準禁治産者
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準禁治産者には保佐人が付けられ(第11条)[11]、準禁治産者が保佐人の同意を得ずに行った以下の法律行為は取り消すことができた(第12条1項)。これら以外の行為についても裁判所は場合によっては一定の種類の行為を指定して、保佐人の同意を必要とする旨の宣告をすることができた(第12条2項)。
元本を領収し、又は利用すること。

借財又は保証をすること。

不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。

訴訟行為をすること[12]

贈与和解又は仲裁合意をすること。

相続の承認若しくは放棄をすること。

贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は遺贈を承認すること。

新築、改築、増築又は大修繕をすること。

民法第602条(短期賃貸借)に定める期間を超える賃貸借をすること。

裁判所が「心神耗弱者、聾者、唖者、盲者」であることを判定するには、医師その他適当な者に鑑定をさせなければならない(明らかにその必要がないと認めるときはこの限りでない)(家事審判規則第30条の2)。 これが肯定された場合、禁治産者とは異なり、裁判所はなお準禁治産者制度の目的から見て、当該の場合にその宣告をする必要があるかどうかを判定すべきである[13]、とされた。準禁治産を宣告する審判が確定したときの手続きは禁治産の場合と同様である。なお、「浪費者」については鑑定は不要である。

身分法上の行為については禁治産者と同様、準禁治産者が単独で有効にできた。準禁治産の原因が止んだときは、第7条に掲げられた者の請求により裁判所が準禁治産の宣告の取消をする必要がある(第13条)。

禁治産者における意思表示の受領能力に関する規定(第98条)は、準禁治産者には適用されない(第98条は「準禁治産者」の語を入れていない)。
保佐人の選任

後見人の選任の規定が保佐人にも準用され、同一の要件である。
保佐人の職務

保佐人は上に列記した法律行為について、同意を与える。保佐人には準禁治産者を代理する権限はなく、法定代理人ではない。

準禁治産者が保佐人の同意を得ないでした、取り消しうる行為は、準禁治産者本人に限り取り消しうる。保佐人は法定代理人でないので取消権はないとするのが判例の立場であった(大判大正11年6月2日)。もっともこの判例には「同意権者は、その権能を無視された場合に、その無視してなされた行為を取消うるのでなければ、同意権は実効を収めえない」[14]として学説は批判的であった(のちの成年後見制度では保佐人の取消権が明文で規定された)。

準禁治産者が精神障害者である場合、保佐人は後見人のような療養監護の権利義務を有しないことから、保佐人には後見人のような義務者としての規定はなかった(成年後見制度の開始と同時に、後継の法律が改正され、このときに保佐人にも保護者としての類種の義務が当初は課せられた)。
準禁治産者の権利の制限

禁治産者と同様に、衆議院議員選挙法では準禁治産者は選挙権及び被選挙権を有しないと定められた。成年男子普通選挙が導入されたときも変わらず準禁治産者の欠格要件は残った。禁治産者と異なり、戦後の公職選挙法ではこの規定は引き継がれなかったので、公職選挙法下の選挙では準禁治産者は選挙権及び被選挙権を有していた。

禁治産者と同様に、準禁治産者は国家公務員・地方公務員に就任できず、また医師・弁護士をはじめ多くの国家資格で準禁治産者であることを欠格要件として定めていた。
法改正による経過措置

禁治産の制度は2000年(平成12年)4月施行の改正法施行により成年後見制度に置き換わる形で廃止されたが、以下の経過措置が設けられた(平成11年附則第3条)。

旧法(2000年改正前の法)の規定による禁治産の宣告は新法(2000年改正後の法)の規定による後見開始の審判と、当該禁治産の宣告を受けた禁治産者並びにその後見人及び後見監督人は当該後見開始の審判を受けた成年被後見人並びにその成年後見人及び成年後見監督人とみなす。

旧法の規定による心神耗弱を原因とする準禁治産の宣告は新法の規定による保佐開始の審判と、当該準禁治産の宣告を受けた準禁治産者及びその保佐人は当該保佐開始の審判を受けた被保佐人及びその保佐人とみなす。これ以外の準禁治産者及びその保佐人に関する民法の規定の適用については、第846条(後見人の解任)、第974条(証人及び立会人の欠格事由)及び第1009条(遺言執行者の欠格事由)の改正規定を除き、なお従前の例による。

旧法の規定による禁治産又は準禁治産の宣告の請求(この法律の施行前に当該請求に係る審判が確定したものを除く。)は、新法の規定による後見開始又は保佐開始の審判の請求とみなす。

脚注[脚注の使い方]^ a b 明治民法下では人事訴訟手続法に基づき通常裁判所で、戦後は本人の住所地を管轄する家庭裁判所(家事審判規則第22条)。
^ a b 我妻栄『民法総則(民法講義I) 』岩波書店、1963年、p.65
^ 裁判所が禁治産の宣告をする際には、必ず同時に後見人を定め、この者にその旨を告知し、その後見人が戸籍上後見開始の届出をする(家事審判規則第25条・26条、戸籍法第81条)
^ 我妻栄『民法総則(民法講義I) 』岩波書店、1963年、p.68
^ 我妻栄『民法総則(民法講義I) 』岩波書店、1963年、p.67
^ 同趣旨の規定は成年後見制度下の現在は第98条の2に規定されている。
^ 我妻栄『民法総則(民法講義I) 』岩波書店、1963年、p.68~69
^ 美濃部達吉『選挙法大意』三省堂書店、1914年 p.38
^ 浪費者であることを理由として準禁治産を宣告する制度を設けた趣旨は、浪費者が思慮なくその資産を浪費することを防止し、もって浪費者の財産を保護するにあるから、右の制度は、憲法13条および29条の趣旨と牴触するものでないことはいうまでもなく、また、浪費者であることを理由として準禁治産の宣告を受けた者も、その原因が止んだときは、民法13条、10条により、家庭裁判所は、本人その他民法7条所掲の者の請求によりその宣告を取消すことを要するものであり、本人が浪費者でなくなったことは、本人の日常の行動その他具体的事実により十分にこれを判断できるのであるから、その行為能力の回復が法律上保障されているのであって、その保障がないとの見解を前提として、この制度の違憲を論ずるは、当を得ない(最判昭和36年12月13日)。つまり、「浪費者」を準禁治産者とすることは、憲法第13条、29条に違反しない。
^ a b 我妻栄『民法総則(民法講義I) 』岩波書店、1963年、p.70
^ 裁判所が準禁治産の宣告をする際には、必ず同時に保佐人を定める。


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