液体水素
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

JAXAなどが研究を進めるマッハ5クラスの超音速輸送機に搭載するためのエンジンとして、液体水素を燃料とするターボジェットエンジンに高温となった空気を燃料の液体水素で冷却する機構を追加した『予冷ターボジェットエンジン(Precooled jet engine)』の研究が行われている[1][2]

前述のとおり極めて大きな燃料タンクが必要となるほか、飛行中の蒸発、極低温燃料の取り扱い、燃料供給体制の構築など解決すべき課題は多い。
水素燃料の課題
原料
現在大量生産される水素の原料は
天然ガス及び石油である。現状では水素は化石燃料が形を変えたものである。水からの製造にはアルミニウム同様安価で大量の電力が必要である。
製造
水素はもっとも軽い元素であり、地上において水素単体の形ではほとんど存在していない。このため、エネルギー資源として水素を直接採取・利用することはできず、必要な量はすべて水素化合物からエネルギーを使って取り出さなければならない。最も身近な水素化合物は水である。水を電気分解することで技術的には容易に水素が得られるが、電気分解に消費される電気エネルギーは得られた水素を反応させて再び得られる電気エネルギーより大きいために差し引きでは損となる。エタノールや石油精製品から水素を取り出す方法もあるが、その手間とコストを考えれば、そのままエタノールや石油精製品を燃料として使用するほうが経済的である。いまのところ水素は天然ガスと水より触媒を介する水蒸気改質で作り出されている。
保管
水素原子や水素分子は非常に小さいことから、金属の内部に浸透して劣化させる水素脆化を引き起こす。そのためステンレスなどの一般的な金属容器では長期保管が困難である。そこで、水素脆化が起きない材料、水素を吸蔵する水素吸蔵合金、高圧水素用のCFRPボンベ、冷却して液化水素として運搬・保管する方法などに関する研究開発が進んでいる。
可燃性
水素そのものは酸素がなければ燃焼しないため、純度の高い単体の状態では発火しにくいが、酸素との混合気体では容易に発火する。そのため、可燃性という観点ではガソリンと同様に危険である。燃料を改質して生成した水素を利用する場合、その燃料に関しても十分な安全対策が必要とされる。
流通
製造・流通・消費の各ステージでまったく新たな設備が必要とされる。水素燃料対応の自動車への燃料供給のため、2023年6月時点では、日本全国で170箇所の水素ステーションが運用されている[3]。これらの水素ステーションには、ガス燃料から水素ステーション内で水素を製造する方式と、製油所や化学工場等で製造された水素を輸送して水素ステーションで供給する方式の2種類がある[4]
オルト水素とパラ水素

水素分子は、それぞれの原子核プロトン)の核スピンの配向により、オルト(ortho)とパラ(para)の2種類の異性体が存在する[5]

常温以上では、オルト水素とパラ水素の存在比はおよそ3:1であるが、低温になるほどパラ水素の存在比が増し、絶対零度付近ではほぼ100パーセントパラ水素となる[5][6]。オルト水素からパラ水素への変化は523kJ/kgの発熱反応であり、蒸発潜熱446kJ/kgより多い。[7]また反応には数日かかるため、数日保管しておくと反応熱で液化水素が気化してしまう。これを水素のボイル・オフ問題という。[8]これを防止するには触媒を用いて発熱反応を済ませておくと良い。オルト‐パラ変換を起こす触媒は、活性炭や鉄などの金属の一部、常磁性物質またはイオンなどがある[5]

パラ水素をオルト水素に戻すには、1週間近く常温で放置するか、触媒を用いるか、800℃ 近くに加熱するとよい。[9]
脚注^津江・中谷研究室研究紹介予冷ターボジェットエンジン
^ 極超音速旅客機技術 。航空新分野創造プログラム(Sky Frontier) 。JAXA航空技術部門
^ 水素ステーション一覧|トヨタ自動車WEBサイト
^次世代自動車振興センター 水素ステーション整備状況
^ a b c Lee 1982, pp. 119?123, 3. 元素の一般的性質: 水素.
^ “オルト水素、パラ水素とは?液化水素プラントの設計で知っておくべき物性について”. yuruyuru-plantengineer.com. 2023年2月28日閲覧。
^ “用語解説 パラ水素とオルソ水素”. rdreview.jaea.go.jp. 2023年2月28日閲覧。
^ “〈研究例紹介〉液化水素用水素分子核スピン転換触媒の開発”. 北海道大学大学院工学研究院附属エネルギーマテリアル融合領域研究センター マルチスケール機能集積研究室. 2020年6月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年6月10日閲覧。
^ “オルソ水素とパラ水素”. 川口液化ケミカル株式会社. 2023年2月28日閲覧。

出典.mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:19 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef