湖沼
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湖沼(こしょう)は、周囲をに囲まれと直接連絡していない静止した水の塊である(一部の例外を除く)。語義では湖沼のうち比較的大きなものを、同様に比較的小さなものをあるいはと呼ぶが、学問上は様々な定義や分類が行われてきた(後述)。
概説断層湖の諏訪湖沖縄県の玉泉洞

陸水は陸氷、地下水地表水に分けられる[1]。地表水は流水または静水として存在し、凹地に滞留する静水及びその凹地を「湖沼」、特に静水が滞留する凹地とその地理的範囲を「湖盆」と呼ぶ[1]。一方、地下水に関しては地下河川を通じて地底湖などの水域が形成される[2]
湖沼学上の分類

湖沼学では湖沼を湖(深い水底を持ち少なくとも中央部に水生植物が生えないもの)、沼(浅い水底でその全面で水生植物(沈水植物)の生育が可能なもの)、沼沢(ごく浅い水底で抽水植物が全面に繁茂するもの)に分ける[1]。また、池は人造の静水域のことをいう[1]

ただし、歴史的には様々な分類が行われており諸説存在する。

スイスの陸水学フランソワ・フォーレルの説では、中央部において沿岸植物の侵入を受けない深さをもつものを湖とし、水底の植物がいたるところで繁茂するものを沼とした。

アメリカの動物学者ポール・ウェルチの説では、をかぶる不毛のをもつものを湖とし、湖が小さく浅く変化したものや人工的なものなどを池とした。

A. J. ホーンとC. R. ゴールドマンの説では、主としてによって混合されるものを湖とし、主として対流によって混合されるものを池とする分類方法を提唱している。

1876年明治9年)の『地所名称区別細目』においては陸地の一か所に水が滞留したもので天然の広くて深いものが湖、浅くて底が質のものが沼、平地を掘りまたはを堰き止めて人工的に造られたものが池とされている[1]。日本の淡水生態学の開祖とも言える上野益三は小型で浅く全水面に沿岸植物が広がっているものを沼とし、人工施設によって全貯水量を管理できるものを池とした。
地名との関係性

湖沼学上の分類は固有の地名には当てはまらない[1]。例えば湖沼学ではカスピ海は世界最大の湖である[1]。また、奥日光の菅沼(最大水深92 m)などは水深の深い湖である[1]。ただ、福島県の「沼沢沼」が「沼沢湖」、静岡県の「狸沼」が「田貫湖」となるなど改称する池沼も増えている[1]

なお、日本では河川法によって、ほとんどの湖沼は「河川」として名称と範囲が指定されている。だが、実際の「湖沼」がどのようなものかについて、法令による定義はない[3]
湖沼の形成要因日本で最高所(標高2,905 m)の湖沼である御嶽山の二ノ池(火口湖)

何らかの要因で陸地内部に窪地が形成され、なおかつそこに水がたまることによって湖沼が形成される。要因として以下のような例を挙げることができるが、複数の要因が複合して形成されたものや形成要因がはっきりしない湖沼もある。陸水学者のエブリン・ハッチンソンは、湖沼の形成要因を地殻変動(構造湖)、火山活動(火山湖)、氷河活動(氷河湖)、その他の4種類に分類した。

日本においては陸水学者の吉村信吉が要因を侵蝕盆地、堰塞盆地、爆裂盆地、構造盆地に分類している。また、同じく陸水学者の田中正明は侵蝕作用(水蝕湖、氷蝕湖、溶蝕湖)、堰止湖(火山、氷河、川、地すべりなど)、火口湖構造湖(褶曲湖、断層湖、カルデラ湖)に分類している。
地殻変動
断層
詳細は「
地溝湖」を参照地殻の一部が分断されて上下にずれると高低差が生じて窪地が形成される。単一の断層によって形成される場合(例:アルバート湖)と、多数の断層によって形成される場合(例:バイカル湖タンガニーカ湖死海琵琶湖)とがある。地殻が左右にずれる断層においても断層線が曲線状になっている場合には食い違いによって窪地が形成されることがある(例:ネス湖諏訪湖)。断層湖または地溝湖と呼ばれる。
隆起や沈降
海底が隆起して陸地になるときに海が分断され湖沼として残されることがある(例:カスピ海)。一方、陸上においても下流へと流出していた水が地殻の沈降や隆起によって行き場を失い湖沼となることがある(例:ビクトリア湖チチカカ湖)。
火山活動ピナトゥボ山カルデラ湖
火山の火口
火山の爆発によって地表の土砂が吹き飛ばされると窪地が形成される。山頂火口に形成されるもの(例:
大浪池)と、水蒸気爆発によって形成されるもの(例:ニオス湖目潟)がある。火口湖(かこうこ)と呼ばれる。おおむね湖の水質は強酸性であることが多い。
カルデラ
火山噴火によって地下のマグマが噴出し、残された空洞が落ち込んで窪地となったもの(例:トバ湖屈斜路湖摩周湖)。カルデラ湖と呼ばれる。カルデラ内の平坦部(火口原)に形成されたものを火口原湖という。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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