海洋法に関する国際連合条約
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第2部「領海及び接続水域」(第2条?第33条)では、内水[9]領海[10]領海基線[11]、領海の無害通航権[12]接続水域[13]に関する規定がおかれている。第2部によると、内水とは陸地側から見て領海基線より内側のすべての海域であって群島水域(「群島国」を参照。)を除くものであり(第8条第1項、第9条)、河川内海もこれに該当する[9]。自国の内水に対して国家は領土と同程度に排他的な権利を行使することができる(第8条第2項)[9]。内水の外縁となる領海基線から外側に12カイリまでの水域を沿岸国は領海として設定できることとされ(第3条)[10]、内水の場合と違い領海においては、沿岸国は他国に対して無害通航権を認めなければならない(第17条、第19条第1項)[9][12]。接続水域に関する規定(第33条)は、「通関上、財政上、出入国管理上又は衛生上の規則」への違反を防止するために沿岸国が規制権を行使できる[注 1]とした領海条約第24条を引き継いだものであるが[14]、領海条約では接続水域は領海基線から12カイリまでとされていたのに対し、国連海洋法条約においては領海の範囲が12カイリまで拡大されたことに伴い、接続水域を24カイリにまで拡張できることとされた[13]
国際航行に使用されている海峡ギリシャ領のコルフ島アルバニア本土に挟まれたコルフ海峡

第3部(第34条?第45条)では「国際航行に使用されている海峡」として国際海峡に関する制度を規律する[15]。本部ではこれに該当する水域としてまず「公海又は排他的経済水域の一部分と公海又は排他的経済水域の他の部分との間にある国際航行に使用されている海峡」(第37条)を挙げ、この水域を航行する船舶は、その水域が他の国の領海内であったとしても通過通航権を享受することができる(第38条)[15]。この通過通航権は沿岸国にとっての無害性が条件とされていないという点で、領海における無害通航権よりも船舶の旗国(英語版)にとって強力な権利と言える[15][16]。同部ではさらに「公海又は一の国の排他的経済水域の一部と他の国の領海との間にある海峡」を挙げ、ここにおいては沿岸国は他国船舶の無害通航権を認めなければならない(第45条第1項)[15]。ただしこの無害通航権は、沿岸国が航行を「停止してはならない」(第45条第2項)とされるなど領海における無害通航権と異なる点があるため、「強化された無害通航権」とも呼ばれる[15]
群島国濃い青で示した海域がフィリピンの群島水域。

第4部(第46条?第54条)に規定されるのは「群島国」である[17]群島国とは島の集団で構成される国家のことで、それらの島々が地理的、経済的、政治的、歴史的に周囲の水域と密接な関連をもつもののことであり、こうした水域のことを群島水域という(第46条)[17][18]。群島国は群島の最も外側の島々を結ぶ線を群島基線として設定することができ(第47条)、群島国の場合には領海、接続水域、排他的経済水域、大陸棚を設定することのできる幅をこの群島基線から算出する[11][17][18]。この群島基線より内側の海域であって、内水を除くものが群島水域とされる[17][18]。この群島水域は領海とほぼ同様の性質をもち、群島国の主権が群島水域とその地下およびその上空に及ぶが、領海の場合と同じように群島国は他国の無害通航権を受忍しなければならず、これに加えて他国船舶、航空機の群島航路帯通航権も受忍しなければならない(第51条?第53条)[17]。群島国の群島国たる条件は、基線の内側の水域と陸地の面積の比が、1対1から1対9の間であり(国連海洋法条約第47条1項)、ひとつ直線基線の長さが100カイリを超えず、ただし基線の総数の3パーセントまでは最長125カイリまで(同条約第47条2項)である[19]。例えばインドネシアフィリピンなどが、これに当てはまる[17][18]
排他的経済水域ポルトガルの海域。  の海底は同国の大陸棚でその上部水域は同国の排他的経済水域。  の海底は同国の大陸棚でその上部水域は公海。濃い青で示した部分が排他的経済水域ではない海。

第5部(第55条?第75条)は「排他的経済水域」である[20]排他的経済水域の制度は本条約によって新たに創設されたものであり[21]、沿岸国は自国の領海に接続する水域で、領海基線から200カイリまでの水域を排他的経済水域として宣言することができる(第55条、第57条)[20][22]。排他的経済水域において沿岸国は、「海底の上部水域並びに海底及びその下の天然資源の探査、開発、保存及び管理のために主権的権利」と「排他的経済水域における経済的な目的で行われる探査及び開発のためのその他の活動に関する主権的権利」を有する(第56条第1項)[23][20]。ここで言う主権的権利とは、国家である以上主権に付随して認められる権利のことであるが、主権そのものとは異なる[24]。つまり、排他的経済水域に対して国家が有する主権的権利とは、天然資源の探査、開発、保存、管理などといった経済的目的にのみ限定された権利のことであり(第56条)、領域主権ほど排他的な権利ではない[24]。そのため排他的経済水域における沿岸国の「排他性」は、その名称にもかかわらず極めて制限されたものとも言える[25]


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