液晶ディスプレイ
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カラーフィルタ

カラーフィルタは、サブ画素に対応させて、赤色 (R)・緑色 (G)・青色 (B) の光を透過させる着色層やブラック・マトリックス (BM) を基板上に配置し、保護膜で覆ったものである[3]。この着色層は、液晶をはさむ2枚の基板の表側のカラーフィルタ基板に微細パターンで塗り付けられる「着色材」、又は「着色膜」であり、顔料系、又は染色料系のものが用いられる。BM層によって黒色表示時の光漏れと隣り合う着色材同士の混色を防ぎ、TFTへの光照射による光電流の発生も防止する。着色材の定着に感光材を用いるものは、着色材に混ぜられてそのまま定着する。0.1μm程の薄いBM層は金属クロムが多く、他にもカーボン、チタン、ニッケルの使用が試みられている。BM層の間には1.2μm程のBM層よりは厚みのある3色の着色層が一定のパターンで配置される。高精細の画面では着色層のパターンはストライプ配置が多いが、低精細度の画面ではデルタ配置が良好な画質の印象となる。カラーフィルタの配列例
左からストライプ、ダイアゴナル(モザイク)、デルタ(トライアングル)と呼ばれる。カラーフィルタのない領域はBMで覆われ不要な光が遮蔽される。

カラーフィルタは色素の吸収を利用して各サブ画素の通過光をR、G、Bの3つの基本色にして、加法混合方式で混色を作り出すことで中間色を含むカラー表示が実現する。各サブ画素の印加電圧を制御して画素ごとの混色による発色が可能になり、透過光を遮ることで黒を表現する。これがカラー液晶パネルの仕組みである[注 21][4]

カラーフィルタには高色純度と高透過性、耐光性や耐熱性、耐薬品性、平滑性、加工寸法の精度が求められる。180℃で1時間といった配向膜の焼成工程や低抵抗性ITOの成膜工程等での高温に耐える必要がある。同じく配向膜やITOの加工中での溶剤や洗浄剤に対する耐性が求められる。突起などがあるとセルギャップが一定に保てず、表示品質が悪くなる[5]。カラーフィルタだけでも光の70%程度が失われて主に熱となり、残る約30%だけが通過できる[6]単純マトリクス駆動方式の等価回路
A.理想 B.クロストーク経路 C.電圧平均法
Aが理想的な単純マトリクスによる液晶電極の駆動であるが、実際はBのように「クロストーク」によって電圧が他の素子を経由してかかり、周辺の画素まで影響を受ける。図の例では1本の経由ルートだけを示したが、実際は周囲に多数のルートがありクロストークとなる。Cのようにクロストークによって漏れ出る電圧の影響を最小限にするために、非選択の画素には印加電圧のN分の1程度(Nは走査電極数)の電圧が加わるように工夫した「電圧平均法」が用いられる。
液晶パネルの基本的な駆動方式

簡易な表示で済む電卓の表示部のようなものを除けば、多数のサブ画素を格子状に配列したドットマトリクスによる表示が液晶パネルの主流となっており、これによって変化に富んだ画像表示が行える。ドットマトリクス表示の多数のサブ画素ごとの電極に個別の配線を行うと、基板周縁部は配線で埋まり現実的ではなくなることから、縦横の2次元的な配線の交点でサブ画素の電極を制御するマトリクス配線方式が採られている。マトリクス配線では、基本的に液晶パネル外との配線数が縦線と横線の合計数で済む。

マトリクス配線で使用される2種類の信号線を以下に示す[注 22][7]
データ線
データ線はデータ信号線やX電極線とも呼ばれ、アクティブ・マトリクス駆動ではソース線とも呼ばれる。
アドレス線
アドレス線はアドレス信号線やY電極線とも呼ばれ、アクティブ・マトリクス駆動ではゲート線とも呼ばれる。

マトリクス配線には「単純マトリクス駆動方式」と「アクティブ・マトリクス駆動方式」がある。
単純マトリクス駆動方式
単純マトリクス (Simple Matrix) 駆動方式はパッシブ・マトリクス (Passive Matrix) 駆動方式(PM型)とも呼ばれ、X電極線とY電極線の交点の画素、またはサブ画素に電圧を印加し液晶を駆動する。単純マトリクス駆動方式では、液晶材料に270度まで旋回させる分子が選ばれたSTN (Super twisted nematic) がほとんど用いられる。XとYが非選択状態となると基本的には印加電圧は失われるため、画素が多数になるとその分だけ1つの画素に印加される時間は短くなるのであまり多数の画素は扱えない。1枚の画面、つまりフレームを表示する間の1つの画素、サブ画素に電圧を加える時間の比率をデューティ比と呼ぶ。XとYが同時に選択されていなくてもXとYのいずれかが選択されれば周辺の画素に無用の回路が出来て1/3程度の電圧が印加され、これはクロストークと呼ばれ、画面の滲みとなり、XとYにノイズが加わっても同様に無用な線が生じる。アクティブ・マトリクス駆動方式の等価回路
1.TFT 2.表示電極 3.コンデンサ 4.共通電極線へ
太線の部分が電圧が加えられている。
横方向に走るゲート電極線と縦方向に走るソース電極線の交点にTFTと呼ばれるFETが配置され、2本のバス線がFETのゲートとソースに接続されている。FETのドレイン側にはサブピクセルとなる液晶電極、そしてコンデンサ(キャパシタ)がつながれ、これら2つの容量性素子の反対側は共通電極(コモン電極)になっている。ゲート電極線に加えられた電圧によってそれに接続されている1列分すべてのFETが"ON"動作となることで、ソースとドレイン間に電流が流れ、そのときソース電極線に加えられている各々の電圧が液晶電極にかかり、コンデンサには電圧に応じた電荷が蓄積される。ゲート電極線は1列分の充電を終えると電圧の印加は次の列に移り、最初の1列分のFETはゲート電圧を失って"OFF"動作となる。最初の1列分の液晶電極はソース電極線からの電圧を失うが同時にコンデンサに蓄積された電荷によって次にゲート電極線が選択されるまでの1フレーム分の時間、必要な電圧をほとんど維持できる。コンデンサの共通電極線は隣接するサブ画素のゲート電極線で代替することがある。このようにTFTをスイッチとして使ったアクティブ・マトリクス駆動方式では、ゲート電極線によって同時に多数のFETへ電圧を加えることができるので、膨大な画素にも対応でき、コンデンサによって表示を維持できる。
アクティブ・マトリクス駆動方式
アクティブ・マトリクス (Active matrix) 駆動方式はAM型とも呼ばれ、単純マトリクスのXとYの電極線と蓄積コンデンサに加えてアクティブ素子が各画素ごとに設けられている。一般的にはこのアクティブ素子に薄膜トランジスタ (TFT) が使われる。ガラスやプラスチック製のアレイ基板上に作られたTFTがスイッチング動作することで、XとYが非選択状態では蓄積コンデンサに蓄えられた電荷を出来るだけ保持するように働く[注 23]。XとYが同時に選択されなければTFTによるスイッチは"ON"とならず画素、またはサブ画素への印加電圧に変化は生じないため、XとYに少しのノイズが加わってもそれはその時選択されていた画素だけに影響して他の部分には影響しない。XとYが非選択状態になると蓄積コンデンサに蓄えられた電荷が電圧の印加を担ってゆっくりと減少してゆくために、次にXとYが選択されて電荷を加えられるまで時間が稼げる。このため比較的多数の画素、またはサブ画素を1つのXとYの配列内に持つことができる。

TFT等のアクティブ素子を用いる液晶パネルは、1990年代末頃から生産技術の発展とともに低価格化し、2000年代に入ると高品質の表示が必要なテレビ受像機やコンピュータ・モニタ、携帯電話の表示部として広く普及しており、STN型の単純マトリクスを使った液晶パネルは減少傾向にある[注 24]TFT画素の模式図(付加容量型)
1.ゲート電極線 2.ソース電極線 3.ゲート電極 4.ドレイン電極 5.絶縁膜 6.アモルファス・シリコン層 7.n+アモルファス・シリコン層 8.絶縁膜 9.蓄積電極(蓄積容量) 10.絶縁膜 11.表示電極 12.1つのサブセル


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