政府が均衡財政にこだわらず歳出を行なうことで、乗数効果による国民所得維持を図り、民間投資の減少を引き止め、完全雇用の達成と経済成長を図ることが目的である。
さらに、所得再分配をはかり消費性向低下を抑制することや、社会福祉の充実により社会不安を背景とした過剰貯蓄を回避し個人消費の育成を図るなどの政策も前述の目的に沿っている。さらに、規制などによりあらかじめ産業の需給調整を図り、投資リスクの低下を図る。 時は第二次世界大戦に続く冷戦時代であり、労働者の権利と生活の向上、平等な社会の実現を標榜し、資本主義を搾取的だと主張する社会主義国と対峙する上で、国内に貧富の格差を生むことは望ましくなかった。貧富の格差の増大は社会不安を招き、ひいては社会主義勢力の台頭を招く恐れもあった(これは、現に、世界恐慌後のドイツで起こったことである)。 また、大規模な戦争を経過することで交戦国の多くが総動員体制 大規模な社会インフラ整備を必須とする重化学工業の発達とモータリゼーションは、公共投資増大を正当化した。インフラ整備は産業発達を通じ財政の発展をもたらすため、政府活動がビジネス化することになった。 小さな政府論者からみると、それより規制的な考えは、皆「大きな政府」、即ち混合経済になるが、実際には異なる。 1960年代、主要国において大きな政府の体制が敷かれたが、1970年代からのスタグフレーション下で肥大化した政府の非効率性が問題点にされた。 このころ、混合経済体制の目的が公共投資による経済成長から所得再分配そのものへ変質し、国政機関による国内の利害調整・買票の手段へと転化した。ここに至って、公共投資や規制は既存の産業構造保持を目的とするようになり、経済成長を阻害しかねない状況へおちいった。 また、積極財政で投下した資金が石油危機のために、石油代金として国外に流失して、米国内で乗数効果を発生せず、米国のスタグフレーション治療に効果がなく、財政赤字だけが拡大したことが批判を浴びた。 その後、新自由主義の台頭により、混合経済システムは「大きな政府」と批判されるようになった。批判を背景に、サプライサイド改革をすすめる国は「小さな政府」へ転向しているが、改革の根拠とされたサプライサイド経済学の妥当性については極めて批判的な意見が多く、ブードゥー経済学と嘲笑されるに至っている。 現在、「不況期における政府投資による雇用・有効需要創出」を再評価し、「投資採算・回収性によるプロジェクト厳選」、「創出需要が輸入で流出することの防止」などを反省し、「環境との調和」に留意した「修正ケインズ学説」に基づいてバラク・オバマ米政権の「グリーン・ニューディール政策」が打ち出されている。
実施国家
オーストラリア
フランス
インド(社会主義を謳う。計画経済から移行。)
中国・大陸地区(共産主義国かつ「混合所有制」。計画経済から移行。)
デンマーク(社会民主主義的福祉国家)
ノルウェー(社会民主主義的福祉国家)
スウェーデン(社会民主主義的福祉国家)
かつての実施国家
イタリア(政府の介入が後退)
背景
所得再分配
公共投資
ケインズ経済学と社会民主主義と第三の道
社会民主主義
「必要な者に支給」、社会的連帯の重視
社会自由主義
「社会的公正の実現」、各個人の自由の達成のための社会的相互援助
修正ケインズ経済学
積極的な財政政策と金融政策を併用。「機会の平等」だが、公害や失業の垂れ流しは汚染者負担原則。救済は受益者負担「不況企業救済で政府が官需発注・投資・雇用肩代わり分」は、租税で企業に請求。「自動車業界の法人税がなぜ土建業に?」との批判は考慮。
第三の道
基本的に「小さな政府」、財政政策には消極的で、金融政策を主軸とした経済政策を採用。貧困者へは安全ネットの展開「機会の平等」を担保するため、教育を重視。相続税や累進課税にも肯定的。
小さな政府
「機会の平等」、しかし相続税にも否定的でトリクルダウン論を主張。経済政策の中心は金融政策であり、財政政策には否定的。セーフティネットは最低限とする。減税、均一課税、最小国家主義。
ケインズ経済学の展開
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 1980年代以前の日本の自民党も含むが、公務員の労働者数に占める比率が比較的低く、公共企業体の経済に占める事業規模も小さく、一方外郭団体が多数存在するという点で西欧諸国の混合経済体制とは異なる。
関連項目
中道左派
福祉国家
修正主義
社会民主主義
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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