浜松まつり
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練りや凧揚げ、糸切り合戦をする際に、掛け声は様々なバリエーションがあるが、主に「オイショ」「ヤイショ」などといったものが掛かる。練りではラッパのリズムに合わせられる。

なお、これら行事のための準備作業は4月頭ごろから大々的に行われ、各組の拠点である会所を開く「会所開き」もそれぞれ行われる。これ以外の事務作業や打ち合わせなどは春先の期間に限定されたものではなく、ほぼ通年で行われている。
凧揚げ合戦凧合戦の初日冒頭にて行われる開会式

凧揚げ合戦は、町(自治会)ごとが「組」や「連」というかたちで参加し、それぞれ固有の町紋(凧印)が描かれた大凧を揚げ、組同士で凧糸を切り合って競うものである。凧揚げ合戦は中田島砂丘にある遠州灘海浜公園で行われ、会場は「凧場」と呼ばれている(後述)。 凧印は各町によって異なり、町名の頭文字や町内の伝説に由来する絵柄などがある。

大凧は、主に初節句を迎えた家庭から一面ずつ提供される。この凧には初節供の祝いを迎えた子供の名前と家紋が隅に描かれ、「初凧」(はつだこ)と呼ばれる。近年では少子高齢化をはじめとする時代の変化から長男生誕祝い以外の凧が提供されることもある。これらとは別に、町ごとに各自で凧を持っており[注 3]、それらは合戦に特化して使用される[注 4]

浜松まつりで使用する凧の大きさは、2帖から10帖まである。1帖とは美濃判(9寸×1尺3寸=273mm×393mm)12枚で1.28m2の大きさ。4帖は48枚で2.4m四方、6帖では72枚で2.9m四方。8帖になると96枚貼りでおよそ3.25メートル四方となる。このうち4帖から6帖のものが、最も凧揚げ合戦に適しているといわれている。形は正方形で、骨組みは細かく丈夫に作られ、中心から大きく尾骨が突き出ており、他地方の凧と比べると頑丈で重い。これらの特徴は、凧を揚げることよりも揚がった後の糸切り合戦に重きを置いていることによる。最近では、揚げることのみを目的として軽量化した凧を揚げる組もある。初凧とは別に、祝凧として半帖凧を施主に別途プレゼントする場合もある。

凧糸は糸切り合戦の際のハンデを無くすため、現在では統一生産となっており浜松まつり会館で購入したもの以外を使用することは出来ない。また凧合戦を有利にするためにガラスを凧糸に吹き付けるなどといった行為も現在では禁止されている。

また、凧場では1つの組が同時に二枚以上の凧を揚げたり、届け出た凧印以外の凧を揚げたりすることは禁じられている。また、現在は凧場で使用可能な凧は10帖以下に制限されている。

開催時間は年々徐々に早くなっており、現在は10時(10時30分) - 15時であるが平成22年までは11時 - 15時だった他、平成7年時点では12時 - 16時であった[12]。また、練兵場にて5日間開催だったころには12時 - 18時など、更に遅い時間で開催されていた。
練り

夜になると、各組単位で初凧を提供した家から凧揚げの労をねぎらって、町の若衆に振る舞い酒が出される。この時、規則正しく整列をして掛け声に合わせて摺り足で練り歩き、施主や初子のまわりで押しくらまんじゅうを激しくしたかのごとく、もみくちゃになるように荒々しく練り歩きを潰していく。また商店や会社、祭りの役員宅などで練ることもある。なお、行事名としての練りは上記まつり当日夜間の練りを指すが、凧場などまつり当日夜間以外にも練ることがあり、こちらも練りと呼ばれる。

凧揚げ合戦同様、時代とともに時間が早くなっており、かつては深夜まで行われていたが現在では規約ならびに道路使用許可においては午後10時までと定められている。

「激練り」[注 5]とは近年になってメディアを中心に広まった言葉[注 6]で、古くから参加する組ではあまり使われない。同様に、近年に広まった言葉として「初家」[注 7]があり、どちらも昭和期以前に発行された書籍や公式パンフレット、新聞記事等では記載が見られない。似たような事例として、上述した行事名としての練りを行為としての練りと区別するためか中日新聞では平成26年には新たに「夜練り」という言葉が用いられるようになった[13]
御殿屋台御殿屋台引き回し

御殿屋台(ごてんやたい)とは、祭車である屋台[注 8][注 9]の一種で、豪華な彫刻や幕などで装飾されている。通常、御殿屋台または単に屋台と呼ぶ[注 10]。遠州の御殿屋台には太鼓屋台をはじめ様々な種類があるが、浜松まつりの御殿屋台は掛塚式屋台である[注 11]

その昔、凧揚げから帰る若衆を迎えるために、伝馬町や千歳町の芸者衆が底抜け屋台を造って練り歩いたのが始まりとも言われている。それぞれに趣向をこらした見事な彫刻や提灯の飾りつけが施され、内では女の子達を中心に三味線を用いたお囃子(おはやし)が奏でられる。浜松まつりの屋台で奏でられる囃子は「小鍛冶」「鞍馬」などの黒御簾や「梅は咲いたか」などの小唄が多いが、一般的な祭車(山車)と異なって、浜松の屋台が芸者の乗る「花屋台」として発展してきたためで、現在でも三味線や篠笛は芸者や稽古場の師匠などの音曲の専門家に任せる組が多い。

なお、御殿屋台を所有していない組や、所有していてももっぱら町内でしか引き回さない組も存在する。
その他のイベント

凧や屋台以外にも地元の学校や吹奏楽団によるパレードや「ミス浜松」コンテスト、ミニ凧揚げの体験コーナーや物産展など様々なイベントが開催される。

2013年5月5日には東京ディズニーリゾート開園30周年記念のパレードが同時開催され、2023年5月5日には同年放送の大河ドラマどうする家康に出演している松本潤などが参加する騎馬武者行列が同時開催された。
特徴

この節の加筆が望まれています。

ラッパ

ラッパは幼稚園児や小学生を中心とした子供から大人までの参加者により吹奏される。

当祭典では凧場・練りともに本来は軍隊で信号伝達の手段として使用される信号ラッパ(ビューグル)[注 12]を用いて、凧合戦を鼓舞したり練りを指揮したりする[注 13]。これは、日本で近代的軍隊が整備され始めた幕末から明治・大正時代にかけて、祭りの運営が消防団や青年団を主体に行われていたことや会場として練兵場などが使用されたことに由来すると言われている。もともとは各町でごく一部しか吹ける人がいなかったが、昭和後期以降には、参加町数の増加や、参加者の変化(女性・子供の増加)があり、ラッパ吹奏者が増加した。

曲目は、旧日本陸軍のらっぱ譜「駆足行進」や「速足行進」を独自の曲調にアレンジし編曲したものが最も多く演奏され、主に強強弱弱4拍子のリズム(組による例外あり)がひたすら繰り返される。このほか、万歳三唱に合わせてラッパを吹聴するほか、一部の組では三三四拍子に合わせたり独自のファンファーレを持っていたりする。

近年、ラッパの吹奏は「ラッパ隊」、とりわけ未就学児から小中学生らを対象とした「子供ラッパ隊」として、子ども会を中心に組織されていることが多い。こうしたことに起因してか信号ラッパは浜松市民にとってはとても馴染み深く、練りとともに浜松市のみならず遠州地域では広域的に一種の文化となっている。詳細は#他地域への波及ビューグルも参照。

信号ラッパが楽器として使用される祭典文化は遠州地域以外にも一部地域で点在するが、そちらについて、ならびに浜松まつりに由来する浜松市および遠州地域各所のラッパ文化そのものについてはビューグル#楽器としての信号ラッパを参照のこと。
服装

肉襦袢鯉口シャツとも呼ばれる)に腹掛け股引(ももひき)に地下足袋を着用した上で各町で定められた法被を着用する。肉襦袢の代わりに網シャツを着る場合もある。

伝統的な浜松まつりスタイルでは(腹掛けと法被の間の)内半纏は着用しないが、現在では着用している参加者もいる(ただし組によっては内半纏の着用は禁止されている)。また、規約上は地下足袋でなく雪駄を履くことは禁止されているが、実際に雪駄履きを容認するかどうかは組によって異なる。

各組の役員は、法被の上に(タスキ)をかける。タスキには赤・青(緑を指す)・ピンクがあり、青ダスキは組長など責任の重い者が、ピンクダスキは自治会役員が着用する。
課題
非参加者との温度差と騒音問題

規約で定められた行事全体の終了時間は午後10時とはあるが屋台の引き回しが終了する午後9時ごろから初練りを始めたりしているためどうしても規約時間内に収めることはできず、規約の定める時間を大幅に超えてしまうのが現状である[14]。また、酒を飲んで騒いだり[14]、盛り上がった参加者が勝手にラッパを吹き続けたり[14]する、といった参加者個人の問題も非参加者との温度差を生む要因になっている。

3日間に渡り夜遅い時間まで市内各地でラッパを鳴らすことが騒音問題となり、参加していない市民(非参加者)などからの苦情の要因にもなっており[15]、「子供を寝かしつけるのにうるさい」「明日仕事なのに寝られない」といった批判が起こる[14]。毎年のように苦情が上がるため、警察に苦情が入ると直接町の幹部に指導がいく体制となっている[14]

しかし、まつり参加者を中心として(規約上の)終了時刻を延長すべきという意見も多く、平成26年には終了時刻を午後11時に延長することがまつり本部より提案される[注 14]など、非参加者との温度差は激しい[14]。このような温度差があるのは、浜松まつりは神事ではないため無関心層の理解が得られにくい[14] という見解があり、組織委統監部の丸井通晴部長は非参加者への配慮の必要性を訴えている[14]ほか、田町の仙田治興自治会長は「子供のためのまつり」という原点に立ち返って欲しいと主張している[14]


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