日本では、気象業務法及びその下位法令により、公共的な気象観測には、検定に合格したガラス製温度計(液柱温度計に同じ)、金属製温度計(バイメタル式温度計に同じ)又は電気式温度計(白金抵抗体温度計に同じ)を用いることとされている。これらは、-50℃(ガラス製温度計は-30℃でも可)?50℃において所定の性能を発揮しなければならない。なお気温の測定方法については、気象観測の「観測の方法と機器」を参照のこと。 ガラス製温度計の感温液としては、公的な観測用としては主に純水銀が使われ、一般の用途には赤色に着色した灯油などが用いられる[7]。後者の液の組成としては、ペンタンの異性体やその混合物、ないしトルエンが推奨されている(日本規格協会 1997, §6.c)。特殊な構造のものとしては がある。なお、毛細管に用いられるガラス管は、気象観測に用いることができるほどの精度と経時安定性とを有するものが日本では製造できず、ドイツからの輸入に頼っている。 温度目盛りについては全漬没温度計と漬没線付温度計がある。漬没線付温度計は漬没線以下が測定対象と等温であり、線以上が室温(20℃)であることが前提であり全漬没温度計は球部から液柱先端までが測定対象と等温であることが前提である。前提と異なる測定方法をすると赤液温度計では約5℃近くの補正が必要になる場合がある[8]。 金属製温度計は、感部にバイメタルを用い、その温度変化に伴う変形を指針の動きに変換することによって温度を測定するものである。バイメタルの材料としては主にアンバーと黄銅との組合せが使われる。構造が簡単で安価なため、家庭用としても普及している。 指針と目盛板によって気温を直接表示するもののほか、指針の代わりに記録ペンを駆動し、ゼンマイなどの動力で回転するドラムに巻かれた記録紙に温度の時系列を自動的に記録する自記式のものもよく使われる。 使用にあたっては、ガラス製温度計による校正が必要である。 許容される器差は、1.0℃である。 電気式温度計は、白金の温度による電気抵抗の変化を検出することによって温度を測定するものである。自動・遠隔観測に適するため、現在、気象庁をはじめとする多くの機関で主力となっている。感部に用いられる白金線(抵抗体)は、0℃において抵抗値100オームの「Pt100」規格のものと定められている(同条件で抵抗値50オームの「Pt50」を用いる国もある)。 許容される器差は、0.5℃(感部のみについて0.3℃)である。 電気式温度計には、温度によって誘電率の変化する感温体を誘電体に用いたコンデンサの容量の変化を検出する方式のものもあるが、小型軽量な反面、耐久性や測定精度にやや難があるとされ、現在は、使い捨てが前提のラジオゾンデ用としてのみ認められている(許容される器差は0.5又は1℃(測定範囲により異なる))。 家庭用・教材用としてはサーミスタを用いた簡易な製品もあるが、特に常時観測に使用する場合、通電に伴う自己発熱による誤差を生じやすく、耐久性も実証されていないことから、公共的な気象観測には用いられない。
ガラス製温度計
二重管温度計:通常の温度計の毛細管及び目盛板を、さらにガラス管に封入して保護したもの
最高温度計:毛細管に感温液の球部への逆流を防止する留点があり、最高温度到達後に温度が下がっても示度を保持するもの(構造的には水銀式体温計に同じ)
最低温度計:水平な毛細管中に感温液の収縮には引き込まれるが逆には動かない指標が置かれており、最低温度到達後に温度が上がっても指標が示度を保持するもの
金属製温度計
電気式温度計
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 初出は1843年(天保14年)『武江年表』[2]。
出典^ 温度計(読み)おんどけい(英語表記)thermometer
^ a b c 高橋 1976, p. 31.
^ 高橋 1976, p. 32.
^ a b c d e f g h Invention of the Meteorological Instruments. The Johns Hopkins Press. (1969)
^ 気象学と気象予報の発達史 温度計の発達とその目盛りの変遷