艦砲等の対艦兵器が発達していなかった時代は接舷戦闘が海戦において大きな位置を占めており、海兵隊はその任務を担っていた。また当時の艦船では乗り組んで操船に当たる水夫は国王に忠誠を誓った兵士ではなかったので、艦内の規律維持が海兵隊のもう一つの主要な任務であった。また、欧米が海外に多くの植民地を抱えるようになると、原地民による暴動が発生した際には、派遣された艦船から上陸してこれを鎮圧するという任務の比重が増していった。この場合、海兵隊員に加えて艦船乗組員からも要員を抽出し、陸戦隊を編成していた。そのようなことから、水夫に接舷戦闘や陸戦隊の編成に備えた教育・訓練を施すのも海兵隊員の日常業務の一つであった。
19世紀後半になると、対艦兵器が発達したために正規海軍同士の接舷戦闘は行われなくなった。また、艦艇乗組員が軍人と扱われるようになったので[2]、艦内警備も海兵隊員が行う必要性は無くなった。そのため、フランスの海兵隊は植民地警備隊として海外へ固定配置されるようになり[13]、アメリカ海兵隊は相手船への乗り込みが必要な海賊取り締まりにその存在意義を保っていた。
帆船時代は船団がまとまって行動できなかったため、敵地へ侵攻する場合は敵兵力のないところへ上陸し、部隊が集合してから進軍するのが普通であったが、動力船の出現で船舶が自在に運動できるようになると、敵前への強襲上陸が可能となった。第一次世界大戦では、ガリポリの戦いなどの強襲上陸作戦が行われたが、装備や戦術が未熟だったために成功はしなかった。大戦後、アメリカや日本(陸軍)でその戦訓が研究され、1920年代には水陸両用作戦の概念が生まれた。そして、アメリカでこの任務を担うことになったのはアメリカ海兵隊であった。
現代の海兵隊は、水陸両用作戦や強襲作戦など陸海空の兵力を連携した統合作戦を主任務とするアメリカタイプのほか、イギリス、オランダ、イタリア海軍などのような緊急展開部隊や特殊部隊となっているものもある[14][15]。韓国、台湾、フィリピンなどの海兵隊は米海兵隊を模範としており、また、インドネシアも地勢的な必要性から相当規模の水陸両用戦部隊だが、自国領内に侵攻してきた敵部隊の背後に奇襲をかける逆上陸作戦を念頭に置いている関係で、特殊部隊としての任務にも力を入れている。また、ロシア海軍、スウェーデン海軍、フィンランド海軍のように、沿岸や海岸線の防衛に注力するタイプも存在している(このタイプはいわゆる沿岸砲兵隊と任務が重なる)。
近年は、いわゆるミニ国家(とくに、アンティグア・バーブーダやカーボベルデといった島嶼国)における地上軍の再編に際して、従来の軽歩兵中心の部隊から、各国の海兵隊を模範とした緊急即応部隊に転換する動きが見られる。また、バハマやモルディブのように、海兵隊を地上軍の主力としている島嶼国もある。
階級詳細は「軍隊の階級」を参照
海兵隊は海軍の陸上戦闘部隊であるが、階級呼称は基本的に陸軍のそれに準ずる。よって、海兵隊の将官は提督ではなく将軍である。
なお、日本語では一般的に軍隊の階級呼称は「陸軍大将」のように軍種と階級を組み合わせて呼ぶが、海兵隊員の階級は「海兵大将」のように「隊」の字が削られる。明治期に存在した大日本帝国海軍海兵隊はこの表記である。ただし、第二次世界大戦後、特にアメリカ海兵隊の階級呼称については「海兵隊大将」のような表記も見られる。 本来の海兵隊は海上勤務の歩兵部隊であるが、本項では、海軍の陸戦隊や沿岸砲兵から改編された部隊や陸軍の水上機動部隊など、水陸両用戦や臨検といった海兵隊と同様の任務を担う部隊も挙げる。
各国の海兵隊
アメリカ合衆国詳細は「アメリカ海兵隊」を参照上陸作戦を行うアメリカ海兵隊