海綿動物
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このため、海綿動物門および平板動物門(同様に組織の分化が見られない)は側生動物 Parazoa として、器官系が分化したその他の動物である真正後生動物 Eumetazoa とは区別されている。襟細胞が襟に囲まれた鞭毛をもつことから、単細胞生物襟鞭毛虫(えりべんもうちゅう)と海綿動物との類似性が古くから指摘されてきた。このことから、以前は海綿動物は襟鞭毛虫の群体から派生したもので、多細胞動物とは系統が異なるものではないかとも言われたこともある。しかし、海綿動物にはホメオボックス遺伝子、TGB-β遺伝子など、多細胞生物としての分化、発生に関わる遺伝子群が既に存在していることが明らかになってきており、他の多細胞動物との差はそう大きなものではないとの証拠も挙がっている。
後生動物との系統関係

先述のように、従来はこの群が他の後生動物とは別の系統に属するとの説があった。しかし分子系統学等の情報から、多細胞動物は襟鞭毛虫の群体が起源であると考えられるようになり、海綿動物は最も原始的な多細胞動物であるという説があらためて提示されている。したがって、動物は総て祖先を共有する単系統群であると考えられている。

しかし、最古の多細胞動物の化石であるエディアカラ生物群からは刺胞動物によく似た生物が見つかっていることから、 刺胞動物の幼生に類似した単細胞生物の繊毛虫のようなものが多細胞動物の起源であるという考えも残っている(繊毛虫類起源説、ciliate theory)。

いずれにせよ、多細胞動物としては破格に組織器官が単純であり、その進化のごく初期に分化した原始的なものであるとの定見がある。しかし、海の底生生物としては非常に成功している動物群でもある[3]
分類
石灰海綿綱 Calcarea
骨格の主成分は炭酸カルシウムで、総て海産の海綿動物である。

カルキネア亜綱 Calcinea

ロイケッタ目 Leucettida

クラトリナ目 Clathorinida - クラトリナカイメン


カルカロネア亜綱 Calcaronea

アミカイメン目 Leucosolenida - カゴアミカイメン

ツボカイメン目 Syncettida - ケツボカイメン


ファレトロニダ亜綱 Pharetronida

ペトロビオナ目 Inozoa

ソラシア目 Sophinctizoa


普通海綿綱 Demospongiae
現生する海綿の95%がこの綱に属している。骨格はかなり柔軟性のある海綿質繊維の「スポンジン」で構成されている。スポンジンの主成分は、他の総ての動物がもつ細胞外マトリックスであるコラーゲンの祖先物質である。

同骨海綿亜綱 Homosclromorpha

同骨海綿目 Homoscleromorhida - ノリカイメン


四放海綿亜綱 Tetrectinomorpha

有星海綿目 Choristida - アツカワカイメン

螺旋海綿目 Spirophorida - グミカイメン、トウナスカイメン

イシカイメン目 Lithistida - Theonella cylindrica

硬海綿目 Hadromerida - パンカイメン・ユズダマカイメン

中軸海綿目 Axinelida - ツノマタカイメン


角質海綿亜綱 Ceractinomorpha

網角海綿目 Dictyoceratida - モクヨクカイメン

樹状角質海綿目 Dendroceratida

単骨海綿目 Haplosclerida - ムラサキカイメン、ザラカイメン、ワタトリカイメン

イワカイメン目 Petrosida - Petrosia ficiformis

多骨海綿目 Poecilosclerida

磯海綿目 Halichondrida - ダイダイイソカイメン、クロイソカイメン


六放海綿綱 Hexactinellida
ガラス海綿ともよばれ、六放射星状のケイ酸質の骨片を主とする骨格を持つ。深海の砂地などに生息している。

両盤亜綱 Amphidiscophora

両盤目 Amphidiscosa


六放星亜綱 Hexasteriphora

六放目 Dictynia

カイロウドウケツ目 Lyssacina - カイロウドウケツ

アウロキスチス目 Lycniscosa


硬骨海綿綱 Sclerospongiae
炭酸カルシウムの骨格の周囲をケイ酸質の骨片と海綿組織が取巻いている。多くが化石種である。

アストロスクレラ目 Astrosclerida

ケラトポレラ目 Ceratoporellida

床板海綿目 Tabulospongida

人間との関わりスポンジ

普通海綿綱に属する6種の海綿は海綿質繊維だけからなり硬い骨片を持たないため、スポンジとして化粧用や沐浴用に用いられる。地中海産、紅海産の海綿が柔らかく、品質が高いとされる。海底で捕獲した海綿の組織を腐敗させ洗い流して残った骨格が、スポンジとして店頭で見られる海綿となる。日本では、ガラス海綿の一種であるカイロウドウケツなどがその姿の面白さから飾りなどに使われた。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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