消防団員
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消防団活動は奉仕活動としての性格を有するゆえに、その対価は給与・俸給ではなく報酬[3]として支払われ、活動時に日額単位で一定金額の手当が与えられる(令和4年度の国の基準では団員の階級にある者に対し、年額報酬36500円、非常出動手当8000円、訓練手当4000円[4])。個々の消防団員に報酬が支払われない消防団も存在する。その金額はあくまで心づけとして通常は小額に留まるものであり、ある消防団では退職金を含めて年間2万数千円ほどである。予算の関係上、どれだけ活動参加しても一定回数の上限を超えた場合は無報酬で行うこともある。副業にはあたらない分、活動報酬はアルバイトの対価とは大きな差が生じる。また、実質的にほぼ消防団員としての年間報酬のうち、ほぼ同額が消防団運営費及び研修旅行費として納めさせる地域・分団もあり、一旦受領した報酬は団運営費として納めるという形が多い[5]。2014年には、報酬分の地方交付税交付金を総務省から受領しながら団員に支払わず経費に流用している疑いのある団が多数あることが判明し、問題視した消防庁は未払いの団についてその名前を公表することを決めた[4]

団員には体力が求められるというイメージがあるが、屈強な肉体を持つ必要はない。あくまで地域住民としての活動の一環であり、体躯及び運動神経の優劣を問わず、個々人の能力に応じた活動をすれば十分とされている。

公務中に死傷したり、公務が原因で病症が出た場合は公務災害として一定の補償を受けることができる。活動に正当な理由なく参加しない頻度があまりに高い場合は、いわゆる「幽霊団員」として諭旨退職とするか、罷免するケースもままある。ただし、近年はサラリーマン団員も増加しており、その基準は緩い。正当な理由があり、事前に連絡をとることが可能な団員は出席率に関わらず優良団員として認識されるのが通常といえる。

消防団によっては条例や規約で定年を設けるところもあるが若年層の充足具合や地域コミュニティーの統率力、仕来りが団員勧誘に大きく影響しており、定年の年齢設定は30代?70代と地域差が大きい。過去に定年を定めていても、団員不足のために定年制を廃止する消防団もある[6]。  
消防団員に対する教育

消防団員の教育には、初任研修をはじめとして、日常の訓練など様々な教育の機会がある。以下の講習・研修の一覧はその主な例である。

消防団員に対する研修・講習会[7]区分研修・講習会名養成目的実施時間対象者
資格取得講習応急手当指導員講習応急手当に関する指導技術の向上及び地域住民の応急手当に対する知識・技術の普及を図るため16時間未取得の団員
資格取得講習応急手当普及員講習応急手当に関する指導技術の向上及び地域住民の応急手当に対する知識・技術の普及を図るため24時間未取得の団員
資格取得講習2級小型船舶操縦士講習震災・水災時・異常出水が発生した場合の救助活動・可搬ポンプ積載による消防活動を消防署隊(救命ボート)との連携により実施するため4日部長以下で免許のない団員
資格取得講習可搬ポンプ整備資格者特例講習可搬ポンプらの点検、整備に必要な知識及び技術の習得を図り、自己消防団員に対する整備技術の指導を実施するため1日可搬ポンプ整備経験が3年以上で未取得の団員
外部機関研修消防大学校団長科研修総務省消防庁消防大学校の総合教育の中で消防団の上級幹部として必要な知識及び技術を総合的に習得させ、資質の向上を図るため7日未受講の団長または副団長
外部機関研修日本消防協会消防団幹部特別研修消防団の災害対応能力の向上と活性化を図るため、消防団幹部に対し特別研修を行い、消防団の指導者を養成するため7日未受講の団長または副団長
外部機関研修日本消防協会消防団幹部候補中央特別研修消防団の幹部候補として期待される若い団員を対象に、将来の消防団幹部を養成するため3日30歳以下の主に拝命5年以下の団員
外部機関研修国土交通省関東地方整備局主催水防技術講習水防団員が出水時における水防活動を円滑に実施するため、水防団員の水防技術の指導を実施するため2日水防の任務を兼ねる消防団(東京消防庁管内の消防団)における未受講の分団長
消防学校研修上級幹部研修消防団組織における上級幹部として必要な見識と管理・監督能力の習得を図るため4時間団長及び副団長
消防学校研修指揮幹部研修消防団組織における中級幹部として必要な知識及び部下指導・指揮能力の習得を図るため2日未受講の分団長及び副分団長、部長
消防学校研修初級幹部研修消防団組織における初級幹部として必要な知識及び部下指導・指揮能力の習得を図るため7時間班長
消防学校研修機関科研修緊急自動車運転及び機関運用を行う際に必要な知識・技術の習得を図るため7時間未受講の団員(機関員)
消防学校研修警防科研修消火、救助及び震災時における消防活動を行う際に必要な知識・技術の習得を図るため7時間未受講の部長

上記に見るとおり、消防団員には応急手当普及員2級小型船舶操縦士可搬消防ポンプ等整備資格者などの資格取得に向けた講習が設置されている。なお、東京都区部の事例では中級幹部研修の修了者には指導員章が、応急手当普及員講習の修了者には応急手当普及員章が交付される[8]
消防団員に対する特例措置

さらに、消防団員はその職務の性質上、消防防災に関して高い専門性を有するので、消防防災関連資格の取得において、必要な試験の受検及び講習の受講要件の全部または一部の免除を受けることができる。

例えば、危険物取扱者及び消防設備士の資格取得には所定の試験科目を受験することになるが、消防団員として5年以上勤務し、かつ、都道府県消防学校において一定の教育(普通教育又は専科教育の警防科)を修了した者は、消防団長の証明を受けることにより、一部の試験科目の受験を免除されることを得る。

また、防火管理者および防災管理者の資格取得には防火管理者資格講習の受講が必要であるが、消防団員として指導監督する職にある者(班長以上の階級に適用)に三年以上勤務する者は消防団長の証明を受けることで自動的に資格を取得することができると同時に自衛消防業務講習修了等有資格者としてみなされる。

さらに、消防団員となり8年以上勤務した者は、防火対象物点検資格者講習の受講資格が得られる。
消防団員に対する表彰制度

栄典




叙位[9]

消防団員への叙位は下記の条件による。

@消防歴が30年以上の者であり、かつ、いずれかの条件を満たす者。

ア 日本消防協会の会長、副会長、あるいは都道府県消防協会の会長の職を10年以上、歴任した者

イ 大規模の消防団(500人以上)の団長の職に10年以上在籍し、かつ、日本消防協会の会長、役員、評議員、または都道府県消防協会の役員を10年以上歴任した者 

ウ 消防団長の職に20年以上在職し、かつ、消防歴30年以上の者

エ 消防団長の職に10年以上20年未満在職した者にあっては、副団長の在職年数の2分の1を加算して得た年数が20年以上で、かつ消防歴が40年以上の者





叙勲[10]

消防団員の叙勲は下記の条件による。

春秋叙勲




叙勲候補者





ア 70歳以上

イ 55歳以上の者で次の条件に該当する者

(ア)精神的または肉体的に著しく労苦の多い環境において業務に精励した者

(イ)人目につきにくい分野にあって多年にわたり業務に精励した者






選考基準





T類 

団長の階級に10年以上在職し、かつ、団長の在職年月数に副団長以下の在職年月数を加算した年月数が15年以上の者であることなお、市町村合併に伴い、合併前に団長の職にあり、本人の責によらず副団長に降格となった者について、団長歴が5年以上の場合、合併後副団長歴を団長歴に加算することができる。





U類

次に掲げる条件を満たすこと

(ア)団長の階級の在職年数が10年未満の者又は副団長の階級の在職年数が10年以上の者  消防歴30年以上

(イ)副団長の階級の在職期間が10年未満の者又は分団長若しくは副分団長の階級にあった者  消防歴35年以上

(ウ)部長の階級に40年以上あった者(但し、特別な功績のある者に限る)  消防歴40年



死亡叙勲




団長の職に10年以上在職した者若しくは副団長の在職年数が10年未満の者にあっては、消防歴を通算して40年以上の者

副団長の在職年数が10年以上の者又は団長の在職年数が10年未満の者にあっては消防歴を通算して30年以上の者

分団長又は副分団長の者若しくは副団長の在職年数が10年未満の者については、消防歴を通算して40年以上の者

以上、死亡の日から2週間以内に上申すること。

緊急叙勲




風水害、地震災害、その他非常災害に際し、身命の危険を冒して、人命を救助し、被害を最小限度に防除する等消防任務遂行中顕著な功労を挙げた者で、殉職者を中心に消防団員、消防吏員及び消防協力者に授与される。なお、事案発生の都度、早急に報告すること。



褒章[11]




藍綬褒章 多年消防業務に従事し、その功労が顕著な55歳以上の現職消防団員が対象

黄綬褒章 消防関係業務に精励し衆民の模範である者が対象

紺綬褒章 消防関係団体に一定の金額(個人500万円)以上の寄附を行った者

紅綬褒章 火災等に際し、身を挺して人命救助に尽力した者を対象



表彰




内閣総理大臣表彰[12]

国民安全の日に、閣議了解に基づき、安全功労者表彰と防災功労者表彰が行われ表彰状と記念品が授与される。



安全功労者表彰 火災等、主として人為的災害から国民の生命、身体、財産の安全に確保に関して、国民の安全に対する運動の組織及び運営に顕著な成績を挙げ、または功績のあった者





防災功労者表彰 風水害、地震裸等の自然現象による防災活動について顕著な功績があった者や防災技術の研究開発など防災思想の普及又は防災体制の整備に顕著な功績があった者





総務大臣表彰 

総務大臣表彰要領に基づき、広く地域消防のリーダーとして地域社会の安全確保、防災思想の普及、消防施設の整備その他の災害防御に関する対策の実施に尽力し、功績顕著な者[13] 



消防庁長官表彰

総務省消防庁消防表彰規程に基づく[13] 





消防庁長官退職消防団員報償第1号(銀杯及び賞状)対象者 勤続25年以上 (根拠 退職消防団員報償規程 昭和三十六年八月一日消防庁告示第三号)

消防庁長官退職消防団員報償第2号(銀杯及び賞状)対象者 勤続15年以上25年未満[14] 

定例表彰 - 消防庁長官表彰功労章消防庁長官表彰永年勤続功労章・安全功労者表彰・防災功労者表彰・救急功労者表彰


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