準惑星
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決議6Aで、冥王星は準惑星の典型例であると明示されている[4]

冥王星はエッジワース・カイパーベルトに位置する軌道を持つ天体であり、海王星と 3:2 の共鳴関係にある軌道を巡っている。trans-Neptunian objects(トランス・ネプトゥニアン・オブジェクツ) (TNOs、太陽系外縁天体)のうち、このような共鳴軌道を巡る天体は冥王星族と呼ばれ、TNOs 全体の1割を超えている。この観測事実が、冥王星が惑星と見なされなかった要因となっている。
歴史

1801年以降、天文学者は火星と木星の間にあるケレスやその他の天体を発見した。これらの天体は、何十年もの間惑星と見なされていた。1851年頃、惑星の数が23に達したとき、天文学者は小惑星という言葉を小さな天体に使用するようになり、それからそれらを惑星として命名したり分類したりするのをやめた[5]

1930年に冥王星が発見されたため、ほとんどの天文学者は、太陽系には9つの惑星があり、数千の非常に小さな天体(小惑星と彗星)があると考えていた。冥王星はほぼ50年間、水星よりも大きいと考えられていた[6][7]。しかし、冥王星の衛星のカロンが1978年に発見されたことにより、正確に冥王星の質量が測定できるようになったが、それは当初の見込みよりもはるかに小さかったことが分かった[8]。冥王星は水星のおよそ20分の1の質量であったことが判明した。それでも小惑星帯で最大の天体であるケレスの10倍以上の大きさだったが、冥王星はの5分の1の質量しか無かった[9]。さらに、大きな軌道離心率や高い軌道傾斜角などのいくつかの異常な特性を持っている[10]ことから、それが他の惑星とは異なる種類の天体であることが明らかになった[11]

1992年に、アルビオンが発見されて以降、天文学者は冥王星と同じ空間領域(現在はエッジワース・カイパーベルトとして知られている)で、多くの小天体を発見した[12][13][14][15]。それに伴い、冥王星は天文学的には太陽系外縁天体の一つであることが確実となった[14][15]。これらの多くは冥王星の主要な軌道特性のいくつかを共有しており、冥王星は新しい分類の天体の中で最大の天体と見なされ始めた。新しいの小惑星の発見後にケレスが再分類されたのと同じように、これらの天体も大きな天体を惑星として分類するか、冥王星が再分類される必要があることが明らかになった[16]。これにより、一部の天文学者は冥王星を惑星と呼ぶのをやめた。「Subplanet」や「Planetoid」を含むいくつかの用語は、現在準惑星として知られている天体に使用され始めた[17][18]。天文学者はまた、冥王星と同じ大きさの天体がさらに発見され、冥王星が惑星として分類されたままである場合、惑星の数は急速に増加し始めるということを確信していた[19]

エリス(当時は2003 UB 313として知られていた)は2005年1月に発見された[20]。冥王星よりわずかに大きいと考えられており、非公式に第10惑星と呼ばれている報告もあった[15][21]。結果として、この問題は2006年8月のIAU総会で激しい議論の的となった[22]。IAUが最初に提案した案には、惑星にカロン、エリス、ケレスが含まれていた。多くの天文学者がこの提案に反対した後、ウルグアイの天文学者フリオ・アンヘル・フェルナンデス(英語版)とゴンサロ・タンクレディ(英語版)によって代替案が作成された。彼らは、中間のカテゴリーを提案した。カロンをリストから削除すると、新しい提案では、冥王星、ケレス、エリスも軌道をクリアしていないため、削除された[23]

IAUの最終決議5Aでは、太陽を周回する天体を3つの分類に分けた。IAUは、境界の天体を割り当てるプロセスを確立したことはなく、そのような判断は天文学者に任せていた。しかし、その後、IAU委員会が準惑星の命名を監督するガイドラインを確立し、絶対等級が+1より明るい(したがって、幾何アルベド1に対応する最小直径838 kmの、名前のない太陽系外縁天体[24])は、準惑星命名委員会によって命名されることになっていた[25]。当時、命名基準を満たすのはハウメアとマケマケだけであった。

これらの5つの準惑星(2006年に検討中の3つ(冥王星、セレス、エリス)と2008年に命名された2つ(ハウメアとマケマケ))は、一般に、太陽系の準惑星として命名当局によって提示されている[26]。しかし、それらの1つである冥王星だけが十分に詳細に観察されており、現在の形状が静水圧平衡から予想されるものに適合していることを確認している[27]。セレスは平衡に近いが、いくつかの重力異常は説明されていないままである[28]

一方、天文学界は通常、より大きな太陽系外縁天体も準惑星と呼んでいる[29]。たとえば、JPL / NASAは、2016年の観測後、(225088) Gonggongを準惑星に位置付た[30]。サウスウエスト研究所のSimon Porterは冥王星に言及して、2018年に「大きな8つの『太陽系外縁天体』準惑星(エリス、ハウメア、マケマケ、Gonggong、クワオアーセドナオルクス)」について話した[31]

太陽以外の恒星を周回する惑星の分類について懸念が提起されたが、問題は解決されなかった。代わりに、準惑星サイズの天体が観測され始めた時のみに、これを決定することが提案された[23]
準惑星の一覧

IAU が決議案採択の時点で dwarf planet の例として示したのは冥王星からケレスまでの3個であり、2008年7月にマケマケ、9月にハウメアが追加されて5個となった。しかし、このカテゴリー自体の定義も今後の研究に委ねられることを留意する必要がある。

なお、冥王星は trans-Neptunian object 内の新しいサブグループの代表例であることも IAU において決議されたが、そのサブグループの正式名称を決定するには至らなかった。日本学術会議は2007年4月9日の対外報告(第一報告)で冥王星型天体との呼称の使用を推奨した。その後、2008年6月11日にIAUの執行委員会が開かれ、plutoidを正式名称とすることが決定された。

準惑星名称分類直径 [km]質量 [kg]軌道傾斜角
[°]軌道離心率軌道長半径
[AU][* 1]公転周期
[年]自転周期
[日]衛星数認定日
冥王星冥王星族2,370~1.305 ×102217.090.25039.445247.746.387[* 2]52006年8月24日
エリス散乱円盤天体2,326 ± 12(1.66 ± 0.02) ×102244.080.43767.781558.771.08 ± 0.0212006年8月24日
ケレスメインベルト天体975 × 9099.5 ×102010.5810.0802.7674.600.37702006年8月24日
マケマケキュビワノ族1,300 - 1,900~4 ×102129.000.16045.482306.740.323812008年7月**日
ハウメアキュビワノ族1,960×1,518×996~(4.2 ± 0.1) ×102128.220.19643.080282.770.1646 122008年9月17日
^ 1天文単位 = 149,597,870 km
^ 逆行

上記のうち、ケレス以外の4個は plutoid である。さらに数十個の天体が plutoid に分類される可能性がある(準惑星候補の一覧を参照)。

trans-Neptunian object という分類呼称は、それをどう翻訳するのかを含めて、IAU の決議には左右されず、各国及び各自の判断に任されている(例えば、asteroidエッジワース・カイパーベルト天体、あるいは地球型惑星などの名称はもとから IAU の公式分類ではない)。IAU の公式用語には、各国でどのように分類しどのように呼ぶかについての強制力は全くない。

また、現在は冥王星の衛星とされているカロンは、「衛星かどうか」という判断を除き基準を満たしている。ただし、委員会原案では共通重心が主星の外にあるものは衛星としないと明示されていたが、それは最終決議案では記述されなかったため、IAU の公式見解としては、この点について何も示していない。

この他、小惑星帯の中ではケレスに次いで大きな天体であるベスタパラスヒギエアについては、自身の重力によって球に近い形を保っている可能性がある。このため、今後の観測の結果如何では準惑星に分類される可能性がある[32]。もちろん、これ以外の天体についても条件さえ満たすことがわかれば、順次、準惑星と呼ぶことになるであろう。
準惑星の大きさと質量

IAU が採択した決議 5A では、準惑星の大きさと質量については、下限と上限が以下のように定められている。

上限については定義されない。仮に水星より質量の大きな天体が見つかっても、「その軌道周辺で他の天体を排除していない」なら、惑星には分類されず、準惑星と分類されることになる。


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