液化天然ガス
[Wikipedia|▼Menu]
しばらくは地上に留まった低温メタンガスも、温度が-131℃を超えると空気よりも軽くなり、空中へと上昇・拡散していく。

5%-15%の燃焼範囲は、他の可燃性ガスと比べれば比較的狭いため、爆発の危険性は低いと言える。気体のメタンが液体になると体積は約.mw-parser-output .frac{white-space:nowrap}.mw-parser-output .frac .num,.mw-parser-output .frac .den{font-size:80%;line-height:0;vertical-align:super}.mw-parser-output .frac .den{vertical-align:sub}.mw-parser-output .sr-only{border:0;clip:rect(0,0,0,0);height:1px;margin:-1px;overflow:hidden;padding:0;position:absolute;width:1px}1⁄600になるため、運搬には適している。

燃焼による発熱量は13,300kcal/kgで、炭化水素中では最大である。これは5,000-7,000の石炭や9,250の石油よりも大きい。メタンもLNGも共に人体への毒性はない[19]
分類

天然ガスの名称は、産出場所および精製方法によって変わる。

天然ガスの分類産出場所産出場所に対する呼称詳細説明
油田地帯「油田ガス」・「石油系天然ガス」・「湿性ガス」10-15m3のガスから1リットル程度のガソリンが採取できるため「湿性ガス」とも呼ばれ、幅広い組成を持つこのガスは中東などでは従来はすぐにガスフレアによって廃棄されていたものだが、現在はこれも液化によって回収されている。この湿性ガスはメタン成分が多ければ液化されて油田由来のLNGとなり、少ない時はLPGの原料となる石油ガスであり液化されてLPGとなる。このような天然ガス鉱床は油溶解性ガス鉱床と呼ばれる[21]
炭田地帯「炭田ガス」・「炭層ガス」
遊離型ガス鉱床「水溶性ガス」
ガス田「乾性ガス」メタンが85%-95%と主体を占めその他のエタン、プロパン、ブタンなどは比較的少ない。ガス田ガスは液化されてガス田由来のLNGとなる。このような天然ガス鉱床は遊離性ガス鉱床と呼ばれる[21]メタンハイドレート参照。
原油の精製プラントから生まれるガス「炭田ガス」・「炭層ガス」・「精製ガス」液化されてLPGとなる[19]

環境への影響「化石燃料#化石燃料の使用が引き起こす公害・環境問題」も参照

燃焼したときの二酸化炭素排出量は、カロリー当りで石油より少ない。ただし、主成分であるメタンの地球温暖化係数は「21」と大きいため、大気への放出は避ける必要がある。

ただしメタンは大気中の寿命が約12年(時定数)で排出量の63.2%は分解され、分解量を超過する分が濃度上昇に反映される。このため、排出削減をすれば大気濃度がすぐに減少する[22]
採ガス井

天然ガスを採掘するガス用の井戸を「採ガス井」と呼び、液体の原油を生産する「油井」「油生産井」「採油井」と区別される。採ガス井は一般に原油用の井戸に比べてクリスマスツリーなど、使用される機器類の耐圧が高く設計されているために、大きくなる傾向がある。これは、天然ガスの存在する地層が油田に比べて深く、また、液体と気体では地下の高圧力環境から地上にまで持ち上げられた時の圧力が大きく異なるためでもある[21]
生産工程
分離工程1
採ガス井で地表へと取り出されたものにはガス・油・水などが混ざっているため、まず、ガス原油セパレータに送られて、ガス、原油が分離される。ガス原油セパレータは単純に重さの違いによって分けるものである。
分離工程2
ガス原油セパレータで分離されなかった油分は、コンデンセート
[23][24]・セパレータで分離される。コンデンセートはLPGや石油化学の原料として扱われる。残った水は環境汚染物質を除いた後に多くが地下へ圧入される。ガス成分だけが次の工程に送られる。
脱湿処理工程
グリコール・デハイドレータで、ガス成分にグリコールを接触させて残った水の成分である湿気を除去する。
不純物除去工程
重質炭化水素、硫黄、硫化水素、二酸化炭素、水銀を除去する。硫化水素(H2S)や二酸化炭素(CO2)はアミン溶液を使って、水銀は活性炭によって除去される。ハイドレート[注 2]は配管を詰まらせる原因となり、硫化物は配管を含むあらゆる下流工程での処理装置を腐蝕させるため、硫化水素では4ppm以下、二酸化炭素では100ppm以下、水は1ppm以下にまで除去される。最終製品となった時の公害防止にも役立つ。ヘリウムが多く含まれる(0.4%以上程度の)ガスでは、この工程で分離される。産出されるガス成分や下流工程での要求性状の違いによって処理内容が変わってくる。
冷凍工程
LNGとして流通させる場合には-162℃以下に冷却して液化してから製品として出荷する。パイプラインによる出荷では、気体のままで製品化される[21]

2007年12月の世界の液化天然ガスの生産設備は15ヶ国に79トレインが稼動していて、総生産設備能力は年間18,930万トンであった。2006年に世界一のLNG輸出国となったカタールでは、1トレインで年間780万トンという巨大液化プラントを複数建設中である。



生産量

2006年の世界の天然ガス生産量は28,700億m3であった。

ロシア:6,120億m3

米国:5,240億m3

その他:17,340億m3

2006年の世界の天然ガス貿易量は7,480億m3であった。

パイプライン:5,370億m3

タンカー:2,110億m3
[21]

地下貯蔵

天然ガスは原油と異なり、地上で大量に貯蔵するには極低温状態のLNGとする他にはあまり良い方法が無く、LNGでは施設や冷却の維持などにコストがかかる。このため、多くの国では一度地上に取り出した天然ガスを別の地下ガス層へと再び圧入する事で地下に貯蔵する方法を採用している。欧米では600ヶ所以上存在し、日本でも数ヶ所が稼動している。地下貯蔵に使用されるガス層にはその上部がキャップロックと呼ばれる浸透性の無い緻密な地層で覆われていなければならない。冬季の需要期に備えて、夏季に貯蔵しておいたり、パイプラインの事故に備えるなどがその目的である[21]
埋蔵量

2016年末の世界の天然ガスの確認可採埋蔵量は約187兆立方メートルといわれており、地域別には中東が一番多く、ヨーロッパ及び旧ソ連、アジア太平洋地域などがそれに続く[25]。なお東京ガスは輸入する天然ガスの大半をマレーシアオーストラリアから輸入している。今後採鉱が盛んになることで、確認可採埋蔵量の増加が期待されている。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:102 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef