海辺のエトランゼ_(映画)
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紀伊カンナによる漫画『海辺のエトランゼ』は2013年に発表され、2014年からは続編である『春風のエトランゼ』の連載が始まった[8]。2016年にはドラマCDがリリースされた[9]。『海辺のエトランゼ』のアニメ映画化は2019年10月に、フジテレビのBLアニメレーベルであるBLUE LYNXの3作目として発表された[10]。BLUE LYNXの発起人でありフジテレビのプロデューサーである岡安由夏によると、本作の映画化は松竹が中心となって進めており、松竹からフジテレビに映画化の企画が提案されたという[11]。テレビアニメではなく映画とした理由について岡安は、『海辺のエトランゼ』は物語が映画に合っており、テレビアニメで話を分割するよりも映画館で集中して見る方がよいと考えたという[11]

映画化にあたって、元アニメーターである紀伊はかつての同僚であった大橋明代を監督として指名した[12]。大橋を指名した理由について紀伊は、一緒に働いていた際の大橋の仕事ぶりが丁寧で真摯に作品に向き合っており、大橋となら面白く作れそうだと考えたという[12]。また、紀伊自身も監修とキャラクターデザインを務めた[8]
脚本

脚本は監督である大橋明代が務めた[13]。本作のストーリーは基本的には原作通りにすることが決まっていた[14]。ただし大橋によると、原作がもともと読み切りだったことから1話で物語が一度終わった雰囲気になっていたため、脚本を制作するにあたっては駿と実央の感情の流れをスムーズに描くことができるよう、続編である『春風のエトランゼ』で描かれた回想エピソードも含めて、要素を足し引きする作業を行った[13]。例えば大橋は、原作の2話にあたる部分を読み切り部分と連載部分の橋渡しを行う役割になると考え、原作の内容を逆算するかたちで組み立て直した[15]。その際には原作の読者が本作を鑑賞した時と原作を読んだ時とで同じ印象を抱くよう、原作の雰囲気を壊さないように注意したという[15]

また、大橋は、本作では傍から見たら大変なことが起きているわけではない何気ないやり取りの中でキャラクターの感情の機微が描かれていると語り、日常シーンを丁寧に描くことを心掛けた[13][16]。大橋は脚本が出来次第、原作者である紀伊カンナに提出して確認を取り[17]、迷ったところがあればその都度大橋に連絡した[15]。その際には紀伊は漫画のネームのようなかたちでアイデアを共有したという[14]
演出

監督である大橋は、本作ではアニメーションならではの表現があまりとられず、結果として実写映画に近くなったと述べている[17]。また、言葉で説明するよりも雰囲気や画面の切り取り方といった画面全体で物語を感じとられることを目指したと語っており、モノローグも多用しなかった[17]。物語の後半で描かれるセックスのシーンも、「詩的になり、キラキラし始める」のではなく、2人のやり取りや緊張感、初々しさを描くことで「普通」に見せたかったという[15]
キャラクターデザイン・美術

キャラクターデザインは原作者である紀伊カンナが務めた[8]。キャラクターデザインにあたっては、線が細く繊細なデザインにするのではなく、セル画アニメのような素朴なデザインとすることを紀伊と大橋で確認した[13]。紀伊によると、細かくしすぎても作画が大変になり、簡素にしすぎても間が抜けたデザインになるため、バランスを意識したという[14]

監督である大橋によると、本作の背景美術は紀伊カンナの絵に寄せたイラストらしさを出すようにしたという[17]。原作者である紀伊も背景美術の方向性の確認を取った[14]。本作は秋と冬の沖縄が主な舞台となっている一方でインターネットには夏の沖縄の写真が多かったため、大橋は美術監督である空閑由美子やプロデューサーと共に秋と冬の海の色を見るため沖縄に赴いた[13]。このほか、猫を違和感なく表現するために猫専門の作画監督が設けられた[17]


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