戸内海におけるマス網漁業、陸奥湾における落網漁業およびマス網漁業)

北海道で、さけを対象とする定置網漁業
上記以外の小型定置網漁業は、第二種共同漁業権に分類される。免許期間は5年。
区画漁業権
一定の区域内で水産動植物の養殖業を営む権利。3種に分かれる(同法6条4項)。免許期間は10年。
第一種区画漁業
一定の水域内においてかわら、木等を敷設して営む養殖業。ひびかき真珠真珠母貝藻類、小割式の各養殖業がある。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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