海洋循環
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オイラー法は流速計をある場所に固定して流れを測るもので、流れの強さはプロペラの回転数やトルク、板・にかかる水圧ワイヤーを張った時の抵抗による傾き、ドップラー効果による音速変化などを利用して測る。
ラグランジュ法

ラグランジュ法は物体を浮かべて海水の移動を追跡する方法で、船自体の流され方から流速や流向を知ったり、海流瓶を流す方法(中に手紙を入れ、そのを拾い上げた人に日時と位置を書いて送ってもらうよう依頼する。日本での最も大規模なものは和田雄治1913年から1917年の13357本。和田雄治を参照。)などは昔から行われてきた。現在では漂流ブイに発信装置を付け、電気信号を追跡する手法が多く採られる(ARGO計画参照)。ブイの密度を調整すれば海の表層だけでなくある程度の深さの流れのようすも追跡することができる。
海流計

船舶に搭載されるものとしては、電磁海流計 (GEK、geomagnetic electro-kinetograph) と呼ばれる地磁気電磁誘導の法則を利用した海流計がある。1950年にアメリカで開発された。現在の海洋観測では超音波式多層流速計(ADCP)などにより現場で簡単に観測されている。
間接測流

間接法とは、計算などによって間接的に流速を求める方法である。古典的なものとして、航行する船舶で、航行の際の偏位から海流を測ることがある。ある地点から一定時間航行し、計算上の現在地と天測航法電波航法によって求められた実際の現在地との差から海流の影響を求めるのである。そのほかにも水温や塩分を測定し密度分布を求めて上述の地衡流の関係から流速を推算する方法がある。これを力学計算といい、便利なので多用されるが、地衡流の釣合いが成立していないと思われる浅い海や赤道直下では使えない。
海流の影響
気候への影響

海流、とくに大きな暖流は海上の気候に影響を及ぼし、したがって陸上に住む動植物の生活にも大きな影響を及ぼす。もともと、海水空気に比べて比熱が四倍近くあるので、水温の変化は気温を変化させやすい。たとえば北、西ヨーロッパの冬の気温が世界の同じ緯度の平均気温よりも高くなっているが、その一因として北大西洋海流の存在がよく知られている。
日本

日本南岸は夏に非常に湿度が高くなるが、これは南東から吹く風が、温かい黒潮上を通過してくるときに、水蒸気を大量に取り込むことが原因である。一方、冬は季節風の北西風が吹くので、黒潮の暖気によりそれほど気温が上がるわけではないが、山脈により雪雲を遮断するため、関東以西の太平洋側地域では晴天が多く比較的温暖な地域が多い。他方、日本海には黒潮の分流である暖流の対馬海流が流れ込んでいるが、大陸から吹き出す寒気がこの暖流の上を渡るときに雲が形成され、冬季の豪雪と年間を通じての気温低下、日照時間の減少が見られる(日本海側気候)。また北海道東北地方の太平洋側では、夏に寒流である親潮の上を吹き渡ってくるやませの影響で、冷害が発生することがある。
漁業への影響

回遊魚は海流とともに泳いでくるので、三陸沖のように黒潮と親潮が接するところは南方系、北方系の両方のが取れ、きわめてよい漁場となっている。このように世界の主な漁場はたいてい暖流と寒流の潮境や、沿岸水と外洋水のさかいを中心に発達している。またプランクトンは海流によって種類が異なるばかりでなく、その量も著しく異なっている。プランクトンは海流によって押し出されるので、海流は魚類の分布や移動などにも大きな関係を持つ。また、世界的大漁場である南米ペルー沖では、エルニーニョのときはその海域の漁獲量が大きく減ることがわかっている。
航行への影響

流れが速い海流は、船舶の航行にも影響する。昔の帆船時代には海流に対する知識が風の利用法とともに、航海術の重要な部分を占めていたが、現在のように機械力を利用する高速船の時代になっても、海流を利用するとしないとでは経済的効果に大きな差異が出てくる。現在でも、たとえば東京沖縄の間の客船は東京から黒潮の流れに逆らって行き、流れに乗って帰ってくるので、20ノットがでる船でも行きと帰りでは数時間の差が出ることがある。
主な海流

名称流域暖流・寒流
黒潮(日本海流)北西太平洋、日本南岸暖流
対馬海流北西太平洋、東シナ海から日本海南部
北太平洋海流北太平洋、日本東岸からミッドウェー諸島近海
北赤道海流(太平洋)北太平洋、メキシコ西岸からフィリピン東岸
北赤道海流(大西洋)北大西洋、ベルデ岬諸島近海から小アンティル諸島近海
北赤道反流北西太平洋、日本南岸からフィリピン沖
赤道反流(太平洋)太平洋赤道域
赤道反流(インド洋)インド洋赤道域、タンザニア東方沖からインドネシア西岸
南赤道海流(太平洋)太平洋赤道域
南赤道海流(大西洋)大西洋赤道域、ブラジル沖
南赤道反流南西太平洋、パプアニューギニア・ソロモン諸島東方沖
アラスカ海流北太平洋、アラスカ南岸
東オーストラリア海流南西太平洋、オーストラリア東岸からニュージーランド
モンスーン海流(季節風海流)インド洋赤道域、インド近海
モザンビーク海流南インド洋、モザンビーク東岸
アガラス海流南インド洋、南アフリカ東岸
メキシコ湾流北大西洋、メキシコ湾からアメリカ東岸
北大西洋海流北大西洋、アメリカ東方沖からヨーロッパ西岸
ギニア海流(ギニア湾流)大西洋赤道域、ギニア湾岸
ギアナ海流大西洋赤道域、南米大陸北岸
親潮(千島海流)北太平洋、カムチャツカ半島沿岸から日本東岸寒流
アリューシャン海流北太平洋、アリューシャン列島近海
リマン海流北西太平洋、オホーツク海西部から日本海北部
ペルー海流(フンボルト海流)南東太平洋、ペルー沖
南極環流南極海全域
カナリア海流北大西洋、スペイン西方沖からカナリア諸島近海
ラブラドル海流北大西洋、ラブラドル半島東岸
東グリーンランド海流北大西洋、グリーンランド東岸
西グリーンランド海流北大西洋、グリーンランド西岸
西オーストラリア海流南インド洋、オーストラリア西岸
ベンゲラ海流南大西洋、南アフリカ西岸からギニア湾
カリフォルニア海流北東太平洋、カナダ西洋沖からカリフォルニア沖

主な海洋循環海洋循環
表層循環

海洋表層部では、緯度ごとにいくつかの海流のまとまり(環流)が見られる。北半球の極付近など、地形の影響で地域によってはまとまりが見られないところもあるほか、湾などでは小規模な循環が見られる。基本的には、北半球の亜熱帯循環、南半球の熱帯循環、南半球の寒帯循環は時計回りで、北半球の亜寒帯循環、北半球の熱帯循環、南半球の亜熱帯循環は反時計回りに循環する。これらの大規模な循環に共通に見られるのが、大陸西岸海域において、低緯度から高緯度へ向かう流れが狭い地域に集中して流量・速度が増す「西岸強化」という現象と、大陸東岸地域で相対的にゆっくりとした流れとなる現象である。

地域名称属する海流
北半球高緯度亜寒帯循環太平洋:アラスカ海流アリューシャン海流親潮北太平洋海流
大西洋:北大西洋海流東グリーンランド海流ラブラドル海流
低中緯度亜熱帯循環太平洋:黒潮北太平洋海流カリフォルニア海流北赤道海流
大西洋:アンティル海流メキシコ湾流カナリア海流北赤道海流
赤道付近熱帯循環太平洋:北赤道海流赤道反流
インド洋:モンスーン海流、ソマリ海流、赤道反流
南半球赤道付近熱帯循環太平洋:南赤道海流赤道反流


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