液体
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分子が引力を及ぼしあっている状態なので、体積は固体とさほど変わらず、気体のように圧力で大きく変化することはない。気体と異なり、複数の液体がすぐに混ざり合うわけではなく、容器内全体に広がることもなく、それ自身の表面(水面)を形成する。このような特性を応用して油圧(液圧)システムが生まれた。表面波

液体の量は一般に体積あるいは容積で計測される。単位としてはSI単位立方メートル (m3) やその分量単位である1立方デシメートル、すなわち1リットル (1 dm3 = 1 L = 0.001 m3)、立方センチメートル、すなわちミリリットル (1 cm3 = 1 mL = 0.001 L = 10?6 m3) などがある。

液体の体積は温度圧力によって決まる。一般に熱すると膨張し、冷却すると収縮する。ただし、0 °C から 4 °C の間のは例外である。

重力下では、液体は容器および液体内のあらゆるものに圧力をかける。この圧力は全ての方向に加わり、深くなるにつれて増加する。液体が一様な重力場にあるとき、深さ z における圧力 p は次のようになる。p = ρgz

ここで、

ρ は液体の密度(定数と仮定)

g は重力加速度

である。なお、この式では表面(水面)での圧力をゼロと仮定しており、表面張力の効果を無視している。

液体に沈められた物体には、浮力アルキメデスの原理)が働く。浮力は他の流体でも見られるが、密度の高い液体で最も強く働く。

液体の圧縮性は小さい。例えば、水の密度は圧力が100バールのオーダー(水面下 1 km の圧力)にならないと目に見える変化をしない。流体力学では液体を非圧縮性のものとして扱うことが多く、特に非圧縮性流体の研究ではそのように扱う。

液体表面(水面)は一種の弾性膜のように振る舞い、表面張力が見られ、が形成される。表面張力によって生じる現象としては他に毛細管現象濡れ表面張力波などがある。

せん断応力や延伸応力に対して液体が示す抵抗の度合いを粘度で表す。

液体は非混和性を示すことがある。混ぜることができない液体の組み合わせとしては油と水があり、サラダドレッシングで日常的に見かける。逆に混ぜることが可能な組み合わせとしては水とアルコールがある。混合した液体は蒸留によって分離することが可能な場合が多い。
相転移典型的な相図。緑の線は圧力による融点の変化を表す。青い線は圧力による沸点の変化を示す。赤い線は昇華の起きる温度と圧力の組み合わせを示している

沸点未満の温度では、どんな液相の物体も平衡状態になるまで蒸発する。平衡状態に達すると液体の蒸発と気体の凝縮が同じ速度で起きるようになる。したがって、蒸発した気体を継続的に取り去ると液体は最終的には全て蒸発してしまう。沸点に達すると液体はさらに急速に蒸発するようになる。沸点に達した液体は沸騰するのが普通だが、条件によっては過熱状態になる。

凝固点以下の温度では、液体は凝固し固体となる。蒸発と凝縮の場合とは異なり、常圧下では平衡状態にはならない。過冷却がおきない限り、液体は最終的には完全に固体となる。ただし常圧でない場合は必ずしもそうではなく、例えば水と氷を密閉された圧力容器に入れると、固相と液相が混在した平衡状態となることもある。
構造古典的な単原子分子の液体の構造。原子は多数の原子に囲まれているが、原子間の距離の秩序は存在しない

液体では、原子は結晶格子を形成しておらず、いかなる長距離秩序も存在しない。そのためX線回折中性子回折ブラッグピークが現れない。通常条件下では回折パターンは点対称になるが、これは液体の等方性を示している。中心から径方向に見てみると、回折強度は滑らかに振動している。これはプローブ(光子や中性子)の波長 λ とブラッグ角度 θ で与えられる波数 q = (4π/λ)sin θ の関数である静的構造因子 S(q) で説明される。S(q) の振動は液体の近傍の原子間の相関関係を表している。

それらの相関関係のより直観的な指標として動径分布関数 g(r) があり、これは基本的には S(q) のフーリエ変換である。これはある時点の液体内の二体相関の空間的平均を表している。g(r) はある中心点から距離 r までの球の体積内にある粒子数の平均から計算によって決定される。与えられた半径における原子の平均密度は次の式で表される。 g ( r ) = n ( r ) ρ 4 π r 2 Δ r {\displaystyle g(r)={\frac {n(r)}{\rho 4\pi r^{2}\Delta r}}}

ここで、n(r) は距離 r における幅 Δr に存在する原子の平均個数、ρ は平均原子密度である[11]

g(r) は、回折実験とコンピュータシミュレーションの比較手段となっている。原子間ペアポテンシャル関数と組み合わせて使い、乱雑系の内部エネルギー、ギブスの自由エネルギー、エントロピー、エンタルピーといったマクロな熱力学的パラメータを計算することもできる。レナード-ジョーンズのモデル流体の動径分布関数

g と r の対応を示した典型的なグラフには次のような重要な特徴がある。
距離が短い部分(r が小さい)では、g(r) = 0 である。つまり原子自体に大きさがあるため、ある程度以上に原子同士が近づくことができないことを示している。

ピークがいくつか現れるが、距離が離れるとピークも小さくなっていく。このピークは原子が互いに近接する原子に取り囲まれていることを示す。距離が離れると1に漸近していくが、これはその液体の平均密度に対応している。

距離が離れるに従ってピークが徐々に小さくなるのは、中心の粒子から見た秩序の減少を示している。これは、液体やガラスに見られる「短距離秩序」を表している。

単純液体の動径分布の実験的検証はX線散乱などの手法を用いる。構造的干渉は半径 r の範囲内のピークに限られる。したがって、X線の干渉の条件が満たされたときだけ振幅の減衰したピークが現れる。結果として結晶面に対応したX線回折パターンに似た明暗の帯が周期的に配された結果が得られる[12]
力学
弾性波

一般に液体と固体の基本的違いとして、固体がせん断応力に対して弾性的抵抗を示すのに対して、液体はそうではないという点が挙げられる。したがって液体の分子運動縦波フォノン)に分解でき、横波は非常に秩序立った結晶質の固体でのみ現れる。すなわち、単純液体はせん断応力という形で加えられた力に耐えることができず、力学的にそれに降伏し巨視的には塑性変形(粘性流)を起こす。さらに言えば、固体せん断応力に対して局所的に変形するだけで全体の形が保たれるのに対して、液体はナビエ-ストークス方程式で表される粘性流となって大きく変形・流動する。この点が固体と液体の力学的な違いとされている[13]

しかし連続性についての観測によれば、横波は必ずしも固体のみで伝わるわけではなく、液体でも伝わると結論付けられる。通常の液体での実験でこの結論が確認できないのは、現代の音響学光学の技法(超音波レーザー)で得られる振動周期に対して液体中での横波の減衰が極めて素早く起きるためである。そのような条件下では、液体での横波は急激に減衰する。

それらの結論の検証には、単原子分子の液体やガラス分子動力学法のコンピュータシミュレーションが使われ、短い波長では液体が横波を伝播できることが確認された。この粘弾性の振る舞いは波数が増加するにつれて液体の剛性が重要な要素になるという事実と結びついている[14][15][16][17][18][19][20]

高周波の横波と縦波の減衰機構は、粘性の液体や重合体やガラスを考慮していた[21]。その後、広範囲の時間的・空間的スケールで観測される構造緩和スペクトルを使って粘性液体のガラス転移を解釈する新たな成果が生まれた。動的光散乱法(または光子相関法)を使った実験では、10?11秒という短い時間における分子の動きを研究できる。これは、周波数の範囲を 109 Hz かそれ以上に拡張したのと等価である[22][23]

したがって、横音響フォノン(横波)と硬化あるいはガラス化の開始には密接な関係があることがわかる。硬化が観測される波長の増大を考慮すると、その現象の周波数への依存性が明らかになる。

液体の熱運動を弾性波重ね合わせで表すという方法は Brillouin が最初に導入した。


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