測光
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例えば、サルや人間の眼は赤色光よりも緑色光に敏感なので、放射強度が同じ光源でも緑色の光源の方が赤色光源より測光量の光束は大きくなる。さらに眼の感度を持たない可視光以外の波長では、どんなに強い放射でも測光量は0になる。例えば赤外線ヒーターからの放射はわずかな赤色光の他はほとんどが赤外線であるため、1000 Wの暖房ヒーターは1000 Wの放射強度を実際に放っているが、測光するとわずかな値のルーメンしか示さない[12]。この感度は人間特有のもので、たとえば昆虫は紫外線にも感度を持つ種がある。

SIの放射量の単位

[編集]物理量SI単位記号備考
放射エネルギージュールJにおける光度エネルギー
放射束ワットWにおける光束
放射強度ワットステラジアンW/srにおける光度
放射輝度ワットステラジアン平方メートルW/sr/m2における輝度
放射照度ワット平方メートルW/m2における照度
放射発散度ワット平方メートルW/m2における光束発散度
分光放射輝度ワットステラジアン立方メートルW/sr/m3
分光放射照度ワット立方メートルW/m3

ワットとルーメン

ワットは放射束の単位で、ルーメンは光束の単位である。ワットとルーメンを比較することは、放射単位と測光単位を比較するうえで役に立つ。

ワットは電力の単位であり、現代の人々は電球などの照明器具の明るさをワットで表記することに慣れている。この表記において電力は放出された光の量を計測しているのではなく、その照明器具が消費した電力の量を表している。それでも、一般家庭用の白熱電球はどれも似たような特性(同じエネルギースペクトル分布)を持っているため電力同士の比較は光量同士の比較と良く対応しており、一般消費者にとっては電球の絶対的な光量は問題ではなく電球間の明るさの相対比較しか行わないためこの違いは問題にならない[13]

ワットは出力量の直接的な尺度にもなる。放射測定の観点で測定すると、白熱電球のエネルギー効率は80%で、残りの20%は光以外の形で失われる(ランプのベース回路の抵抗など)。このため、60 Wの電球からの放射の総量は45 Wとなる。ここで注意すべきは、白熱電球の場合放射はほとんどが赤外線であることである。実際に白熱電球の用途としてほとんどは照明としてであるが、中にはひよこの孵化器のように熱源として使うこともある[14]。照明の観点では白熱電球はほとんどを光源として役立たない赤外線として消費するので非効率である。実際、電球形蛍光灯は15 Wの消費電力で、60 W白熱電球と同じだけの可視光を放射できる[15]

一方でルーメンは測光における出力光の単位である。ほとんどの国の消費者は照明器具の明るさを電力ベースの単位で考えていたが、アメリカ合衆国では数十年にわたり、電球の出力表示はルーメンで表記することが流通の上で要求されている。60 Wの白熱電球や、15 Wの電球型蛍光灯はこのような国では900 lmと表記されて販売される[16]

ルーメンは1 Cdの点光源(英語版)が1ステラジアンの範囲に与える光の量として定義される。カンデラはSI基本単位の1つで、1/683 W/ srの放射強度(1/683という値は、この定義に改められる前にカンデラの定義として用いられていた標準ろうそくの光度と揃えるために設定された)になるような540THz(波長で555 nmの緑色光に相当し、人間の眼が最も感度のいい波長である)の単一波長の光源で定義される。これらの定義を組み合わせると、1/683 Wの波長555 nmの緑色光が1ルーメンの光を発する[17]

これらの関係は単純な倍率では変換できないが、おおよそ60 Wの白熱電球や15 Wの電球型蛍光灯が900 lmという目安で広く認識されている。この定義は1 Wの純粋な555 nmの光が683 lmに相当するというだけで、他の波長については言及していない。理由は、ルーメンはあくまで測光の単位なので、ワットとの関係はその波長が人間の眼にどのように見えるかに依存するからである[18]。極端な例だと、紫外線や赤外線は目に見えないのでそもそもルーメンには数えられない。1 Wの赤外線は0 lmなのである。可視波長の中でも光の波長は前述の光度関数で重みづけされ、たとえば700 nmの赤色光は555 nmの緑色光に対して0.4%の感度しかないため、1 Wの赤色光はわずか2.7 lmにしか相当しない[19]。この重みづけの一部である電磁スペクトルの可視部分を合計しただけであるので、ルーメンの単位からは色は分からない。
測光の技術

測光は、光に当たると種類によって様々なプロセスで電気信号を発する、光検出器と総称される装置を用いて行う。この検出器の応用先として簡単なものには、ある一点に入射する光の総量を測定する光度計や、周囲の明るさに応じて照明器具のスイッチを切り替える自動点灯装置などがある[20]

照明器具の業界などではさらに複雑な形態の測光が行われている。たとえば、測定対象の照明を中心に配置し、それを全方位から覆う大きなグローブ状の測定器で照明の光の指向性を測定する球面光度計(積分球)などがある。また、同様の測定が、照明の周囲を3軸で回転し照明からの光を全方位から測定するタイプのフォトセルも使われている[21]

照明器具をゴニオフォトメーター(英語版)や回転ミラー式光度計で測定することで、測定する照明を点光源と近似して見なせる十分な距離を一定に保った状態で測定できる。ゴニオフォトメーターは回転する2軸テーブルでフォトセルに対する照明の向きを変化させ、回転ミラー式光度計はすべての方向における照明の光をモーターが内蔵された回転鏡でフォトセルに向けて反射させる。いずれの方法でも、集めたデータから得られた光度は照明設計に利用される[22]
非SI単位での測光の単位
輝度

ランバート (単位)(L)- 1 L= 10 4 π {\displaystyle {\frac {10^{4}}{\pi }}}  cd/m2(約3183.1 cd/m2)に相当する。

スチルブ(sb)- 1 sb=10-4cd/m2に相当する。

照度

フットキャンドル
(英語版)(fc)- 1 fc=10.76 lxに相当する。

フォト(ph)- 1 ph=104lxに相当する。

関連項目

光源の一覧

フォトメトリア(英語版)

測光_(天文)

放射計

反射率

分光器

カラリメトリー

TTL露出計

脚注[脚注の使い方]^ “CIE Scotopic luminosity curve (1951)”. 2023年4月8日時点の ⇒オリジナルよりアーカイブ。2023年4月3日閲覧。
^ “CIE (1931) 2-deg colour matching functions”. 2023年4月8日時点の ⇒オリジナルよりアーカイブ。2023年4月3日閲覧。
^ “Judd-Vos modified CIE 2-deg photopic luminosity curve (1978)”. 2023年4月8日時点の ⇒オリジナルよりアーカイブ。2023年4月3日閲覧。
^ “Sharpe, Stockman, Jagla & Jagle (2005) 2-deg V*(l) luminous efficiency function”. 2023年4月8日時点の ⇒オリジナルよりアーカイブ。2023年4月3日閲覧。
^ a b c d e Bass, Michael, ed (1995). Handbook of Optics: Volume II – Devices, Measurements and Properties (2nd ed.). McGraw-Hill. pp. 24-40-24-47. .mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 978-0-07-047974-6 


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