温室効果
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温室効果の変化過去約100年間の気温、温室効果気体オゾン太陽放射硫酸塩火山活動の変化。気温と対応が良い(関連性が強い)のは温室効果気体であるが、太陽放射との対応も見られるなど、影響度が異なるいくつかの要因が複合的に気温を左右している。

前述のとおり、地球への太陽放射と外向き放射が完全に一致するようになるまで、温室効果は強まり続ける。そのため、仮に温室効果が強まるような現象(気温の上昇、温室効果の増加)が起これば、外向き放射の量が増える一方で(温室効果により遮られるため外向き放射の)放射のペースが遅くなり、地表の気温が上がることになる。逆に、温室効果が弱まるような現象が起これば、外向き放射の量が減る一方、放射のペースが速くなるため、地表の気温が下がることになる。しかし、温室効果が強まっても弱まっても、放射の全体量は不変となるような仕組みになっている。

ただ、太陽放射が増えるなどした場合は、それに伴って放射の全体量も増え、連動して温室効果も強まり、地表の気温が上がる。また、逆に太陽放射が減った場合は、放射の全体量も減り、温室効果が弱まり、地表の気温が下がる。

また、前述の「直接宇宙へ反射するもの」、つまり、地表からの太陽放射の反射(アルベド)が増えれば、地球の気候システム内への供給が減り、温室効果が弱まり、地表の気温が下がる。逆に反射が減れば、温室効果が強まり、地表の気温が上がる。

また、気温の上昇が気圧の上昇を招き、熱伝導・熱伝達を促進し、温室効果を強める仕組みや、大気対流活発化が、同様に熱伝導・熱運搬を促進し、温室効果を強める仕組みなども考えられているが、詳しく分かっていない部分が多い。

このように、温室効果の変化にはいくつもの要因が絡んでおり、どれも気温の変化を招きうる要因であるといえる。

いくつもの要因が絡むため、普段の地球の気候においてはそれぞれが抑制し合っている。しかし、それぞれの要因が相乗効果を引き起こすこともある(フィードバック機構)。

温室効果は地球の気候において重要な役割を果たしている。しかし、地球の気候を考える上では、温室効果だけを考えても不十分であり、地球でのエネルギーの流れや物質循環の全体像をつかむ必要がある。
温室効果と成層圏

成層圏では、温室効果が増す(温室効果ガスが増える)と、気温が低下すると考えられている。温室効果ガスには吸収できない赤外線(波長8μm - 13μm付近、「窓領域」あるいは「大気の窓」と呼ばれる)があるが、前述のとおり、物体の温度が低いほど熱放射の波長は長くなるので、高度が高いほど気温が下がり、熱放射の波長も低くなる。そのため、高度が高いほど、その付近にある温室効果ガスの放射吸収能力に占める「窓領域」の赤外線の割合が増え、吸収できない赤外線が増える。さらに、温室効果ガスの濃度が高いほど「窓領域」の赤外線の割合が増え、吸収できない赤外線が増える。吸収できない赤外線が増えるということは、宇宙への放射が増えるということであり、つまり、成層圏では、温室効果ガスによる赤外線の吸収が少ない状態で放射の収支が安定しているため気温が低く、温室効果ガスの増加によって気温が下がる。ただし、水蒸気は「窓領域」に弱い吸収特性を持つが成層圏での濃度が非常に低く、オゾンは「窓領域」に弱い吸収特性を持っている上、紫外線に対しては強い吸収特性があるため、オゾンの増加は成層圏の気温を上昇させる ⇒[1]。成層圏の温度の垂直分布に関しては、オゾンの濃度や紫外線の強度の影響で、対流圏界面からそれより20km上空までは温度は一定、それより15km上空までは少しずつ気温が上昇、それより上空では急激に気温が上昇するという構造になっている。つまり、オゾンの減少は、オゾンの分布や紫外線の強度によるため、成層圏の気温は部分的に上昇・低下する複雑な変化となるのではないかと考えられている。
温室効果ガスの量と温室効果

温室効果ガスの増加量に対する温室効果の増強の度合い(=気温の上昇度)は、もともとの温室効果ガスの量によって異なる。例えば、もともと二酸化炭素がない大気であれば、二酸化炭素が吸収特性を持つ波長の電磁波(以降「赤外線」とする。)は吸収されていないので、多くの赤外線が「余っている」。ここに二酸化炭素が入ってきたとき、大量に「余っている」赤外線が二酸化炭素に吸収されるようになり、温室効果が生じて気温が上昇する。

しかし、もともと二酸化炭素が多い大気であれば、赤外線の多くは吸収されており「余っている」赤外線は少ないので、ここで二酸化炭素が増えても、増えた二酸化炭素が吸収できる赤外線は少ないため、もともと二酸化炭素がない大気に二酸化炭素が入ってきたときに比べ、温室効果の増強が小さく、気温の上昇も小さい。ただしこの場合、逆に二酸化炭素が「余っている」状態になり、吸収能力に余裕ができてしまう。そこで何らかの原因によって気温が上昇した場合は、気温上昇によって増えた赤外線を吸収し、温室効果を増強させてしまう。これらの現象は、二酸化炭素以外の温室効果ガスにおいても同様に起こる。

現在問題となっている地球温暖化は、「二酸化炭素の増加により温室効果が強まっているために起こっている」可能性が高いとされている(図参照)。しかし、温暖化の原因としては、太陽放射の変化や未知の気候因子に起因している可能性も否めないとされる。また、「二酸化炭素の増加による温暖化」に対する根強い反発もある。

温室効果ガスは、単体で増加するのみではなく、他の温室効果ガスの増減を誘発すると考えられている。例えば、温室効果ガスのどれかが増加して気温が上昇すれば、腐敗の促進や海水温上昇に伴うメタンハイドレート融解によってメタンが増加、蒸発促進によって水蒸気が増加、生物活動が活発化して呼吸により排出される二酸化炭素が増加するといった効果をもたらす。しかし、この場合、同じ気温上昇に伴い、植物の活動が活発化することによってメタンや二酸化炭素(炭素)の固定が促進されたり、対流の活発化によって水蒸気の働きで熱が潜熱という形に保存するのが促進されるなど、増加を抑える現象も発生する。これらフィードバック機構がうまく働くことで、地球は過度の温暖化や寒冷化から守られているといえる。しかし、フィードバック機構がいつどのようにどの程度働くかということは、詳しく分かっていない点が多い。

一説には、地球の平均気温は1905年から2005年までの100年間に約0.7℃上昇したといわれている。気温の上昇が自然や社会に与える影響というものは多種多様で、不明な点も多い。そのため、「地球温暖化によるリスク」の予測には議論の絶えないものも多い。しかし、わずかな上昇でもさまざまな気候の変化をもたらし、生態系や人類の生活に与える影響は計り知れないものになるだろうと考えられており、人類共通の重要課題として取り組まれるべきものである。
温室効果ガス濃度・気温の変化のさまざまな要因
ピナトゥボ山噴火と1991年 - 1992年のCO2濃度上昇幅縮小
1991年の
ピナトゥボ山噴火は、エアロゾル濃度の世界的な増加をもたらし、気温を低下させた。そのちょうど同じ時期に、世界各地の大気中CO2濃度の上昇幅が縮小したことが観測された。これは、気温の低下によって土壌中の生物の活動が鈍り二酸化炭素の放出が減少したためだと見られていた。しかし、この場合見られるはずの、気温と濃度の変化の時間差が短かったため、もう1つの要因として、エアロゾル濃度が増加したために、直達日射に代わって散乱日射が増えたことにより、光合成の効率が上昇し、二酸化炭素の吸収が増えたことが考えられている[5]
大規模森林火災と2003年のCO2濃度上昇幅拡大
2003年に北半球の中高緯度地域で発生した森林火災によって、燃焼により二酸化炭素が大量に放出され、マウナ・ロアの大気中CO2濃度上昇幅拡大に関与していた可能性があると見られている。また、森林火災によって土壌の環境が変化し、鎮火後数年もの間土壌からの炭素の放出が増えるとの指摘もある[5]
海水中の塩分濃度と植物プランクトンの活動度
海水中に鉄分が不足している海域では、鉄分濃度が増えることで、植物プランクトンの活動が活発になり、光合成による二酸化炭素の吸収が増えると考えられている[5]
発見と研究

温室効果は、1824年ジョゼフ・フーリエによって発見された。1890年に出版されたピッツバーグのアレゲニィ天文台での赤外線観測におけるサミュエル・ラングレーフランク・ワシントン・ヴェリーとの共同の論文を元にスヴァンテ・アレニウス1896年炭酸ガスと温室効果との関連性に初めて言及した。これらは全てグリーンハウス(温室)による保温のようなものだとされており、放射の吸収によって起こるということが解明されるのはさらに後のことであった。

この節の加筆が望まれています。

温室効果気体太陽放射および地球放射のスペクトル(最上部)と、大気の主要成分別の吸収率、レイリー散乱(最下部)。

大気中に含まれる温室効果を促す原因物質を温室効果気体(温室効果ガス)と呼ぶ。主として水蒸気 (H2O)が挙げられるが、ほかにも二酸化炭素 (CO2) 、六フッ化硫黄(SF6)、対流圏オゾンオゾン層破壊で知られるフロン類 (CFCs)、それらの代わりとして一時期用いられた代替フロン類、一酸化二窒素 (N2O)、メタン (CH4)、一酸化炭素 (CO) など、大気に微量に含まれ、分子の伸縮や折れ曲がりによって非対称な電荷分布を取りうる分子にも、同様の効果をもたらす性質がある。これらの気体の中で、現在の気候を維持している温室効果への寄与度がもっとも大きいのは水蒸気であり、また、同体積あたりの温室効果に寄与する度合い(温室効果係数)が二酸化炭素に比べて非常に大きいものも多い[6]


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