海人
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大正時代から昭和初期になると観光でも注目されるようになり海女漁は絵葉書のデザインなどにも用いられた[12]

2017年(平成29年)に「鳥羽・志摩の海女漁の技術」として国の重要無形民俗文化財に指定された[13]

志摩地方の海女の数は2018年度(平成30年度)の調査で鳥羽市と志摩市を合わせて647人だった[13]
形態

三重県志摩地域の海女漁業の形態には、フナド(舟人)とカチド(徒人)がみられる[12]。具体的には夫婦(あるいは親子)で船に乗り込んで妻が潜って夫が操船しながら命綱を手繰る舟人(ふなど)海女の形態と、磯の付近において一人で漁を行う徒人(かちど)海女の形態である[14][13]。徒人海女は磯桶を浮きの代わりに用いたので「桶海女」と呼ぶところもある[15]。カチドとフナドのほかに、複数の海女が1隻の漁船に乗り合わせて漁を行うノリアイと呼ばれる形態もある[13]

潜水の深さは3?4mであるが、海女によっては20mくらいの深さまで潜ることもある[12]。潜水の時間は長くても50秒程度である[12]。潜水時に肺を傷めないようにする呼吸法を磯笛と呼ぶ[16]。磯笛は日本の音百選にも選ばれている[16]

漁期は地域によって異なるが、2月から9月中旬の間に漁を行う地域が多い[13]。漁獲制限として、地区ごとに漁獲物の大きさの制限、季節の制限、日数の制限、時間の制限、禁漁場所の設置などを行っている[12]
磯着磯着姿の海女(志摩マリンランド

三重県の志摩地方では、英虞湾などでの真珠養殖を欧米人に見学させる際に、上半身では問題があるとされ着衣が広まる。

白の磯着を着用するようになったのは明治中頃のことである[17]。大正時代になると風紀上の理由も加わって磯着が定着していった[17]。磯着は磯シャツと磯ナカネ(腰巻)からなる[17]。磯着は磯シャツと磯ナカネ(腰巻)からなる[17]

1960年代頃からウェットスーツを着用するようになったが、浮力が大きくなったため5?8kgの重り付きベルトを着用するようになった[12]。ただし、ウェットスーツはより深く、より長く漁をするのに適していたが、アワビの採りすぎにつながるため使用を禁止していた地域もあった[17]。また、地域によっては1戸あたりのウェットスーツの数やウェットスーツの厚さに制限を設けている場合もある[17]

鳥羽市鳥羽のミキモト真珠島では白の昔ながらの磯着による海女漁の実演が行われている[16]

道具

海中で獲物を見つけるために磯メガネを着用する
[12]。磯メガネは三重県では1878年(明治10年)から使用されるようになったが、アワビが取れすぎるようになったため、以降20年ほど使用を禁止する地域もあった[18]。初期には両目の枠が分かれた2眼メガネ(ゴーグルのような形)だったが、次第に目と鼻を同じ枠に入れる1眼メガネが用いられるようになった[18]。初期の1眼メガネには目が圧迫されるのを防ぐために、メガネ枠の外側に空気袋をつけて空気抜きをできるようにしたものもあった[18]

アワビを磯からはがすための道具をイソノミ(ノミ)という[12][13]。大小あり、ヘラのような形状でカギの付いたものもある[13]

漁獲物を入れる容器には磯桶が使用されていたが、網袋を吊るした浮き輪(タンポ)が使用されるようになった[12]。タンポは命綱をつなぐ道具でもある[12]

カマド

海女漁業で浜に設けられた火に当たって暖を取るための場所(アタリ場)をカマドあるいは火場という[12][14]。カマドは組別に分かれており、どの組に入るかは代々家ごとに決まっている[14]。海女の女性は嫁ぐと夫の母が入っているカマドに加わる[14]。カマドでは加入順に海側から座り、新人の「煙出し」と呼ばれる陸側に座る風習がみられた[14]

答志島には海女小屋体験の施設がある[16]
信仰セーマンドーマン

大漁や操業の安全を願う祭りが各地にあり、代表的なものに浜祭り(志摩市布施田)、しろんご祭り(鳥羽市菅島)、潮かけ祭り(志摩市和具大島)などがある[12]。また、志摩半島では、漁に際して唱えられる「ツイヤ、ツイヤ」の呪文の風習や[13]、海女が魔除けとしてセーマンドーマンの意匠が入ったものを身に着けて海女漁をする風習がみられる[12]

鳥羽市相差町の神明神社参道には海女の人々が信仰する「石神さん」がある[16]

また、志摩地方では船に乗り込む際や海に入る際に必ず取り舵(トリカジ、左側)から入るなどの験担ぎもみられる[13]


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